何でもマルチメディア(667):スリランカの旅(1)シギリヤ・ロック

ミャンマー、タイ、インドネシアといったアジアの国々には素晴らしい仏教遺跡があります。これらの遺跡を見て回っている間に、仏教がスリランカを経由してこれらの国に伝わったことを知りました。そこでスリランカに興味を持つようになり、昨年(2013年)8月に行ってきました。

 スリランカの中央部に、文化三角地帯という、仏教遺跡を中心とする、多くの文化遺産が集まっている場所があります。その一つ、シギリヤという小さな町のジャングルの中に、シギリヤ・ロックという高さ200mの岩山(写真)があります。この岩山は古くから仏教の僧侶の修験場だった場所ですが、5世紀に、当時の王様が宮殿を建てました。

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 この岩山の頂上に行くには、写真の左側の絶壁に作られた1千段の階段を登らなくてはなりません。写真は最上部の鉄製階段を上り下りしている人たちの行列です。

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 写真は頂上に残っている王宮の土台です。周囲は見渡す限りの樹林帯です。今から1500年前にどのような道具や技術を使ってこの岩山の上に巨大な王宮を造ったのか、想像もできません。

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 写真は岩山の中腹にあるオーバーハングした場所の壁から天井にかけて描かれている、シギリヤ・レディと呼ばれる美人画です。ジャングルの中に埋もれていた美女たちが発見されたのは19世紀後半だということです。

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都丸敬介(2014120日)

なんでもマルチメディア(666):シニアのパソコンライフ

私は2006年に頼まれて、住んでいる逗子市のシニアを対象とするパソコン講座で指導をしています。基礎コースと応用コースの2レベルの講座を、それぞれ2クラス設け、毎年9月から翌年7月までの11か月、すべてのクラスで毎月2回ずつで学習を行っています。受講者は大部分が60歳~70最台で、80歳代も数名います。
2006年と現在では、パソコンを取り巻く環境が大きく変わりました。主な原因はインターネットの普及とブロードバンド化、スマートフォンの出現などです。
私が講座を引き受ける前の講義内容は、ワード、エクセル、電子メールの使い方といった一般的なパソコン利用方法が主体でした。これらのことがパソコンを使いこなすために大切であることは変わりありませんが、パソコンにはこれ以外の広い利用効果があります。写真の加工、写真の切り抜き、パソコン絵画の作成、スライドショーにバックグランド音楽を付けたフォトムービーなどのマルチメディア機能に受講者全員が強い興味をもっています。

パソコンでマルチメディア作品を作り、あるいはマルチメディア機能を楽しむためには、それに適したソフトウエアや、効果的な周辺機器が必用です。シニア世代の人たちが抵抗なく受け入れることができる、安価なソフトウエアや周辺機器を探して、分かりやすいテキストや教材を作ることは簡単ではありませんが、多くの受講者が熱心に取り組んでいる姿を見ていると私自身が楽しくなります。

昨年は逗子市の文化祭の公募美術展に、数名の受講者と一緒にパソコンで作った絵画を出展しました。マルチメディアの新しい世界が開けた感じです。添付した写真はこの美術展に出展したものです。この花はバリ島で写したものです。

flowers-south.jpg都丸敬介(2014年1月3日)

なんでもマルチメディア(665):通信傍受

インターネット上を流れている個人情報を米国の政府機関が収集していたことを元CIA職員が明らかにしたことの波紋が、テレビや新聞で連日放送されています。

 使われた情報収集システム「PRISM」が導入されたのは2007年だということですが、2003年に出版されたトム・クランシーの小説(日本語訳「国際テロ」 新潮文庫)には、テロ対策手段としての、Eメールや電話の通信傍受の方法や状況が詳しく描かれています。この小説の重要な部分の1つは、米国で発生した同時多発、無差別殺人テロ事件の黒幕を特定するのに、通信傍受で収集した情報を使っていることです。その方法はテレビや新聞で報道されている米国で行われたこととよく似ています。

 ビッグデータの収集と分析や情報検索の技術が進んだ現在では、お金と人をかければ、政府機関でなくても、世界中で発生している莫大な情報を集めて分析することが可能です。すでに、不正な方法で入手した個人情報を悪用した犯罪が多く発生しています。

 不正な通信傍受や個人情報漏洩を規制する法律ができても、いったん漏洩した情報は消せません。善良な個人が身を守るために心がけるべき、インターネット利用方法の啓蒙活動が求められています。

都丸敬介(2013612日)

なんでもマルチメディア(664):オランダの先端農業

今週、NHKのテレビ放送で、オランダの農産物輸出が米国に次いで世界第2位だという特集番組を見ました。この中で、コンピューターによる生産管理と制御を行っている、天井が高い温室形式の巨大な野菜工場の紹介がありました。

