明けましておめでとうございます。
典型的な冬型気圧配置のためか、逗子の空は青く澄み渡り、風もありません。昨年の夏は記録的な猛暑で、地球温暖化に対する関心が急上昇しました。しかし、昨年11月以降の気候は、記憶にある数十年前と同じであり、温暖化の影響は感じられません。年間平均気温のデータを調べてないので何ともいえませんが、本当に急速な温暖化が進んでいるのだろうかという疑問がわきます。
年末にマイクル:クライトン著「恐怖の存在」(ハヤカワ文庫)という小説を読みました。地球温暖化に起因すると考えられる異常気象対策を旗印にかかげた組織が、資金集めのために、大規模の異常気象を人工的に起こそうとする環境テロが中心テーマです。このテロ計画に気付いた主人公たちが、きわどいところでテロ活動を無力化するというサスペンス小説です。描かれているテロ活動が現実に実行できるとは思えませんが、著者の着想と大量の文献や資料を調べて引用したデータは興味深い内容です。
本のタイトル(原著はState of fear)について本文の中で著者が述べていることは、現代のリーダーたちが「恐怖」を示すことで社会を導いていることの危険性です。
小説には珍しく、巻末に6ページにわたる「作者からのメッセージ」が掲載されています。「現在の温暖化傾向がどの程度まで自然現象であるのかは、だれにもわからない」、「現在の温暖化傾向がどの程度まで人間活動によるのかは、だれにもわからない」といった指摘に答えを出すのが科学者に与えられた重要な課題です。
都丸敬介(2008.1.1)
なんでもマルチメディア(534):ARPUの推移
5年ほど前、あるセミナーでNTTドコモの幹部が「現在のARPU(1ユーザー当たりの平均収入)は8千円程度であり、これを1万円にもっていくのが最大の重点課題だ」という主旨の講演をしたのを聴いたことがあります。
最近目にした、携帯電話大手3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)のARPUの推移を見ると、各社共に2002年度から2006年度にかけてARPUの減少が続いています。2002年度には8千円を上回っていたNTTドコモのARPUは2006年度には約7千円に低下しています。KDDIの値はNTTドコモと同程度ですが、ソフトバンクモバイルの2006年度の値は6千円程度です。
ARPUは平均値ですから、この値だけではユーザーの状況はほとんど分かりません。手元にデータがないので正確ではありませんが、1980年代中頃のNTTの電話サービスのARPUは7千円程度であり、平均値以上の使用料を払っているユーザー数が25%程度だったと記憶しています。つまり、25%のユーザーが残りの75%のユーザーを支えることで、全国的な電話サービス事業が成り立っていたということになります。
携帯電話ユーザー数の増加が続いているけれどもARPUは低下している、そして固定電話ユーザー数の減少が続いているという状況を背景にして、情報通信サービス事業者がARPUの改善にどう取り組むのか、願望ではなく具体策に興味があります。
都丸敬介(2007.12.25)
なんでもマルチメディア(533):バリ島
インドネシアのバリ島で開かれていた、地球温暖化防止を話し合う国際会議COP13が終わりました。この会議の開催地としてなぜバリ島が撰ばれたのか知りませんが、この島の豊かな自然環境自体がいつまでも保たれることを願わずにはいられません。
学生時代に手に入れた、昭和12年発行の「東印度諸島の怪奇と芸術」という本を読んだときから、いつかは行ってみたいと思っていたバリ島に、1980年代から90年代にかけて国際会議や家族旅行で何度か行きました。
最初に行ったのは、技術セミナーの講師を頼まれたときでした。そのとき滞在したのは、第2次世界大戦の賠償として日本が建設したホテルでした。まだ、ホテルの外には土産物屋がなかった頃ですが、豊かな自然と伝統的なヒンズー文化を堪能できました。その後は、訪れるたびに急速に進む観光地化を実感しましたが、自然と歴史を背景にした文化は簡単には変わりません。
ガイドブックにも書かれていますが、インド洋に面した海岸の夕日は感動的です。旅行会社に頼んで、夕日を見るのに適したホテルの部屋をとってもらったことがあります。何もしないで夕日を見ているのは最高の贅沢の一つかもしれません。我が家の玄関には、羽を広げたガルーダを頭に乗せた少女の、黒檀の置物があります。これを見るとバリ島を思い出します。ガルーダはインドネシアのシンボルです。
都丸敬介(2007.12.16)
なんでもマルチメディア(532):人体通信
今日(2007年12月9日)の日本経済新聞第1面に「人体通信 実用化へ」という見出しの記事がありました。人体を通して電気通信の信号を伝える人体通信の研究は1990年代から行われていて、2004年にはこの技術を応用した製品が発売されています。これまでに発表された人体通信技術には複数の異なる方式があり、いろいろな応用分野が考えられていますが、まだ応用製品が普及する状態にはなっていないようです。
