なんでもマルチメディア(452):ミャンマー旅行記(2)

3月18日(土)バガン(2)
 シュエサンド・パゴダは広大な遺跡群を見渡す展望台である。手摺がついた急な石段を5層まで登り、回廊から見た景色は絶景だ。寺院あるいはパゴダの遺跡以外に建物はなにもない。日の出と日の入りの時間帯には大勢の人が集まるという。(写真)
バガンの遺跡群.jpg
 イラワジ河を見渡すレストランで昼食。最初に出された天ぷらはミャンマー・ビールによく味があう。天ぷらの衣は米の粉。鶏肉のカレー、豚肉のカレー、野菜の炒めものなど、どれも味がよい。
 昼食後ホテルにチェックイン。ミャンマー・トレジャー・リゾートという新しいレジェ?・リゾート・ホテルで、宿泊施設は8棟の2階建ての建物に分散している。レストランはプール脇の吹き抜けの建物。道路から建物まではかなりの距離があり、守衛が詰めている敷地の入り口近くに、遺跡のパゴダが三つ、椰子の木に囲まれて草の中に建っていた。
 午後4時までホテルの部屋で休憩。日差しが強く、暑くなってきたので、冷房が効いた部屋での昼寝は快適だ。
 巨大な立った姿の仏像と寝釈迦像があるマヌーハ寺院を拝観。タビィニュ僧院の庭で第二次世界大戦の日本人戦没者慰霊碑を参拝してから、イラワジ河のクルージング。20人ほど乗れる釣り船のような船で、乗客はガイドを含むわれわれ三人と乗組員二人だけ。河幅は数百メートルあり、流れているのが分からないほど穏やかで、聞こえる音は船のエンジン音だけ。護岸工事が全くない川岸から100mほど離れた河を北上すると、川岸の森の上に次々にパゴダの頭が現れる。家は見えないが、水浴や洗濯をしている人たちを見かける。バガンとマンダレーの間を10時間かけて移動するという、大型クルーザーが停泊していた。ナイル川のクルーザーに匹敵する立派な船だ。
 黄金色に輝くシュエジゴン・パゴダを通り過ぎたところで折り返し。地平線に近づいて赤くなり始めた太陽が支配する雄大な景色は信じられないくらい美しい。船のエンジンを止めて、しばらく景色に見とれる。上陸して、ひょうたん型のブーバヤー・パゴダで日が沈むのを見送った。(写真)
ブーバヤー・パゴダの夕日.jpg
都丸敬介(2006.04.04)

なんでもマルチメディア(451):ミャンマー旅行記(1)

3月18日(土)バガン(1)
 昨夜7時頃ヤンゴンのセドナ・ホテル・ヤンゴンにチェックイン。東京の一流都市ホテルにも劣らない立派なホテルだ。ヤンゴンを見るのは後回しにして、今日の旅はバガンから始まる。早朝4時モーニングコール。5時にホテルを出て空港に向かう。ミャンマー人の若い女性ガイドと我々夫婦三人の旅が始まった。空港の待合室で、ホテルが用意してくれたパンと果物の朝食。6時30分発のジェット機に乗り、1時間強でバガンに着いた。バガンの空港は新しく、仏教建築風の空港ビルは清潔である。
 現地の旅行会社がチャーターしたタクシーで、空港から町までは30分程度。道路が広く車が少ないので快適なドライブ。走っている車の8割は中古日本車だという。最初に訪れたのはニャンウーマーケットという町の市場。野菜や果物、魚、米といった食品のほかに、日常生活品や衣料品から骨とう品まで何でもある。食料品は生産者が運んできたもので、周辺の町の販売業者も仕入れにくるという。
 バガンは大河イラワジ河のほとりにある、仏教寺院遺跡の町である。11世紀から13世紀にかけて建築された数千の寺院や仏塔が林立している。何度もの大地震があり、崩壊と再建が繰り返されてきたという。
 最初に訪れたバガン郊外のシュエジゴン・パゴダは、黄金色に輝く巨大な釣り鐘型の建物だ(写真)。肉眼では見えないが、塔の最上部には巨大な宝石が埋め込まれているという。パゴダの入り口には屋根つきの大きな門前市があり、通路の両側に仏具屋や土産物店などが並んでいる。ここは聖域の中であり裸足で歩く。境内には中心になる巨大なパゴダのほかにも多くの塔がある。ミャンマーは人口の85%が敬虔な仏教徒であり、多くの塔や仏像は信者が寄進したもの。この国の仏教はお釈迦様だけを信仰の対象にしている。
シュエジゴン・パゴダ.jpg
 町の中心部分にそびえ立つアーナンダ寺院(写真)は,東西南北のそれぞれの方角を向いた、高さ9mを超す大きな仏像が祭られている。この仏像の材料はチーク材だという。
アーナンダ寺院.jpg
都丸敬介(2006.04.03)

