なんでもマルチメディア(505):ギガの時代

情報通信システムの重要な性能指標の単位が、メガ(M:100万)からギガ(G:10億)へと拡大する動向が顕著になってきました。具体的には、通信ネットワークの通信速度(データ伝送速度)と、パソコンを始めとする情報機器のメモリー容量があります。
 ブロードバンドネットワークの普及によって、アクセスネットワークの通信速度が数10kビット/秒から数Mビット/秒に改善されてからまだ10年程度しか経っていませんが、すでに1Gビット/秒以上のサービスが提供されています。そして、通信事業者のコアネットワークの通信速度は、研究段階ではテラ(T:1兆)ビット/秒に達しています。
 先頃発売になったパソコン用OSのウインドウズ・ビスタは、快適な動作に必要なメインメモリーの容量が1Gバイトとなっています。パソコンの普及が進んだ時代には、データを持ち運ぶための主役だったFD(フロッピー・ディスク)の記憶容量が1.4Mバイトでした。これに対して、現在広く使われているUSBメモリーの記憶容量は1Gバイトを超しました。
 通信速度やメモリー容量がメガからギガに拡大した背景には、これらを実現するための技術進歩があります。この分野では、マイクロ(100万分の1)からナノ(10億分の1)へと微細化が進んでいます。LSIの微細加工技術や光ファイバー通信で使う光信号の処理はナノメートルを単位として語られるようになり、高速通信技術の制御時間の単位としてナノ秒が使われるようになりました。
 これらの技術進歩が、ノーベル賞級のブレークスルー技術によらずに次々に実現されていることは驚くべきことです。この調子で進歩が続くと、2010年頃には生活や産業の分野で大きな変化が起こると予想されます。
都丸敬介(2007.4.30)

なんでもマルチメディア(504):パリのメーデー

間もなく5月になります。5月が近づくとパリで出会ったメーデーのシーンを思い出します。1980年代の最後の頃、ゴールデンウィークの連休を利用して家族でパリに遊びに行きました。
5月1日のメーデーの日だということが全く念頭になく、シャンゼリゼ通りからルーブル美術館に歩いて行ったところ、コンコルド広場からチュイルリー庭園に入るところで、大群衆にはばまれて身動きが取れなくなりました。チュイルリーがメーデーの中央会場だったのです。とまどってうろうろしている間に、ルーブル美術館は休館になっていること、チュイルリーの脇の地下鉄駅は閉鎖されていることなどが分かってきました。そこで、メーデーを見物することにしました。
 1960年代には、労働組合から動員されて、何度か東京のメーデー中央会場に行ったことがありますが、パリのメーデーの雰囲気は東京とは全く違っていました。会場の中央で繰り返されている音楽が、ベートーベンの第9交響曲の歓喜の歌だったことが印象的でした。
 現在のシラク大統領はまだ大統領になっていなかった時代ですが、いたるところで「シラク、シラク」の大合唱がわき上がっていました。当時はシラクという名前も知りませんでしたが、フランスの大衆のエネルギーを強く感じました。
 間もなく引退するシラク大統領の後任の選挙戦が熱を帯びています。今年のパリのメーデーはどんな雰囲気なのか見たい気がします。
都丸敬介(2007.4.16)

なんでもマルチメディア(503):ポケベルの終焉

今年(2007年)3月31日に、NTTドコモのポケベル・サービスが終わりました。ポケベルという用語は、NTTが付けた「ポケットベル」という名称が語源で、国際的な標準用語はページャーです。ポケベル・サービスが始まったのは1968年であり、1995年頃にはNTTグループ以外の事業者を含めて、国内のユーザー数が1,000万を超えました。この頃がユーザー数のピークで、携帯電話やPHSの普及とともに急速に衰退しました。NTTドコモは、2001年1月にポケットベルをクイックキャストに改名して、新しいサービス機能を追加しましたが、ユーザー数の減少を止めることはできなかったようです。
 消えていくサービスがある一方では、新しく生まれたサービスがあります。その一つがFONです。これは無線LANを複数のユーザーが共用する仕掛です。インターネットのユーザーが利用できる、公開されている無線LANとして、いわゆるホットスポット・サービスがありますが、FONはユーザーの宅内に設置した無線LANの設備を他のユーザーが利用するものです。世界で最初のサービスが英国で始まり、日本では2006年12月にサービスが始まりました。既存の無線LANとは異なる専用の設備が必要ですが、個人のユーザーが用意した設備を他人が使うことができるという意味で、情報通信ネットワークの新しい発展方向を示唆しています。他のユーザーの機器を利用して無線中継をおこなうアドホック・ネットワークの研究開発も活発になっています。
都丸敬介(2007.4.8)

