なんでもマルチメディア(658):基礎研究と実用化研究

今年(2013年)元旦の日経産業新聞の第1面トップ記事は「産業振興」をテーマにしたシリーズの第1回でした。この記事には「NTT、ハイテクの礎40年」、「NTTは日本の技術力をつくってきた」という見出しが並び、研究成果のトップが「初の電子交換機「D10形」運用開始(72年)」です。

 私は1950年代にNTT(当時の日本電信電話公社)の電気通信研究所で電子交換機研究チームに入りました。当時の電話交換機は、オペレーター(電話交換手)が手作業で電話をつなぐ手動交換機と、電磁リレーを組み合わせた機械式の自動交換機でした。電子交換機は機械式交換機を電子化しようというものです。特に重要だったのは、交換機全体の動作をコンピューターで制御することでした。

 当時の汎用コンピューターは非常に高価でした。電子交換機の研究開発の重要なテーマの一つが、既存の機械式交換機と同程度の経済性の実現です。このために、電話交換動作の制御に必要な専用コンピューターを開発しました。

 研究には基礎研究と実用化研究があります。電話交換システムのような大規模システムの研究開発では、開発対象の実用化に必要な基礎研究のテーマが次々に発生します。したがって、両方の研究部門の密接な連携が不可欠です。このためのプロジェクト管理が実用化研究の成否の鍵を握ることを、私は何度も体験しました。

都丸敬介(201318日)

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