この番組を見て、1992年に見学したフロリアード1992の光景を思い出しました。フロリアードは、産業振興のために10年ごとに、オランダ国内で、場所を変えて開かれている大きな園芸博覧会です。

夏休みにヨーロッパ旅行に出かけた時、アムステルダムの空港からホテルに向かうタクシーの運転手に「フロリアードを見に来たのか?」と聞かれました。それまでフロリアードという言葉を聞いたこともなかったので、詳しいことを教えてもらいました。アムステルダムから鉄道で簡単に行けるということなので、早速行ってみました。まさに百花繚乱の素晴らしい博覧会で、日本庭園もありました。

この会場で驚いたのが写真の野菜工場のひな形です。トマトやピーマンの蔓が、天井から吊り上げられているのです。NHKの放送では、こうすることで栽培空間が数倍になったことと、徹底したコンピューター制御によって、土地面積当たりの生産性が大幅に拡大したということです。

日本でも農業の近代産業化が叫ばれていますが、具体的な成果はまだ見えません。20年前に博覧会で見たことが、オランダで本格的な産業に育ったことは、よい手本になるはずです。

都丸敬介(2013年5月22日)

なんでもマルチメディア(663):役に立つ数学

昨日(2013514日)の日経産業新聞第1面に、「数学 新たな武器に」という見出しで、今年新設された明治大学の総合数理学部の紹介記事がありました。

 この記事を読んで、2001年度アカデミー賞を受賞した「ビューティフル・マインド」という映画を思い出しました。この映画の主人公は1994年にノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュ博士です。映画に描かれた、互いに何の関係がないように見える複雑な社会現象から大量のデータを集めて分析し、その現象の中に規則性を見出すナッシュ博士の行動は、現在多くの分野で成果を上げているビッグ・データの収集と分析に共通します。

 私も現役時代に、情報通信機器やシステムの設計や異常動作の原因解明に、統計学の手法が役立つことを何度も体験しました。高性能のコンピューターネットワークや多種類のデータ分析用ソフトウエアを手軽に使える現在では、システム設計やトラブルの分析にどのような手法が使われているのか知りませんが、数理学部で勉強をしている若い人たちが、身につけた理論や応用手法を多くの人達の日常生活に役立てることの期待します。

 同時に、どのような数学が、どのように大衆の日常生活に役立っているのかということの、分かりやすい啓蒙活動がもっと活発になることを期待します。 

都丸敬介(2013515日)

なんでもマルチメディア(662):文献抄録

20歳代の中ごろ、勤務していた研究所の先輩から、海外の論文誌や技術雑誌に掲載されている文献の抄録原稿作成を頼まれました。個々の文献のあらましや内容の要点を200300字程度にまとめた原稿は、印刷されて、全国の図書館や企業に配布されました。

 抄録対象文献の大部分は私自身の研究プロジェクトとあまり密接な関係はありませんでしたが、毎月30件程度の文献を5年ほどしっかり読んだ体験は、貴重な体験であり、多くの面で役に立ちました。

 抄録原稿を書くことで、世界の最先端で研究開発を行っている人たちが取り組んでいるテーマや考え方、論文としてのまとめ方などを身近に感じることができました。

 この時代に身に着いたことは、50年以上経った今でも、毎月手元に送られてくるいくつかの学会の論文紙や技術雑誌を開くときに、わくわく感をもたらしてくれます。

 現役時代に取り組んだ大規模のシステム開発プロジェクトでは、研究対象システムだけでなく、それを構成する広範囲の機器や部品の動向、システムの性能や品質を評価するのに必要な理論など、広範囲の知識がおおいに役立ちました。こうした知識の多くは、文献抄録原稿を書くことによって蓄積されたことです。

 インターネットを利用して、多くの知識が瞬時に手に入る時代になりましたが、若いうちに多くの文献をしっかり読むことの効果は変わらないと思います。

都丸敬介(201357)

なんでもマルチメディア(661):シニアパソコン指導で学んだこと(3)

私がシニアパソコン講座の指導を頼まれたとき、それまでの講座内容はワード、エクセル、電子メールおよびインターネットの情報閲覧が中心でした。これらはパソコンを利用するための基礎として欠かせないことですが、受講者の年齢が60代、70代が中心であることを考えると、パソコンを日常生活の友として楽しむには十分ではありません。

 シニアの人たちの多くが、写真、絵画、絵手紙、俳句、生け花、茶道、音楽、旅行などを楽しんでいます。そこで、こうした幅広い趣味の世界とパソコンをつなぎ合わせる学習指導を行うことにしました。

 手始めに、私自身が現役だった1990年代に使っていたパワーポイントの機能や使い方を教えることから始めました。パワーポイントの多彩な描画機能やバックグラウンド・ミュージックをつけたスライドショーに、大部分の受講者が驚きましたが、すぐにこれらの機能を使うことに慣れてきました。

