なんでもマルチメディア(566):会津の温泉めぐり



oouchiyado.jpg連日の暑さから逃避して山の空気を吸いたくなり、お盆休みが始まる前の道路がすいている間に、福島県の会津若松にある東山温泉と、栃木県の鬼怒川の奥にある湯西川温泉の二か所の温泉を回ってきました。どちらも古い歴史がある有名な温泉ですが、古い温泉の雰囲気がどのくらい保たれているのか興味がありました。

 東京から会津若松に行くには東北自動車道から磐越自動車道に入るルートと、常磐自動車道から磐越自動車道に入るルートがありますが、今回はあまり利用したことがない常磐自動車道経由のルートを選びました。常磐自動車道のいわきジャンクションから磐越自動車道に入ると走っている車がほとんどありません。片側1車線の対面交通区間がありますが、片側2車線化の工事が進んでいて、今年度中に完成するようです。

 東山温泉は会津若松の市街地のはずれにありますが、温泉地区に入ったとたんに山と渓流に囲まれた別世界になります。小原庄助さんゆかりの、ウナギの寝床のような木造建築の温泉宿で、久しぶりに渓流の音に包まれました。

 湯西川温泉は平家の落人が住み着いたところです。平家の落人がこの地にたどりついたルートは会津若松からぐるりと回ったということです。会津若松から日光街道・西会津街道を経て、五十里湖から湯西川温泉にいたる道路はよく整備されていて、快適なドライブができました。このルートには茅葺き屋根の集落として人気がある、江戸時代の宿場「大内宿」(写真)や、水と風に浸食された岩の塔が立ち並ぶ「塔のへつり」(写真)があります。
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 湯西川温泉では、平重盛の六男を祖とする25代目の当主が経営する宿に泊まりました。夕食後、渓流を挟んだ対岸の小さな舞台で演じられた平家琵琶の演奏を楽しんだ後、深夜まで北京オリンピックの開会式の実況中継を見ました。

都丸敬介(2008.8.17

なんでもマルチメディア(565):インターネット利用健全化のきざし

インターネットの普及に伴って、これを悪用する犯罪行為や新しい社会問題がエスカレートしていますが、最近、こうした問題を是正して利用の健全化に向かう流れが始まったようだと感じたことがあります。

 その1つが、有害情報を提供しているウェブ・サイトへのアクセスを規制するフィルタリング・サービスの効果です。8月1日の日経産業新聞によると、インターネットに情報を提供している企業のウェブ・サイトが、いわゆる勝手サイトから公式サイトに回帰するきざしが見えるということです。

悪質の勝手サイトをインターネット社会から締め出すことは望ましいことです。ただし、良質の勝手サイトを締め出さないことも大切です。このことの実現方法は大きな技術課題です。

 もう1つは、匿名を排除して実名登録を基本とするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が米国で急成長しているということです。インターネットの商用サービスが始まる前から使われていたパソコン通信の電子メールでも匿名ユーザーが多く、電子メールでは匿名を使うのが基本だといった誤解すらありました。

 情報化社会の健全性を保つための基本は、情報源と情報内容の信頼性が高いことです。これは古典的な問題ですが、情報通信技術の発達によって信頼性の偽装が容易になったために、情報化社会の病の進行が加速してきたといえます。このような行き過ぎを是正する動きを多くの人たちに知らせる必要性があります。

都丸敬介(2008.8.3

なんでもマルチメディア(563):ディジタル・サイネージ

最近、ディジタル・サイネージという言葉を目にすることが多くなりました。サイネージ(signage)という単語は比較的新しく、辞書にも見当たりません。ディジタル・サイネージに相当する日本語はディジタル看板ですが、従来の看板のイメージとはかなり異なります。概念的には「街角や商業施設、電車の中などに設置した電子的ディスプレイに、ネットワークを利用して広告などの文字・映像情報を配信して表示するシステムの総称」といえます。