人体通信は人の手や体の一部が触れることでデータを伝える近距離通信です。この分野では、無線通信技術を利用するBAN(ボディ・エリア・ネットワーク)の研究開発も行われています。利用面からみた近距離無線通信と人体通信の大きな違いは、人体通信は情報漏洩の危険が非常に小さいことです。情報の送り手と受け手が握手をするだけで正確な情報が伝えられ、その内容が第3者に漏れることがないといった、スパイ小説に出てくるようなことが可能です。
情報漏洩に対して安全だということは、外部からの通信妨害の影響を受けにくいということになります。健康の管理や維持のためのデータ収集手段として、身体に付けた超小型無線センサーを利用する技術の開発が以前から行われています。人体通信技術はこの分野で優れた機能を発揮するかもしれません。今後の研究の進展に興味があります。
都丸敬介(2007.12.9)
なんでもマルチメディア(531):名刺
シニア世代のパソコン教室で、名刺の作成をテーマに取り上げてみました。名刺というと業務用のものを連想するためか、現役を引退した人や家庭の主婦が名刺を持つことがほとんどありません。けれども仕事とは関係なく役立つことが少なくありません。
手元の百科事典によると、1560年にヴェネツィアの留学したドイツ人が、帰国の際にお世話になった先生方を訪問し、不在のときは名前を書いた紙片を置いてきたという記録があるということです。このように、初期の名刺は訪問相手が不在のときに置いてくるものだったようです。
グループ旅行に参加すると、後で写真を送るから住所・氏名を書いて下さいと手帳をだされることがよくあります。旅行でなくても、なにかの会合で出会った人たちに自己紹介をすることがあります。このようなときは名刺を持っていると重宝します。
パソコン用の印刷用紙には、A4版1枚に10枚の名刺を印刷でき、印刷後にばらばらに切り離せる厚手のものがあります。パソコンを使うと、文字の形や色、配置などを自由に変えること、写真を入れることなどが簡単にできます。いろいろな種類の名刺を作って、名刺を使うときの状況に応じて使い分けることを提案したところ、あっというまに多くの種類の楽しい作品が生まれました。教室では、市販されている名刺作成ソフトではなく、標準的なワープロソフトを使いました。
余談ですが、写真の名刺判は、19世紀にフランスの写真家が名刺に写真を入れることを考えて特許を取ったときのサイズが、約5.7cm×9.2cmだったことに由来しているということです。
都丸敬介(2007.12.2)
なんでもマルチメディア(530):ミャンマーの人と生活
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ミャンマーで軍事政権に反対する僧侶たちの大規模デモが行われてから間もなく2ヶ月になります。昨年この国を旅して肌で感じた平和な市民生活を思うと、早く健全な民主主義国家になって繁栄することを願わずにはいられません。
ミャンマーの人口は4,400万人で、85%が仏教徒だということです。短い旅行の間に訪れた場所の多くは仏教遺跡や国民が日常的に参拝している寺院でしたが、隣国のタイとはかなり異なる印象を受けました。
現地を訪れて初めて知ったミャンマー独自の伝統文化に、生まれた日の曜日を大切にしていることがあります。曜日は、月曜、火曜、水曜の午前、水曜の午後、木曜、金曜、土曜、日曜、の八つあり、それぞれの曜日に対応する動物があります。そして、寺院の中心にある本堂の八方向にそれぞれの動物が祭られています。
ガイドさんの話によると、多くの人が生年月日から生まれた曜日を割り出す計算表を持っているということです。ガイドさんが調べてくれた私が生まれた日の動物はモグラです。ある大きなお寺で、祭ってあるモグラ(写真1)を拝んできましたが、どんなご利益があったのかはわかりません。
大きな寺院には屋根付きの門前市があります(写真2)。各国で見られる市場あるいはバザールとは全く異なる雰囲気で、浅草寺の仲見世と共通する空気を感じました。
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都丸敬介(2007.11.18)
なんでもマルチメディア(529):ツタンカーメンのミイラ
黄金のマスクで有名な、エジプトのツタンカーメン王のミイラが、昨日(2007年11月4日)に初めて公開されたというニュースが報道されました。昨日はツタンカーメンの墓が、85年前にルクソールの王家の谷で発見された日だということです。
このニュースを聞いて、今から40年以上前に、ツタンカーメンの黄金のマスクが東京で展示されたときに、長い行列に並んで見たことや、カイロのエジプト考古学博物館でこのマスクに再会したときの感激を思い出しました。
エジプト考古学博物館には素晴らしい展示品が多数ありますが、なかでもミイラ室に展示されている古代の王や女王のミイラは、今にも話しかけてくるようで、その保存技術には驚きました。この特別展示室は写真撮影が禁止されている聖域です。ミイラ室の中央には、13世紀にアブ・シンベル神殿を建設したラムセス2世のミイラが安置されています。
