なんでもマルチメディア(588):好きなワイン

欧米の通信事業者と頻繁に情報交換をしていた時代にワインを飲む機会が増えたこ

とから、ワインに興味を持つようになりました。そこで一年間ワインの通信教育を受

講しました。毎月解説付きのワインを数本飲んで、最後には修了証書をもらいまし

た。飲酒量は少ないのですが、かなり前から、いつもシャブリを手元においてありま

す。

 いつか読んだ海外小説に、「日本人がシャブリを買い占めてしまうので、フランス

人の口に入りにくくなった」という趣旨の記述がありました。シャブリはブルゴー

ニュ地方の北西部の地名であり、ここでできる辛口白ワインの名前です。カリフォル

ニアワインにもシャブリという名前のものがありますが、ブルゴーニュのシャブリに

ある、独特の土壌による味がありません。

 フランス企業の日本支社の社員に、内輪のクリスマスパーティーに招かれてことが

あります。このときの当番が選んだワインがプイ・フュッセでした。そして贅沢な味

を一つ覚えました。また、アリゴテの味も覚えました。イタリアの白ワインではガ

ビ・ディ・ガビが好みです。

 フランスのアビニョン郊外にある小さな個人経営のホテルに数日滞在したときのこ

とです。最後の夕食にホテルのマダムが選んでくれた赤ワインがおいしかったので、

記念にラベルをはがすよう頼みました。ところが、翌朝出発するときに、ラベルをき

れいにはがせなかったといって、中身が入っている一本を土産に持たせてくれまし

た。このとき以来、ワインショップでコート・デュ・ローヌの名前を見ると心が弾み

ます。

都丸敬介(2009.2.22)

なんでもマルチメディア(587):ボストンのロブスター

逗子駅から葉山に行く道が海岸に出る手前に、レストランチェーンのレッドロブス

ターの店があります。久しぶりに海岸に散歩に出かけて、この店の看板から昔のこと

を思い出しました。レッドロブスターという店の名前は、米国メイン州の特産品であ

るメインロブスターに由来したと記憶しています。

 私がメインロブスターの味を覚えたのは、今からちょうど30年前にボストンに行っ

たときです。現在のインターネットの全身であるARPANETの機器を開発して製造して

いたBBNという会社がボストンの郊外にありました。この会社を訪問したときに泊

まったボストン市内のホテルの近くのレストランは、どの店もロブスターを売り物に

していました。

 一軒の店を選んで入ると、ウエイトレスにいきなりボイルかブロイルと聞かれまし

た。最初は意味がわからなかったのですが、すぐに「ロブスターを食べるのだろう。

ゆでるのか焼くのか」という質問だとわかりました。大きなはさみをもった、新鮮で

巨大なロブスターがたった7ドルだったことを今も覚えています。その後でロサンゼ

ルスで食べたメインロブスターは20ドル以上しました。

 1980年代の初期に東京の六本木にレッドロブスターが開店したころは何度か行きま

した。当時のこの店の自慢は、米国から生きたものを空輸し、死んでしまうと廃棄す

るということでした。この頃、アンカレジ空港の土産店ではさみをテープで巻いた生

きているロブスターを売っていました。今はどうなっているのでしょうか。

都丸敬介(2009.2.15)

なんでもマルチメディア(584):年賀状の季節

1月も後半に入り、年賀状の季節が終わりました。今年もたくさんの年賀状を頂戴

しましたが、喪に服しておられるとの連絡も少なからずありました。私自身70代後半

の後期高齢者ですから、いつ知人の住所録から私の名前が消えてもおかしくないので

すが、私の住所録から親しかった人の名前を削除するのは悲しいことです。

 一方では、最近知り合った人たちからの年賀状で、いくつもの新たな喜びをいただ

きました。指導をしているシニアパソコン教室の受講者で、昨年は手書きの年賀状を

頂いた方から、今年は見事な写真入り年賀状やイラスト入り年賀状をいただきまし

た。昨年の9月にパソコンの学習を始めた人からいただいた、「パソコンで年賀状を

作れました」というメッセージからは喜びが伝わってきました。

 話が変わりますが、古い写真を復元する講座で、いくつかの感動的な出来事があり

ました。小学生時代の集合写真の一部を切り出して拡大していた受講者の一人が、元

の写真では判別できなかった友人たちの顔を見ているうちに、一人一人の名前を思い

出してなみだぐんでしましました。亡くなられたお母様の一枚しかない写真を復元、

複製して姉妹に送り喜ばれたという人や、数代にわたる家族の写真を一枚にまとめた

人がいます。

 シニア世代の人たちの感性とチャレンジ精神に、あらためて感心しています。

都丸敬介(2009.1.18)

