東北関東大震災で大きな被害を受けた方々には申し上げる言葉もありません。この大災害が発生した直後には、地震や津波について「想定外の規模」という言葉が繰り返して使われました。その後、地震発生から2週間たっても沈静の行方が見えない福島原子力発電所のトラブルについて、「これは人災だ」という声が大きくなってきました。
何を指して人災と決めつけられるかというのは難しいことですが、福島原発の報道を追っていると、トラブルの原因が「想定外の災害規模」よりも、「想定してなかったこと」にあるように思えます。
私も現役時代には開発を担当した情報通信システムのトラブルに何度も遭遇しました。トラブルの原因には、設計条件よりも大きな負荷あるいはストレスによることと、考えてもなかった現象によることがあります。前者は考えが甘かったことに起因し、後者は知恵や配慮が足りなかったことに起因します。どちらも人災ですが、開発当事者の責任は後者のほうが重大です。しかし、トラブルに出会った経験がないと、知恵や配慮はなかなか生まれてきません。現実に出会う機会が少ないトラブルについての知識を得るには、過去の出来事に学ぶことが効果的です。
福島原発の事故に学んで、各地の原発で設備の見直しや災害訓練が始まっているようです。日本では今後も原発は必要だと思われます。今回の経験を生かして、日本が世界中の原発の安全性に貢献できるようになることを願います。
都丸敬介(2011年3月30日)
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