なんでもマルチメディア(638):クライストチャーチの大聖堂

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2011222日、ニュージーランドのクライストチャーチで大地震があり、多くの犠牲者が出ました。お気の毒なことです。連日のテレビ放送で詳しく説明されていますが、クライストチャーチは静かで美しい町です。


 写真①はこの地震で崩壊した、町の中心にある大聖堂です。写真②は、尖塔の右にある聖堂正面のステンドグラスを内側から見たものです。

 この大聖堂は1881年に完成したゴシック様式教会です。この写真は20004月に写したものですが、高さ63mの尖塔は今度の地震で崩れてしまいました。

大聖堂広場はヨーロッパの小都市の雰囲気をもっていて、近くに土産物店が軒を連ねています。

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写真③は、モナ・ヴェールという、大富豪の邸宅だった広い庭園です。英国の田舎の館の雰囲気をそのまま保っています。庭の境界を流れている川の名も英国の川にちなんだエーボン川です。この川で、船頭が手こぎをする船(パンティング)に乗りました。シェークスピアの生まれ故郷、英国のストラトフォード・アポン・エーボンの雰囲気とよく似ていて、英国の古き良き時代を感じます。

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 クライストチャーチは南極観測隊の中継基地です。空港から車で10分足らずのところに南極センターがあり、南極大陸や観測隊のことが分かりやすく展示されています(写真④、⑤)。零下5度の部屋や雪上スクーター、ペンギンを始めとする生物の展示、巨大スクリーンによる映像などで、南極の雰囲気を体験しました

都丸敬介(2011224)

なんでもマルチメディア(637):インターネット家庭教師

定年退職後体調を崩した知人から、外出が難しいので、在宅家庭教師をしているという知らせを受けました。海外に住む外国人を相手に、インターネットを利用して、フェース・ツー・フェースで日本語会話を教えているということです。スカイプを利用して、通信料なしで、お互いの顔を見ながら会話をするので、大きな教育効果を経済的に実現しているようです。

 インターネットを利用する外国語学習は、世界的に拡大していて、世界最大のオンライン語学学習サイトの登録会員数は600万人以上だということです。この場合の学習形態は、用意されている教材を使う、一種の通信教育が主体ですが、受講者同士が自由に会話をする場も用意されているようです。

 インターネットを利用するコミュニティでは、規模の大きさが注目されがちですが、家庭教師的な個別学習指導も有用です。冒頭の知人の場合のように、何千キロも離れた場所にいながら行う、外国語の個人レッスンの効果が大きいことはいうまでもありません。

 定年退職後の自由に使える大きな時間を活用する方法の1つとして、インターネット家庭教師は多くの利点を備えています。大きな収入を期待するのではなく、新しい社会参加と考えることが精神的な豊かさをもたらすはずです。

都丸敬介(201129)

なんでもマルチメディア(636):中国のバーリンホウ

先週、中国のGDPが日本を抜いて世界第2位になったことを、テレビや新聞が繰り返して報道していました。今日(2011124日)の朝日新聞朝刊に付いていた、「朝日新聞グローブ」のバーリンホウ「80后」の特集は中国の新人類の一面を伝える興味深い内容です。「80后」とは1980年代に生まれた人という意味で、約22千万人いるということです。

 記事の最初に紹介された上海で仕事をしている女性は、年収6000万円という、米国の金融ビジネスエリートなみの収入を得ているということです。一方では、大学を卒業しても低収入にあえいでいる若者が多いという、社会的なひずみをこの記事は紹介しています。

 1980年代の初期に、私は情報通信分野の先端技術の講師を頼まれて何度か中国に行きました。その頃の日本の産業や生活と、現在の日本の状況を比べると、20年後の中国の姿は決して楽観できないように思えます。それが日本にどのように影響するのかわかりませんが、私たちも10年〜20年後の国の姿を考えなければなりません。

 「朝日新聞グローブ」の記事は、インターネットでも配信されています。アドレスは「http://www.globe.asahi.com」です。一読をお勧めします。

都丸敬介(2011124)