パリのルーブル美術館やロンドンの大英博物館にはエジプト文明を伝える素晴らしい遺産が沢山ありますが、エジプト考古学博物館に展示されているツタンカーメンの墓からの出土品と比較すると影が薄くなります。王家の谷にある多数の王墓に描かれている壁画は、そこに行かなければ見られないものです。中国の西域にある石窟の壁画の一部ははぎ取られましたが、盗掘されたエジプトの王墓の壁画は無事だったようです。
カイロのピラミッドは素晴らしいけれども繰り返して見に行くほどの魅力を感じません。けれども、王家の谷やルクソール神殿などがあるルクソールは、1週間ぐらい滞在したい場所です。
都丸敬介(2007.11.5)
なんでもマルチメディア(528):LPレコード
CDが出現して以来、LPレコードを聴く機会がめっきり減って、いつのまにかレコードプレイヤーもどこかにいってしまいました。最近、若い頃買ったLPレコードのジャケットを見ていて、無性に聴きたくなり、早速レコードプレイヤーを購入しました。この数日はLPレコードにはまっています。
LP、CD、DVDと3世代の媒体が揃っている、同じタイトルのミュージカル映画やオペラを比べて、LPの思いがけない良さを認識しました。数時間にわたる全曲のDVDを観賞するのは、フルコースのディナーのようであり、なかなか、まとまった時間をとることができません。これに対して、ハイライト部分を編集したLPは午後のティータイムのようであり、気楽に、しかも気持ちを集中して聴くことができます。
音楽を聴きながら、LPに添付された解説記事や歌詞を読んでいると、改めて多くのことを学びます。CDやDVDに添付されている、電気製品の取扱説明書のような小さなサイズの細かい字の解説と比べると、LPに添付されている解説はどれもおおらかな感じを受けます。これは優れた文化といえます。
ブロードバンドネットワークの普及にともなって、音楽をダウンロード購入する人が増えた影響で、CDの売上が大きく減少しているようです。音楽という商品の品揃えとコストを考えると、この傾向は当然のことですが、解説記事が伴わないことによる文化の衰退は残念です。
都丸敬介(2007.10.28)
なんでもマルチメディア(527):光ファイバー回線
今日(2007年10月21日)の日本経済新聞第1面に「NTT光回線3000万件目標、大幅下方修正へ」という見出しの記事がありました。2010年に全国で3000万回線とした、光ファイバー通信回線の普及目標の達成が、これまでの実績では難しいという判断から、目標を下方修正する検討を始めたという内容です。
しかし、「ブロードバンド通信サービスのユーザーが計画どおりに増えていないからだ」という説明だけでは、納得できないことがあります。ユーザーを接続するアクセス回線として光ファイバーを導入する方法の研究が、1980年代から1990年代にかけて活発に行われました。そして、老朽化した銅線のメタリック電話ケーブルを取り替えるときに、新しいメタリックケーブルを設置するのと同程度のコストで光ファイバー・ケーブルに置き換える方法が開発されました。これは、既存の固定電話だけで十分だというユーザーも含めて、一つの地域の通信回線をまとめて光ファイバー回線に置き換える方法です。
ところが、メタリック電話ケーブルを使ってブロードバンド通信サービスを実現するADSLが普及したために、一つの地域のメタリックケーブルをまとめて光ファイバーに置き換えることが難しくなったようです。NTTのメタリックケーブルを使ってADSLサービスを提供している通信事業者が困るからです。
通信ケーブルは重要なインフラ設備です。競合する通信事業者の利害が対立するので、すっきりした問題解決は難しいのかもしれませんが、互いに協力して光ファイバー回線の普及を進める時が来たといえましょう。
都丸敬介(2007.10.21)
なんでもマルチメディア(526):階段
家の近くの散歩道に40段ほどの石段があります。この石段を登るとその日の体調がよく分かります。山形の山寺や金比羅宮を始めとして、多くの神社仏閣に長い石段あるいは階段があり、これを登りつめると必ず素晴らしい光景が見られます。これは日本国内だけのことでなく、海外でも印象に残っている階段が少なからずあります。
これまでに経験した最も急な階段は、カンボジアのアンコールワットのものです(写真1)。
傾斜が急なだけではなく、一段の幅が足の長さよりも短いので、かなり危険です。この階段がある、アンコールワットの中心にある建物の外には、滑落に備えて救急車が待機しています。
写真2は莫高窟千仏洞で有名な中国の敦煌の郊外にある「鳴沙山」に登る階段です。さらさらした砂山に、梯子を置いたものです。登りにはこの階段を使いますが、降りるときは砂を滑るのが快適です。有料の簡単なそりも用意されています。この砂山の頂上は夕日を見るのに絶好の場所です。
中国の西安にある、玄奘三蔵がインドから持ち帰った仏典を収めた大雁塔は7層の塔で、最上階まで登る階段の段数は般若心経の文字数と同じだそうです。自分で数えたわけではないので、本当かどうかは分かりません。最上階からの眺望は雄大です。
若い頃は頻繁に山登りをしていたので、今でも石段や階段を登ることに心理的な抵抗はありませんが、加齢とともにバランス感覚が悪くなり、不安定になってきたことを感じます。それでも、階段を登ることで得られる楽しみをいつまでも味わいたいと思います。都丸敬介(2007.10.14)