 今年の2月に米国ラスベガスで開かれたディジタル・サイネージ・エキスポの報告画面を見ると、このための技術と利用分野が急速に発展していることがわかります。ただし、基本的なことは1980年代に議論した「将来のマルチメディア情報システムの形態」からあまり進歩していないという印象です。ブロードバンド通信ネットワークの普及、ディスプレイの大画面化と価格低下、画像データ処理技術の進歩、データの検索と配信技術の進歩などの総合効果として、20年前の夢が実現したのが現在のディジタル・サイネージの姿です。

 この技術の応用がインターネットの中でプッシュ型情報配信の一つとして発展するでしょう。その結果、多くの人たちに興奮や安らぎなどのいろいろな効果をもたらすでしょうが、犯罪的行為を誘発する危険もあります。

 健全なディジタル・サイネージの在り方の検討が求められる時代になりました。

都丸敬介(2008.7.22

なんでもマルチメディア(562):学ぶ楽しさ

現役を引退してから長い年月が経ちましたが、今でもときどき頼まれて、若い技術者を対象とするセミナーで講義をしています。2日間で12時間の集中講義が終わると、どっと疲れが出ますが、気分はさわやかになります。過日、休憩時間に若い受講者と雑談をしていて、その人のお祖父さんと私が同年代だということが分かりました。

 2世代分の年齢差がある若い人に最先端の話をしていて年齢差を感じないのは奇妙なことかもしれませんが、現在の新技術や新製品が、20年〜30年の時間を経て今の状態に到達した経緯を知ることは、若い人たちに新鮮な刺激を与えるようです。そして、技術進歩の過程を体系的に把握することが、今後の発展のビジョンを描くのに役立つことを理解できるようです。

 こうした話をするためには、講師としても現在起こっていることを学習しなければなりません。インターネットが発達したおかげで、図書館に行ったりセミナーに参加したりすることなしに、欲しい情報を世界中から即時に入手できるようになりました。忙しい現役の技術者に代わって情報を集めて整理しているのだと考えると、情報収集に力が入ります。

 現役の技術者を対象とするセミナーではありませんが、シニア世代のパソコン教室で講義をするためにも、常に新しい情報を集めて分析しています。このために、パソコンショップに足を運ぶことが多くなりました。パソコンショップの中を歩き回っていると、現在のIT産業の動向がよく分かります。また、製品の説明書に書いてない使い方を見つけると楽しさが広がります。

都丸敬介(2008.7.13

なんでもマルチメディア(561):テレコミューティング

今日(200877日)北海道洞爺湖サミットが始まります。今回のサミットの重要なテーマの一つが地球温暖化対策です。ガソリンを始めとする化石燃料が発生する二酸化炭素が温暖化を加速していることが指摘され、その対策が地球規模で検討されるようになってからかなりの年月が経ちましたが、問題は一層深刻になっています。

 情報通信技術が急速に発展した1990年代初期に米国でテレコミューティングという言葉が使われるようになり、その効果の検討や検証が活発になりました。そのきっかけは車による通勤(コミュート)時間が年々増大していることでした。そして、情報通信技術を効果的に活用することが、通勤時間帯のすさまじい交通渋滞によって生じるいろいろの問題を緩和するのに効果があることが指摘されました。

 この時代に、在宅勤務あるいはサテライトオフィスという言葉が日本でも盛んに使われるようになりました。そして、ブロードバンド通信サービスの普及や、情報セキュリティー技術の進歩に支えられて、在宅勤務者あるいはテレコミューターがかなり増えてきました。

しかし、テレコミューティングがもたらすエネルギー消費削減効果については、具体的な情報がほとんどありません。自家用車通勤者のガソリン消費量の削減や、出勤者の減少に伴うオフィスの電力消費量の減少など、テレコミューティングの効果がかなりあると思われます。これらのことについては、情報通信産業を中心にして、すでに多くの実績があるはずです。エネルギー政策や労働政策を立案して推進する組織から、啓蒙的な情報が提供されることを期待します。