なんでもマルチメディア(450):ミャンマー旅行

一週間ばかりミャンマーを旅行してきました。インドとタイに挟まれて、これらの国と風土や歴史そして宗教が似ているミャンマーには以前から興味がありましたが、土地勘がないので、どこをどう回ればよいのか分かりませんでした。そこで、旅行会社のパンフレットやインターネットで情報を集めて、ある旅行会社のプランを利用することにしました。結果的には家内と二人で出かけて、現地のミャンマー人ガイドと三人で優雅な旅行をしてきました。
 政治や経済の面では成長が著しい近隣諸国と比較して遅れているようですが、恵まれた国土と穏和な人たちに接して、すばらしい国だという感想を持ちました。ミャンマーの面積は日本の1.8倍、人口は4,400万人。85%が敬けんな仏教徒です。西のベンガル湾側にある大きなアラカン山脈に遮られて台風の影響はなく、広大な平野では米の三毛作が行われています。また宝石や錫などの地下資源があります。北部の山岳地帯ではスキー場の建設が始まっているとのことです。
 日本からの直行便がないので、バンコクで乗り継いで首都のヤンゴンに入り、国の中央部にあるバガンとマンダレーを回りヤンゴンに戻りました。ヤンゴンを東京とすると、バガンは奈良に、マンダレーは京都に相当します。これらの都市の間は国内線旅客機で移動し、旅行会社がチャーターしたタクシーでそれぞれの地域を回りました。個別の見聞は後日報告いたしますが、高さが100mを超す黄金のパゴダや林立する大小多数の寺院遺跡には圧倒されました。日本人の旅行者は非常に少なく、目立ったのは、ドイツ、フランス、イタリアといったヨーロッパの旅行者でした。近い将来、人気が出る観光地になる予感がしました。
都丸敬介(2006.03.27)

なんでもマルチメディア(449):ガス会社のインターネット事業

米国のガス会社が、家庭や企業に天然ガスを供給しているパイプのネットワークを利用して、ブロードバンド・インターネット事業を提供する計画を推進しているという情報があります。
ガスの分配ネットワークの構成は、ケーブルテレビの番組配信ネットワークによく似ています。したがって、金属製のガスパイプを利用してインターネット情報配信ネットワークを作るという発想はそれほど突飛ではありません。しかし、ガスパイプの材料や構造は通信用ケーブルとは違うので、高速データを長距離伝送することは、技術的にはかなり困難です。このガス会社が研究しているのは、UWB(ウルトラ・ワイドバンド)という、高速無線通信技術を利用する方法で、100Mビット/秒?1Gビット/秒の高速データ伝送が実現できるという話です。この伝送速度は、光ファイバー・ケーブルを使うFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)システムに匹敵し、電話ケーブルを利用するADSLよりも遙かに高速度です。
 技術開発の実態を調べていませんが、関係者は、2008年までに米国内の数百万の家庭にこのシステムを普及させると言っているようです。既存の設備を利用するので、サービスを提供するのに必要なコストは、ADSLやFTTHよりも少ないということです。
この技術の名称はBiG(ブロードバンド・イン・ガス)です。本当にビッグな事業になるのかどうか、日本のガス事業者はどのような刺激を受けるのか、といったことに興味があります。
都丸敬介(2006.03.12)

なんでもマルチメディア(448):電子メールのセキュリティ

一通の偽電子メールで国会が混乱し、最大野党ががたがたになった、お粗末な事件が発生しました。最後には危機管理意識の甘さということになりましたが、この事件はいろいろな教訓を含んでいます。問題になったのは、メール送信者の正真性と内容の正しさの二点でしたが、これらのことのほかにもいくつかの問題があります。
 第一に、極めて重要で微妙な内容を、通常の文字メッセージ(平文)で送ることの危なさです。平文で書かれた電子メールのコピーなど、だれでも作れます。第三者には読めない暗号文のメッセージであれば、注目されることは少ないでしょう。暗号文でなくても、筆跡鑑定ができるような手書きの電子メールであれば、内容の正真性が大きくなります。手書き文書をスキャナーで読み取って作成した文書を、電子メールに添付することは簡単です。この場合も、所詮はコピーですから、手書き原本ほどの確からしさはないかもしれませんが、当事者間だけでわかる目印をつけることで弱点を補えます。コピーを取る前に、受信した手書き文書を改ざんする危険性に対しては、ディジタル署名という改ざんの有無を検証する技術があります。
 電子メールの送信者と受信者を秘匿するときに、匿名を使うことがあります。社内といえども、機密性が高い情報を電子メールで伝えるときは、限られた範囲の人しか知らない匿名を使う配慮が必要かもしれません。
このほかに、電子メールのセキュリティ問題として、他人になりすまして電子メールを送信する偽装があります。今回の事件は、便利な道具の手軽さだけに気を取られず、怖さを良く理解することの重要性をあらためて指摘しました。
都丸敬介(2006.03.05)

