ブロードバンドインターネットの普及が世界中のあらゆる産業や政治に大きな変革をもたらしました。インターネット通信技術、光ファイバー通信や高速無線通信の技術、パソコンやスマートフォンに代表されるマルチメディア情報通信機器などの技術開発が津波のように一斉に進んだのが1980年代でした。最近の情報通信ネットワーク技術の研究状況を見ていると、エキサイティングだった1980年代の再来を感じます。
たとえばITU-T(国際電気通信連合・電気通信標準化部門)で検討されている将来ネットワークの研究では、ネットワークの仮想化が主要なテーマの1つになっているようです。ネットワークの仮想化は、物理的には同じネットワーク設備を使って、論理的に異なる複数のサービス基盤ネットワークを実現する方法です。このような仮想ネットワークは企業内ネットワークのような限られた分野ではすでに実用になっています。
ITU-Tの将来ネットワークがどのようなものになるのかわかりませんが、電力網のスマートグリッド構想のように、世界中の通信事業者が建設した通信設備を自由に連結して、利用目的に適した論理的なネットワークを動的に実現することが考えられます。
このようなネットワークが実現すれば、すでにインターネットで深刻な問題になっているヘビーユーザーによる偏ったトラフィックの集中、大規模災害による通信の混乱からの迅速な回復などの実現が期待できます。
都丸敬介(2012年4月3日)