1980年代に実現した、情報通信の分野の革命的な出来事の1つに電気通信事業法の施行があります。1985年4月1日に施行されたこの法律によって、だれでも電気通信事業に参入できるようになりました。電気通信事業は社会を支える重要なインフラであることから、国内通信は日本電信電話公社、国際通信は国際電信電話株式会社の独占事業だったのが、この法律によって自由化されました。
この法律では通信回線設備を備えている第一種電気通信事業者と、第一種電気通信事業者から通信回線設備を借りてユーザーに又貸しする第二種電気通信事業者の区分けがありました。そして、日本全国で多数の第二種電気通信事業者が生まれました。この法律の施行から1年たった頃、郵政省(当時)の幹部の一人が「1つの法律の施行によって、1年間に千を超す会社が生まれたことは前例がない」と胸を張っていたことを覚えています。
この後、2003年に電気通信事業法の大幅改正があり、現在では第一種と第二種の区分がなくなりました。日本ではインターネットサービスプロバイダー(ISP)は電気通信事業者として扱われているので、事業を始めるときは総務省に届出をすることになっています。
1985年当時の電気通信はアナログ電話が中心であり、ファクシミリや文字データを扱うデータ通信が始まったばかりでした。その後、電話のディジタル化や携帯電話、インターネット商用サービス、通信回線のブロードバンド化などが急速に進み、現在もさらなる発展が続いています。同時に、情報通信を悪用した犯罪行為を始めとする新たな社会問題が続出しています。新しい時代の起爆剤になるような健全な政策が情報通信の分野でも求められますが、残念なことにその芽はまだ見えません。
都丸敬介(2012年1月11日)
スポンサーリンク