なんでもマルチメディア(447):CNNとアトランタ

米国のテレビ局CNNの創設者テッド・ターナー氏が第一線から引退するという報道がありました。同氏がCNNを設立したのは1980年で、場所は「風と共に去りぬ」の舞台になったアトランタです。当時、私はアトランタに行く機会が多かったので、ついでに、創業間もないCNNの本社を見学したことがあります。
 当初のCNNは地方都市のケーブルテレビ会社でした。実用になったばかりの通信衛星を利用して、それまでは視聴できなかったテレビジョン番組を中継して配信するという、新しい事業が成功したのです。本社の庭に、衛星からの電波を受信するための大口径パラボラアンテナがいくつも並んでいるのが印象的でした。日本のケーブルテレビも難視聴地対策として始まったのですが、日本の難視聴地と米国のテレビ空白地域は、面積や人口が桁違いだということを実感しました。
 CNNの本社には、自前の放送スタジオがありました。このスタジオは、後年見学した東京MXテレビのスタジオと、規模も雰囲気もよく似ていました。しかし、現在のCNNと東京MXテレビを比べると、経営者の考え方と行動力の差を強く感じます。
 アトランタ郊外の観光地にストーンマウンテンがあります。平らな広い土地の中に、世界最大の花崗岩といわれる、高さ250mに近い一塊の岩が盛り上がっています。オーストラリアの中央部にある、高さ350mのエアーズロックに形がよく似ているだけでなく、先住民族の長老たちが、何かあると集まって会議を開いたということも似ています。ただし、エアーズロックは周囲が沙漠ですが、ストーンマウンテンの周囲は豊かな森です。この一帯は公園になっていて、「風と共に去りぬ」の時代のいろいろな家が保存されています。機会があればもう一度行きたい場所の一つです。
都丸敬介(2006.02.26)

なんでもマルチメディア(446):産業スパイ小説

産業スパイが活躍する小説はいろいろありますが、技術面では荒唐無稽で、非現実的な内容が少なくありません。最近読んだ、ジョゼフ・フィンダー著「侵入社員」(新潮文庫)は、2004年に出版された、米国の情報機器メーカーを舞台にした産業スパイ小説で、IT製品開発やセキュリティー技術を中心に、産業スパイの小道具がしっかり描かれています。
技術用語は一般読者には分かりにくいかもしれませんが、IT関係者にはかえって現実感を与える効果があるようです。著者が記した巻末の謝辞に「アメリカのハイテク産業で見たものはわたしの想像をはるかに絶したものだった」という一文があります。そして、企業の保安や情報管理について、幾人もの専門家から話を聞いていることが述べられています。こうして得た知見が見事にストーリーの中に活かされています。
物語は、先端的IT企業のはみ出し社員が、特訓を受けてライバル企業にスパイとして送り込まれることから始まります。結果的には二重スパイになり、転職先で高給を保証されるようになったけれども、最後は新しい道を探し始めます。読み終わったとき、なぜか「現代の西部劇」という印象が残りました。極めて米国的な良質のエンターテイメント作品です。
 時間をたっぷり手にしたオールド・エンジニアにとって、読書は大いなる楽しみです。産業スパイ小説の情報をお知らせ頂けると幸いです。
都丸敬介(2006.02.19)

なんでもマルチメディア(445):食べて旅して

以前、NHKの深夜ラジオ放送に「食べて旅して」という番組がありました。また、頻繁に放送されるテレビの旅番組には、必ず食事のシーンがあります。私は料理ができないし、料理を覚えようという気持ちがないので、食材や調理の方法は全く分かりませんが、旅先で出会った食べ物には、いつまでも記憶に残っているものが少なくありません。
 1970年代の初めに、始めて行ったイタリアの町は、昨日からのオリンピックの舞台になったトリノに比較的近いミラノでした。一週間ばかり滞在したのですが、スパゲッティとフリッター、そしてエスプレッソのとりこになりました。
 もともと麺類が好きなのですが、イタリアで最初に食べたスパゲッティ・ボンゴレには感激しました。腰が強い麺と比較的あっさりしたスープの味は、イタリアのどこの町でも満足できます。ところが、隣国のスイスやフランスでは、美味しいスパゲッティに出会ったことがありません。私が経験した最悪のスパゲッティは、米国のディズニーランドで食べたものです。ロサンジェルスの高級ホテルの中にある日本料理屋で食べた稲庭うどんは最悪でした。
 スイスの名物料理として有名なフォンジュも、記憶に残る幾つかの経験があります。バーゼルでホテルの人に紹介してもらった店では、一つずつ串に刺した肉が、開いた花びらのように大皿に盛りつけてありました。ジューシーな肉を食べた後の串が目の前にどんどん積み上がるのは爽快でした。
 エジプトで食べた不思議なパンも印象に残っています。インドや中近東のどこにもある主食のナンと同じような白い生地のパンですが、ふっくらと膨らんで真ん中が中空になっているものです。これをちぎって、中にいろいろな具を挟んで食べるのです。伝統的な食べ物は、風土から生まれ、その場所で食べるのが最高だということを何度も経験しました。こうした食べ物に出会ったときは幸せを感じます。
都丸敬介(2006.02.12)