なんでもマルチメディア(583):中国の古典

明けましておめでとうございます。

 最近中国では論語をはじめとする古典を勉強する「国学」が盛んになっているとい

うことです。1980年代に中国のコンピューター研究所で数日の講座の講師をしたこと

があります。そのとき、論語の中のいくつかの有名な言葉を引用したところ、大部分

の受講者は知りませんでした。その場で司会者が、引用した言葉の解説をしたことが

強く印象に残っています。後で知ったことですが、文化大革命で中国古典の勉強が禁

止されたことの影響だったようです。

 私は40代の後半から50代の前半にかけて、中国の古典を読みあさったことがありま

す。今でも手元に残っている何冊かの本をときどき拾い読みしています。中でも菜根

譚が気に入っています。1984年に発行された、守屋洋著「中国古典の人間学」による

と、「菜根譚は、江戸時代から現代まで広く日本人に愛読されてきた中国古典」だと

いうことです。守屋氏は「しっかりと自分の立場を確立して外物に支配されなけれ

ば、成功したところで有頂天になることもないし、失敗したところでくよくよするこ

ともない。この世界、どこへ行っても悠々たる態度で対処することができる」という

言葉を解説しています。

 昨今のような混乱した時代になると、企業や組織の人材育成では「孫子」に出てく

るような戦略的なものごとの見方が強調される傾向があります。中国の国学ブームが

何を生み出すのか興味があります。

都丸敬介(2009.1.4)