 しかし、パワーポイントでは写真の加工、動きのあるアニメーションやフォトムービーなどの作成機能はありません。そこで、これらのことができるソフトウエアを探すことにしました。具体的なことについては後日紹介します、

 添付ファイルの2枚の画像は受講者がパワーポイントで作ったものです。どちらも70代の女性の作品です。数回の講義でこうした作品を生み出すシニアの好奇心と学習意欲は、指導をしていて楽しくなります。

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都丸敬介(2013313)

なんでもマルチメディア(660):シニアパソコン指導で学んだこと(2)

私が2006年から指導をしているシニア対象パソコン講座は、毎年9月にスタートして、翌年7月までを1学期としています。

 基礎コースと応用コースの2つのレベルのコースを設けて、それぞれのコースの講座を毎月2回ずつ実施しています。ボランティア活動なので、教室は逗子市の設備を無料で使わせていただいていますが、助成金は受けていません。

 1クラスの定員を20人に制限していますが、受講希望者が多いので、基礎と応用のそれぞれのコースについて、曜日を変えて2クラスを設けています。したがって、毎月8回の講座を実施しています。1回の講座時間は3時間です。

 テキストは受講者のレベルや内容に対する興味を考慮して、毎回書き下ろしたものをプリントして配っています。

 受講者の年齢は60歳台と70歳台が中心ですが、80歳を過ぎてから参加した人もいます。受講者の多くは何年も繰り返して参加しています。病気になったり、家族の介護のために欠席する人も少なくありませんが、大部分の人が復帰してきます。

 3時間の講座が終わったとき、皆さわやかな顔をしています。長時間テキストを読みながらパソコンを操作するのは疲れると思いますが、興味を持ったことに集中するのは心身の活性化にすぐれた効果があるようです。

都丸敬介(2013218)

なんでもマルチメディア(659):シニアパソコン指導で学んだこと(1)

2006年に頼まれて引き受けた、シニア世代を対象とするパソコン講座の指導が8年目になりました。この間にパソコンの標準OS(基本ソフトウエア)であるウインドウズはXPから、ビスタ、7を経て8へと変わってきました。

ウインドウズ8は明らかにスマートフォン(スマホ)を意識して、従来のパソコンとスマホを合体したものです。世界の情報端末の出荷台数は、2011年にスマホがパソコンを上回り、2012年にはパソコンの出荷台数が前年を下回ったという調査報告があります。

日常的に情報通信端末を使っている社会人や学生にとっては、パソコンとスマホの機能が合体するのは好ましいことでしょう。しかし、日常的な行動範囲が狭く、使用するパソコンの機能が限られているシニア層にとっては、必ずしも好ましいことではありません。むしろ、せっかく覚えたパソコン使い方が変わってしまうことに戸惑って、パソコンを放棄するケースも見られます。

急速に発展を続けるスマホの機能やクラウドコンピューティングを効果的に利用できるようになった背景には、高速アクセスができるインターネットが全国的な社会基盤として充実したことがあります。スマホやウィンドウズ8パソコンは高速インターネットを使うことを前提としていることがよくわかります。ということは、高速インターネット利用環境を持っていないシニア層の人たちは取り残されていくということになります。

時間的にも経済的にも比較的ゆとりがあるシニア層の人たちに、ストレスを与えることなくパソコンをよき友として役立てるにはどうすればよいか、という問題を真剣に考える時が来たことを強く感じます。

都丸敬介(2013年1月16日)

なんでもマルチメディア(658):基礎研究と実用化研究

今年(2013年)元旦の日経産業新聞の第1面トップ記事は「産業振興」をテーマにしたシリーズの第1回でした。この記事には「NTT、ハイテクの礎40年」、「NTTは日本の技術力をつくってきた」という見出しが並び、研究成果のトップが「初の電子交換機「D10形」運用開始(72年)」です。

 私は1950年代にNTT(当時の日本電信電話公社)の電気通信研究所で電子交換機研究チームに入りました。当時の電話交換機は、オペレーター(電話交換手)が手作業で電話をつなぐ手動交換機と、電磁リレーを組み合わせた機械式の自動交換機でした。電子交換機は機械式交換機を電子化しようというものです。特に重要だったのは、交換機全体の動作をコンピューターで制御することでした。

 当時の汎用コンピューターは非常に高価でした。電子交換機の研究開発の重要なテーマの一つが、既存の機械式交換機と同程度の経済性の実現です。このために、電話交換動作の制御に必要な専用コンピューターを開発しました。

 研究には基礎研究と実用化研究があります。電話交換システムのような大規模システムの研究開発では、開発対象の実用化に必要な基礎研究のテーマが次々に発生します。したがって、両方の研究部門の密接な連携が不可欠です。このためのプロジェクト管理が実用化研究の成否の鍵を握ることを、私は何度も体験しました。

都丸敬介(201318日)