2011年9月29日に、ソフトバンクモバイルが「ソフトバンク4G」という、最大伝送速度が110Mビット/秒の日本国内最高速の無線データ通信サービスを11月に始めると発表しました。携帯電話各社は無線アクセス回線サービスの高速化を競っていますが、最大伝送速度の数値だけではサービス品質の評価はできません。
最大伝送速度の公称値は技術的に正しいとしても、実効的な伝送速度は無線基地局とユーザー端末の間の距離やデータの送り方などによって大きく変化します。2003年頃から、電話用ケーブルを使うADSLの高速化競争が激しくなりました。このときも公称最大伝送速度がはなばなしくアピールされましたが、最大伝送速度が10Mビット/秒でも、40Mビットでも、ケーブル長が2km程度になると、実効的な最大伝送速度はほとんど差がなくなるということは説明されませんでした。
月間技術雑誌「日経コミュニケーション」の2011年2月号に掲載された、最大伝送速度が40Mビット/秒の高速無線通信サービスの性能測定実験データによれば、実効データ伝送速度は6Mビット/秒程度です。
ユーザー端末をつなぐアクセス回線の伝送速度はどの程度であれば十分かということは、1990年代初期から議論されてきた問題ですが、サービス利用者が理解できるような明確な数値は示されていません。アプリケーションの種類や使い方によって、必要な伝送速度の値が異なりますが、典型的な事例について、サービス提供者とサービス利用者の両方が納得できる数値が示されないと、意味のない宣伝合戦が続きます。
都丸敬介(2011年10月3日)
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