なんでもマルチメディア(502):見果てぬ夢

時間に追われてしばらく旅に出かけないでいると、無性にどこかに行きたくなります。そんなときに、旅行会社から、ネパールのカトマンズを起点にして、ヒマラヤの空気を感じるツアーの案内が来ました。2月と3月の実施計画だったので,2月の申込みをしたのですが、参加者不足で実施されず、3月の計画も中止になってしまいました。今頃は雄大な雪山を見ていたはずなのに、と思うと残念でなりません。
 軽いトレッキング程度であっても、標高が高い場所を楽しむためには体力が必要です。昨年は、グランドキャニオンで高度差200mほどの上り下りを歩きました。こうして残っている体力を確かめながら歩いていると、行きたいところには早く行かなければならないという気持ちが強くなります。
 ニュージーランドの南島で、フィヨルドの上をセスナで飛ぶ遊覧飛行を予約したのが、出発直前に天候の急変のために中止になったことがあります。ここももう一度行ってみたい場所です。幸い、オーストラリアのエアーズロックでは、夕日に真っ赤に染まった広大な場所を2時間ばかり空中から見ることができました。
 アルプスは、モンブラン、マッターホルン、ユングフラウなど、いずれも登山電車やロープウエイで行ける最高点まで行って堪能してきました。でも、ヒマラヤのスケールは想像できません。来年は自分で計画を作ってカトマンズに行きたいと夢を見ています。
都丸敬介(2007.3.26)

なんでもマルチメディア(501):表層雪崩

今年は暖冬で山の雪が少ないにもかかわらず、雪崩による遭難のニュースが何度も報じられました。昨日(3月18日)もスノーモービルを楽しんでいた人たちが雪崩に巻き込まれる事故がありました。この雪崩は表層雪崩だったということです。表層雪崩は固まった雪の上に新しく積もった大量の雪が一気に崩れ落ちる現象で、最も危険な雪崩とされています。
 私は高校生時代に山登りのとりこになり、1950年代から60年代にかけて、時間を作っては上越国境の谷川岳に通いました。この頃、谷川岳の群馬県側の登山口にあった国鉄土合山の家のご主人だった中島さんから、何度も表層雪崩の話を聞きました。
 今でも印象に残っているのは、表層雪崩のことを「ほうら」という話です。雪崩に気がついて「ほうら雪崩だぞ」と言い終わらないうちに、巻き込まれてしまうほど速いことから「ほうら」とよぶということでした。
 谷川岳で最も有名な岩場である一の倉沢の奥にあった山小屋が、表層雪崩の被害にあった跡を見に行ったことがあります。雪の固まりが空中を飛んで、山小屋の2階部分を切り取ってしまったのです。雪崩が通った跡は、一抱えもあるような太い木が何本も、地表から1mくらいの高さですっぱり切られていました。
 雪山を楽しむ道具が進歩しても雪崩は起こります。雪崩を起こしたきっかけがスノーモービルだったとしたら、これは人災です。
都丸敬介(2007.3.19)

なんでもマルチメディア(500):パソコンソフトの地殻変動

文書作成、表計算、スライド作成といったパソコンの標準的な機能を実行するソフトウェアの分野では、マイクロソフト社が圧倒的に大きい市場占有率を確保していますが、この状態に大きな変化をもたらす新たな競争が始まりました。
 Word、Excel、PowerPointといったマイクロソフトの製品は3点セットで5万円くらいしますが、今年2月から3月にかけて、3分の1から10分の1程度の格安類似商品が次々に発売されました。インターネットを利用してダウンロードすれば、無償で使えるものもあります。これらのプログラムに共通していることは、マイクロソフトの製品とデータファイルの互換性があり、パソコンの操作画面もほとんど同じことです。部分的には、マイクロソフトの製品よりも優れた機能があります。
 同じようなことが写真や画像処理のソフトウェア分野でも起こっています。この分野では、アドビー社のPhotoshop Elementsというソフトウェアがリーダー格で、多くの優れた機能を備えています。このソフトウェアはかなり高額ですが、5分の1程度の安価な類似商品が最近発売になりました。
 こうした動向は、助成金がないボランティア活動のパソコン教室にとっては嬉しいことです。高齢者に大きな負担をかけることなく推奨できるソフトウェアが出現したことで、カリキュラムの範囲を大きく広げることができ、多くの受講者に喜ばれています。
都丸敬介(2007.3.14)

なんでもマルチメディア(499):パソコンの消費電力

世界的な異常気象が続き、地球の温暖化対策の議論が一段と活発になってきましたが、パソコンやインターネットの世界的な普及によって、全世界の電力消費量がどれだけ増えたのかというデータを見かけたことがありません。インターネットでパソコンの消費電力関係の情報を検索すると、電気料金がいくらかかるかという記事が大部分であり、冷蔵庫を始めとする家電機器と比べると、パソコンの電気代はかなり少ないという指摘で終わっています。
 最近のパソコンは、ブロードバンド・インターネット・サービスと連携する情報家電製品への変化が顕著に進んでいます。こうなると、ユーザーが直接支出する電気代だけでなく、情報通信ネットワーク全体の消費電力量を考えなければなりません。
 技術の進歩と設計者の努力によって、機能の大幅な向上にもかかわらず、個々のパソコンの消費電力は減ってきました。それでもなお、必要以上にエネルギーを消費していると考えられる部分があります。その一つが、ソフトウェアの肥大化に伴うことです。大部分のユーザーが使うことがないような機能によって、飛躍的に大規模なったソフトウェアを組み込んだときに性能が低下するのを防ぐために、ハードウェアの高性能化が進んでいますが、これは消費電力の増加の原因になります。1台のパソコンの消費電力の増加分は僅かでも、莫大な数のパソコンの総消費電力の増分は無視できないはずです。
都丸敬介(2007.3.5)