都丸敬介(2008.7.7

なんでもマルチメディア(560):ビル・ゲイツの引退

マイクロソフト社の創業者で世界一の富豪になったビル・ゲイツが52才の若さで事業の第一線から引退したことが大きな話題になりました。この見事な引き際を産業界のリーダーだけでなく政治家にも見習って欲しいと感じている人が多いことと思います。

 ゲイツは天才プログラマーといわれていますが、技術力ではゲイツと同程度あるいはそれ以上の人たちが少なくありません。ゲイツが突出したのはビジネスの着眼点とそれを実行する行動力にあったことが指摘されています。

 マイクロソフトが1990年代に大きく飛躍した原動力は、すべてのパソコンに必要なオペレーティング・システムとして、ウインドウズの開発と販売の成功したことです。ウインドウズの開発のすさまじい状況が、「闘うプログラマー:ビル・ゲイツの野望を担った男たち(G・パスカリ・ザカリー著、日経BP出版センター発行、1994年)」という本に詳しく描かれています。

 昨年発売されたウインドウズ・ビスタは今後も使い続けられるでしょうが、アプリケーション・プログラムにはいろいろ問題があります。看板商品のワード2007やエクセル2007の使いにくさを補完するプログラムを他社が開発して売っているという事実をマイクロソフトはどう受け止めているのでしょうか。

ゲイツの引退は情報産業の地殻変動のきっかけになるように思えます。

都丸敬介(2008.6.30

なんでもマルチメディア(559):新聞を読んで

毎週一回、NHKラジオ第一放送に「新聞を読んで」という番組があります。毎回替わる解説者が、一週間分の数種類の全国紙新聞を読んで、注目した記事の要点や感想を解説する番組です。放送やインターネットが発達した影響で新聞の購読者が減り続けているようですが、新聞には他のメディアとは違った長所があります。私は数種類の新聞を定期購読していますが、その最大の理由は、多面的なキーワードが飛び込んでくるからです。

 今朝(2008623)の朝日新聞に「学士の質 どう保証」という見出しで、大学全入時代になって低下してきた大学卒業者の資質について、中央教育審議会と経済産業省の取り組みを解説しています。中央教育審議会が検討している「学士力」指針項目の定着に期待しますが、どのようにして実現するのかということが大きな課題です。

 同じ新聞の「簡単・でか字の高齢者向けPC」という記事で、富士通が高齢者層をターゲットにして発売したパソコンの特徴やアフターサービスが紹介されています。パソコンの普及率が飽和状態になった現在、1千万の潜在需要があると推定されている高齢者層はメーカーにとって重要な市場でしょう。ただし、この市場を掘り起こすには、パソコンの基本的な操作方法を見直す必要があります。高齢者パソコン教室で指導をしていると、既存のパソコンの基本的な操作のいくつかが、重大な障壁になっていることが分かります。

都丸敬介(2008.6.23

なんでもマルチメディア(558):デジカメとパソコン

シニア世代のパソコン教室で指導をしていると、ときどき思いがけないことに気がつきます。デジカメで撮影した写真のデータをパソコンに取り込んで補正や加工をする講座では、デジカメの写真データをパソコンに取り込めるということを知らなかった人が何人かいました。

 撮影した写真のデータが一杯になったデジカメのメモリー・カードを、そのまま保存しているというのです。また、メモリー・カードのデータをパソコンにコピーして取り込めることを知っているけれども、メモリー・カードの写真データを消去できることを知らなかったということで、多数のメモリー・カードを保存している人もいます。