なんでもマルチメディア(444):ホームネットワーク

家庭内にある多種類の情報機器や家電製品あるいはセキュリティ機器をつないで、経済的に利便性を拡大することを目的とする、ホームネットワーク(家庭内情報ネットワーク)の製品化がにぎやかになってきました。ケーブル方式のLANや無線LAN を使う、パソコンを中心とする情報ネットワークは、すでに多くの家庭に普及しています。これとは別に、PLC(電力線データ通信)という、電力配線を利用する一種のLANの技術を使うシステムが姿を現し始めました。
PLCはすでに家の中に設置されている電力配線を利用して、高速データ伝送を行う技術です。電源コンセントに電力線モデムあるいはPLCモデムというデータ送受信装置のコードを差し込みます。そして、電力線モデムにつないだ情報機器の間でデータをやりとりします。
日本国内では、2000年10月に九州電力がPLCの実証実験を開始して注目されました。その後、2004年2月に米FCC(連邦通信委員会)が技術基準作りを提案したこともあり、米国の電力会社各社が試験を始めました。また、2005年には総務省主催の研究会が発足しました。こうした動きを背景にして、最近、PLCを使うホームネットワーク製品開発のニュースが増えてきました。
 PLC製品が実用になると、既存のLANとの主導権争い、あるいはPLCとLANの共存が大きな問題になります。すでに、PLCとLANを組合せて使う統合ネットワーク製品が発表されていますが、素人が家の中で自由に使いこなすのは難しそうです。ホームネットワークの普及には、日曜大工的な作業で各種の機器をつなぐことができなければなりません。これは非常に難しい問題であり、どのように解決されるのか、今後の展開が注目されます。
(訂正)前回の「見てみたい名画」のなかで、「ミケランジェロ:最後の晩餐」と書いたのは、「ミケランジェロ:最後の審判」の書き違えです。訂正させて頂きます。
都丸敬介(2006.02.05)

なんでもマルチメディア(443):見てみたい名画

1月28日(2006年)の日本経済新聞別刷り「NIKKEIプラス1」に、「一度は見てみたい名画」の調査結果が記載されていました。1位がレオナルド・ダ・ヴィンチ:モナリザで、その後の10位までは、ゴッホ:ひまわり、ムンク:叫び、レオナルド・ダ・ヴィンチ:最後の晩餐、ピカソ:ゲルニカ、ミレー:落穂ひろい、ミケランジェロ:最後の晩餐、モネ:睡蓮、ドラクロワ:民衆を導く自由の女神、フェルメール:真珠の首飾りの少女です。
 私は最後の一つを除いて全部見たことがあります。この記事を読みながら、それぞれの作品が置かれている場所を思い出しました。もう一度見るとすればどれにしたいかと問われたとすると、迷いなく、パリのオランジェリー美術館にあるモネの睡蓮の部屋を選びます。大きな楕円形の二つの部屋の壁に、それぞれ4枚ずつ睡蓮の池が描かれています。部屋の中には鑑賞用の椅子があるだけです。私が行ったときは、何人もの人が床に寝そべって、気持ちよさそうに壁の絵を見つめていました。日経の記事によると、オランジェリー美術館は改装中で、再開は2006年の5月か6月になる見通しだそうです。
 モネの睡蓮の部屋から、東山魁夷が描いた、奈良・唐招提寺にある鑑真和上の御影堂障壁画を連想しました。昭和40年代から50年代にかけて、二期に分けて描かれた合計68面の大作が、唐招提寺に収められる前に一般公開されたのを見ました。
マネと東山は絵の主題も画法も違いますが、伝わってくる安らかな気持ちは共通しています。これらの絵を音楽にたとえると、マネからはビバルディを、東山からはシベリウスをそれぞれ感じます。
都丸敬介(2006.01.29)