なんでもマルチメディア(498):故宮博物院

今月(2007年2月)8日に、台北にある故宮博物院の大改修が終わって公開されたことが報道されました。この博物院は世界四大博物館の一つといわれているそうですが、そのような肩書きを知らなくても、中に入るとそのすばらしさに圧倒されます。65万点あるという収蔵物は、内戦で敗退した国民党が北京の故宮博物院から運んだものですが、これだけのものをよくも運んだと驚きます。
 以前拝観したときの展示品は、陶磁器や絵画が多かったように覚えています。骨董屋の店先にあれば一つだけでも人目を引きそうな、美しい青磁や白磁の作品が何十も並んでいたのは壮観でした。このような展示物を北京の故宮博物院では見かけませんが、北京のほうには、運べなかったのではないかと思える大きな展示物がいくつもあります。両方の博物院を見比べると、歴史の流れを強く感じます。
北京の故宮は昔の紫禁城そのものなので、建物自体が素晴らしい文化遺産です。台北の故宮博物院は20世紀に博物館として建築されたものですから、北京の故宮と比較することは意味がありませんが、これも素晴らしい建造物です。
たっぷり時間をとって、もう一度台北の故宮博物院を見たくなりました。
都丸敬介(2007.2.18)

なんでもマルチメディア(497):南房総の花畑

今月に入ってから毎日のように、どこかのテレビ局で南房総の花畑の旅番組を放映しています。昨日(2月11日)は無風、快晴の行楽日和だったので、私も館山近辺の花を見に行ってきました。私の家から、久里浜の東京湾フェリー乗り場まで、車で30分程度で行けるのですが、混んでいて、約40分間隔で運行しているフェリーに乗るのに1時間半以上待たされました。
フェリーの房総半島側発着所がある金谷のすぐ近くにスイセンの里というひなびた集落があります。斜面を横切る、乗用車がすれ違うのに苦労するほどの幅の道に沿って、延々とスイセンが連なっています。花はまだ咲いていますが、みな盛りを過ぎて、黄色が茶色に変色していました。人出は少なく、のんびりと空気を楽しんでいるように見えました。
 房総半島最南端の海岸に沿った房総フラワーラインは立派なドライブ道路です。道沿いに約1km離れて「館山ファミリーパーク」と「南房パラダイス」という二つの大きなテーマパークがあります。館山ファミリーパークは駐車場が満杯で入れませんでしたが、南房パラダイスをゆっくり楽しみました。ここはシンガポールの国立植物園と姉妹提携をしているとのことで、園内に入るとすぐに、シンガポールの海岸にある有名なマーライオンのレプリカが立っています。園内には、花壇のほかに連絡通路でつながれた11の温室があります。全長が300mだそうです。サボテンの温室の大きなサボテンは見事でした。ラン園は、シンガポールのラン園のほんの一部の規模です。熱帯植物園を楽しむのであれば、その国に行かなければならないということを改めて認識しました。
 フラワーラインのあたりには、花摘み農園が点在しています。帰路は車の中が花の香りで一杯になりました。皆さんに花の香りを送れないのが残念です。
都丸敬介(2007.2.12)

なんでもマルチメディア(496):シニアのインターネット

書斎の窓から見える小さな梅林の梅花が三分咲きほどになりました。毎年のことでありながら、改めて新鮮な感じを受けます。講師を務めているシニア対象のパソコン教室でも、毎回新たな学習者の反応を感じています。
 「インターネットの情報閲覧」をテーマにした講座で、「近所の子供さんに、インターネットって何、と聞かれたらどう説明しますか」と受講者に質問したところ、「孫を連れてきて説明させる」という発言があり、皆で大笑いしました。
 初級クラスの受講者の半分程度、上級クラスの受講者の全員がインターネットを利用していますが、ポータルサイトの特徴や欲しい情報を確実に探し出す方法についてはほとんど知らないというのが実態です。小中学生だと、友達同士で情報交換をしながらいろいろな情報を探しますが、こうした情報交換の機会が少ないシニアクラスには、ある程度の基本的な仕組みを体系的に説明することが効果的であると実感しています。
 一通りの説明をした後で、たっぷり時間を取って、自由な情報閲覧の実習を行ったところ、次々にいろいろな発見があり、教室の雰囲気が大いに盛り上がりました。質問に答えながら、どのような情報に関心があるのかを見ていると、これまで気が付かなかったことが浮かび上がってきます。まだインターネットを利用していないご夫婦が、互いに見つけた情報を話題にしている姿を見て、インターネットの効用の一面を認識しました。
都丸敬介(2007.2.5)