 そこで、パソコンに写真データをコピーした後でデータを消去すればメモリー・カードを何度でも使えるという、デジカメの基礎的なことを知らない人がいるという現実に気付きました。念のために、手元にある複数機種のデジカメの取扱説明書を調べたところ、要らなくなった写真データを消去(削除)して、メモリー・カードを何度でも使えるということの説明は皆無でした。写真データの選択的消去や全消去の方法が記載されている取扱説明書もあるので、メモリー・カードのデータを消去できることは常識だというのでしょうが、常識だと考えるのはカメラ・メーカーの独断かもしれません。

 パソコン教室では、写真屋に頼んでプリントしていた写真を、パソコンを使って自分でプリントできるようになって感激している人が少なくありません。パソコンを使って、はがきに写真を取り込んだけれども、写真の上に文字を書き込むことがうまくできないという人もいます。好奇心と新しいことに挑戦する意欲が旺盛なシニア世代の手伝いは楽しいことです。

都丸敬介(2008.6.16

なんでもマルチメディア(557):通信と放送の融合

5月下旬にNHKがインターネットの動画投稿サイトのユーチューブを介してテレビ番組の配信を始めました。今のところニュースが中心ですが、インターネットと放送の融合が本格的に始まったという実感があります。URL http://jp.youtube.com/user/NHKonline です。

番組を選択すると、NHKのロゴが入った静止画面が表示されますが、番組画面の右下の「動画形式を変更する」をクリックし、「動画形式を選択する」でFlash(FLM)をクリックすると動画再生用のソフトウェアが起動して動画の表示になります。

提供されている情報には動画を含んでいないものもありますが、全体として、かなり充実した内容になっています。一般的なポータルサイトが提供しているニュースとはひと味違った印象を受けます。動画像や音声の品質も悪くありません。携帯端末にテレビ番組が配信されていることを考えれば、かなり良好なサービス品質を実現できることはあたりまえのことと言えるのでしょう。ブロードバンド情報流通基盤として国際的なNGNが運用されるようになれば、世界中のテレビ放送を視聴できることはもはや夢ではありません。

ただし制度面ではいくつか気になることがあります。冒頭のNHKonlineNHKと受信契約をしていなくても自由に見ることができます。新しい番組配信ルートがNHKその他の放送会社のビジネスモデルにどのような変化をもたらすのか、あるいは既存のビジネスモデルが、新しいルートで配信する番組の範囲を制約することになるのかといったことが不明確です。通信と放送の融合が、技術の進歩に制度改革が追いつかない新たな事例にならないことを願います。

都丸敬介(2008.6.9

なんでもマルチメディア(556):さようなら鶴丸

2008531日、垂直尾翼に丸い鶴のマークを描いたJALの旅客機が最後のフライトを行ったことがテレビや新聞で一斉に報道されました。最後のフライトは鶴丸ファンで満席になったということですが、私も鶴丸マークのJALにはいろいろの思い出があります。

 1973年にパリでIT技術の標準化会議が開かれたときに、参加者全員が会議主催者から夕食会に招かれました。会議終了後の午後8時にレストランに集まり、解散したのが午前3時という、私が体験した最も長時間の夕食会でした。私はフランス規格協会の会長夫人の隣の席を指定され、日本の文化についていろいろな質問を受けました。話題の内容は覚えていませんが、一つだけ記憶に残っていることがあります。

 折り紙の話になり、鶴の折り方を教えてあげました。何人かで鶴を折ったところ、一人の手が滑って白い紙の折り鶴に赤ワインがかかりました。そこで私が「鶴がワインを飲んで赤くなった、この鶴はJALのシンボルだ」といったことを話したところ、大いに盛り上がりました。

 1970年代初期にはまだ成田空港がなく、羽田空港を利用していました。公務の出張となると、大勢の人が空港まで見送りにきて、搭乗が始まると拍手で送られるという時代でした。その後航空機の機種や機内設備、機内サービスなどが大きく変わり、JALの垂直尾翼のマークも変わりました。鶴丸のマークが半世紀の間使われたというのは大変なことだったと思います。

都丸敬介(2008.6.2