なんでもマルチメディア(577):ニュース放送

好奇心が旺盛だった時代に手当たり次第に読んだ本のページをめくっていると、思

いがけない発見があります。今、机の上にある本は、昭和57年(1982年)に日本放送

出版協会が発行した「テレビ・ジャーナリズムの世界」です。

 この本の主題から外れたところに、ニュース放送の歴史についての解説がありまし

た。以下、興味深いいくつかの記述を引用します。

 「NHKのニュースは、時計の長針が十二時を指すとき、つまり正時に始まるのが原

則である。」、「NHKが独自にニュースを編集して全国放送したのは、昭和五年十一

月一日からであった。(中略) まだ、ニュースは正時に放送するという原則は確立

していない。」 

 ニュースを正時に放送するという原則が確立したのは、定時ニュースの回数が一日

に十一回になった、太平洋戦争中だったそうです。「正時にはニュースというこの原

則は、ニュースが一日の流れのなかで、句読点の役割を果たすことを意味してい

る。」という感覚は現在も生きているのでしょうか。昭和二十六年に民間放送ラジオ

が生まれたとき、「民放ラジオがとった対策は、NHKニュースよりも一刻早く、

ニュースを放送するという民放の“原則”が生まれた。」ということです。

 私は、NHK衛星第一放送の「おはよう世界」を毎朝見ています。短時間に世界のお

もな放送局が注目している出来事を知ることができるのは素晴らしいことです。イン

ターネットからも常に新しいニュースを入手できます。こうした現状を「テレビ・

ジャーナリズムの世界」を執筆した人たちがどう分析しているのか知りたいことで

す。

都丸敬介(2008.11.17

なんでもマルチメディア(576):大統領選挙とインターネット

今日(2008115日)米国の大統領選挙で、次の大統領に民主党のオバマ氏が当

選しました。この選挙について連日行われた報道の中で、オバマ陣営が行ったイン

ターネットの効果的な利用方法が目に付きました。動画配信サービスYouTubeを積極

的に使って情報を流し続けたことや、献金サイトで巨額の選挙資金を集めたことは、

歴史に残る新しい選挙活動手法の導入といえるでしょう。

 この選挙を取り上げたテレビ番組の中で、オバマ陣営にはインターネットの活用方

法について、優秀なスタッフがいるのだろうという解説がありました。この解説を聞

いて1990年代のクリントン大統領時代の重要な政策の一つを思い出しました。

 199610月に民主党のクリントン大統領とゴア副大統領が「NGI(次世代インター

ネット)イニシアティブ」という計画を発表しました。これは第2世代インターネッ

ト技術開発プロジェクトで、高速IPネットワークの構築と、これを利用するアプリ

ケーションの開発がおもなテーマでした。そして、政府主導のNGIと、多数の大学に

よるI2(インターネット2)という二つのプロジェクトが実施されました。

 その後、ゴア氏は現大統領のブッシュ氏との大統領選挙で敗れましたが、NGIプロ

ジェクトを推進したことが、オバマ氏の勝利につながったように思えます。

都丸敬介(2008.11.5

なんでもマルチメディア(574):そばの季節

新そばの時期になりました。そばというと信州そばが有名ですが、福島県の会津地

方もそばの名産地です。先週、知人に案内されて、会津山都そばを味わってきまし

た。山都はラーメンで有名なJR磐越西線喜多方の隣の駅です。駅の近くに「飯豊とそ

ばの里センター」があり、そば粉をはじめとするそば打ちに必要な器具を売っている

だけでなく、そば打ちの体験ができます。直径40cmほどの石臼に17万円の定価がつて

いるのには驚きました。

 今回は山都のそば屋でそば会席をご馳走になりましたが、山都から車で30分ほどの

飯豊山の麓にある宮古には珍しい水そばがあります。宮古は山間の小さな部落で、十

数軒の農家が座敷でそばを提供しています。水そばは椀に入れた水にそばをつけて食

べます。この水は地元の名水です。そば以外の味が一切ないので、そば本来の味と食

感が直接伝わってきます。

 以前、宮古で水そばを賞味したときには感激しました。そば屋のおばあさんが、辛

みをつけるとまた違った味になるからと言って、裏の畑から辛み大根をとってきて、

すり下ろしてくれました。このときの味も忘れられません。

 地図で見ると山都や宮古はかなり遠い場所に見えますが、東京から日帰りできま

す。新幹線に乗って、一杯のそばを食べに行くことは最高の贅沢かもしれませんが、

そこでしか味わえないという価値があります。

 これから会津地方ではあちこちで大規模の新そば祭りが始まります。静かな水そば

と賑やかな新そば祭り。どちらも楽しめます。

都丸敬介(2008.10.19

なんでもマルチメディア(572):合成写真

このコラムの569回で合成写真を作るための写真の切り抜きのことを書きました。定年退職後に絵画教室でシニアライフを楽しんでいる人や、デジカメで写真を撮りまくっている人がたくさんいますが、合成写真を作って楽しんでいる人は比較的少ないようです。

 パソコンで合成写真を作るのは難しそうだと思っている人が少なくありませんが、それほど難しいことではありません。パソコンでは合成する個々の素材の大きさや色彩の変更が簡単にでき、素材の組み合わせや配置を手早く自由に変えることができるので、作業の基本がわかると、比較的簡単にいろいろな作品を作ることができます。

 添付した合成写真の「ケシの園」はパリの北西ジヴェルニーにあるクロード・モネの庭園です。ノルウェーの老人が何を話し合っているのか、パソコン教室の受講者の人たちがストーリーを考えてくれています。

 「瞑想」の仏塔は、カトマンズのお寺の境内に雑然とおかれていた寄進物の一つです。高さが1mほどの小さなもので、目立つものではありませんでしたが、これだけを切り抜いたところ立派な姿になりました。曼珠沙華は今月自宅の庭に咲いたものです。


keshinosono.jpg ハンドレッドクラブの皆さんはいろいろな場所で写した写真を持っていることと思います。眠っている写真を素材にして新しい夢を創造することをおすすめします。細かい切り抜きは身体の老化防止に役立つようです。

 

 


meisou.jpg都丸敬介(
2008.9.29

なんでもマルチメディア(569):切り抜き写真

 


kirinuki.jpg最近、写真の切り抜きにのめりこんでいます。切り抜きといっても、印画紙にプリントしたものをはさみで切り抜くのではなく、パソコンの画面での切り抜きです。

 これを始めたきっかけは、講師を務めている高齢者パソコン教室で写真の合成を学習テーマに取り上げたことです。合成写真を作るときは、合成する写真を切り抜く作業が必要です。このために、合成写真を作るのに使うソフトウエアには、切り抜きのための機能がいくつか用意されています。輪郭がはっきりしていて、比較的単純な形状の画像は簡単に切り抜くことができますが、それでも、思うようにならずに苦労している受講者がいます。

 わかりやすいテキストを作り、実習に適した教材写真を探しながら、いろいろな写真の切り抜きをしている間に、一つ一つの切り抜きが持つ面白さに気を取られるようになりました。

 添付したスライドの右上と左上の花は、庭にたくさん咲いている小さな花です。たくさん咲いている花を全体として見て「きれいだな」と感じていたものが、1つだけを切り出すことによって、違った感じになります。中央の花は、家の近くにある寺の杉林の薄暗い場所に咲いていた花です。左下の像はインドで買ってきた、高さ45cmの彫刻の一部です、右下の人形はノルウェーで買ってきたものです。それぞれに、元の写真では周りの色や雰囲気に埋没していた表情が生き生きと浮かび上がってきました。

 複雑な形状の切り抜きには数時間かかります。長い時間、気持ちを集中して手先を動かすことは心身の老化防止に大きな効果があるようです。

都丸敬介(2008.9.8

なんでもマルチメディア(565):インターネット利用健全化のきざし

インターネットの普及に伴って、これを悪用する犯罪行為や新しい社会問題がエスカレートしていますが、最近、こうした問題を是正して利用の健全化に向かう流れが始まったようだと感じたことがあります。

 その1つが、有害情報を提供しているウェブ・サイトへのアクセスを規制するフィルタリング・サービスの効果です。8月1日の日経産業新聞によると、インターネットに情報を提供している企業のウェブ・サイトが、いわゆる勝手サイトから公式サイトに回帰するきざしが見えるということです。

悪質の勝手サイトをインターネット社会から締め出すことは望ましいことです。ただし、良質の勝手サイトを締め出さないことも大切です。このことの実現方法は大きな技術課題です。

 もう1つは、匿名を排除して実名登録を基本とするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が米国で急成長しているということです。インターネットの商用サービスが始まる前から使われていたパソコン通信の電子メールでも匿名ユーザーが多く、電子メールでは匿名を使うのが基本だといった誤解すらありました。

 情報化社会の健全性を保つための基本は、情報源と情報内容の信頼性が高いことです。これは古典的な問題ですが、情報通信技術の発達によって信頼性の偽装が容易になったために、情報化社会の病の進行が加速してきたといえます。このような行き過ぎを是正する動きを多くの人たちに知らせる必要性があります。

都丸敬介(2008.8.3