なんでもマルチメディア(635):エローラの石窟寺院

インドには多数の古い石窟寺院があります。その中で、最高の文化遺産といわれているのがエローラのカイラーサナータ寺院です。エローラは西インド最大の都市ムンバイから約350km東にあるアウランガバードという都市の郊外にあります。
 エローラには34の石窟寺院があり、仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の3つのグループに分かれています。写真1仏教寺院群です。デカン高原の崖を削って造った石窟であることがよくわかります。
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 写真2と3はエローラ最大のカイラーサナータ寺院(ヒンドゥー教)です。この寺院は崖を横から削ったのではなく、地上から掘り下げて造られたものです。高さ35m、幅60m、奥行き90mの規模は圧倒的な重量感があります。この巨大な彫刻の制作は、クリシュナ1世(在位756年〜775年)の命令で始まり、完成までに100年以上の時間がかかったということです。
この時代にすでに先例や技術があったのでしょうが、全体の設計図がどのようなものであり、どのようにして工事監督や作業者に指示されたのかということはわかりません。写真2や3の構造物が1つの岩としてつながっていることは、実物を見ていると納得できますが信じられません。
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 写真4と5は壁面や寺院の内部にある彫刻の一部です。1つだけでも博物館の目玉展示物になるような彫刻が数えきれないほどあり、それぞれがあるべき場所にあって調和しています。
 カイラーサナータ寺院以外の石窟も、みな規模が大きく、しかも繊細で立派です。
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都丸敬介(2011年1月17日)

なんでもマルチメディア(634):コンテナ型データセンター

インターネットで扱われるデータ量の爆発的な増大や、クラウドコンピューティングサービスの拡大に伴って、IT企業のデータセンターの巨大化が進んでいます。従来のデータセンターは、空調や電源供給、防災、防犯などの設備が整った大きな建物の中に情報通信機器を設置する形態が一般的でしたが、最近はコンテナ型が注目されています。すでに海外では巨大なコンテナ型データセンターが稼働しており、日本国内でも建設が始まっています。

 コンテナ型データセンターは輸送用コンテナの中に多数の小型サーバーを組み込んだものです。コンテナ型情報通信設備は新しい発想ではなく、30年以上も前にNTTがコンテナ型の無人電話交換局を日本全国に設置したことがあります。メーカーの工場でコンテナに組み込んだ電話交換機を組み立てて、そのまま設置場所まで牽引するというものでした。

 現在IT企業がコンテナ型データセンターに注目しているのは、建設や運用面の長所に加えて、大きな省エネ効果の実現です。データセンターなどで、全体の電力消費量を情報通信機器の電力消費量で割った値をPUEpower
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)といいます。

 日本国内のデータセンターのPUE2.32.5と言われています。空調や照明などの付随的な電力消費量が非常に大きいのです。コンテナ型データセンターは、コンテナを屋外に置く外気冷却方式によって、PUE1.2を実現できるということです。

 日本では、昨年8月に国土交通省がコンテナ型を建築基準法による規制対象から除外したので、国内各地でコンテナ型データセンターの設置計画が進むようです。

都丸敬介(201116)

なんでもマルチメディア(632):FMCからFMBCへ

この小文のタイトルである“マルチメディア”は、1980年代に盛んに使われるようになった言葉です。当時のマルチメディアの具体的な内容は、電話網を利用する音声通信(電話)と画像通信(静止画)およびデータ通信(文字)の融合でした。この時代から20年を経過した現在、ブロードバンド・インターネットを情報流通基盤とするマルチメディアの新たな発展が始まっています。

 その1つがFMC(固定通信と移動体通信の融合)であり、その発展形態としてFMBC(固定通信、移動体通信、および放送の融合)という言葉が生まれました。FMCの具体例として、1つの端末を家の中では固定電話網につなぎ、家の外では携帯電話網につなぐというのがあります。どちらの使い方でも電話番号は変わらないというのが重要なことです。

 携帯端末の機能が発展した現在でもFMCの実現は簡単なことではありません。その理由の1つが高いレベルのサービス品質の維持です。サービス品質にはサービスのアベイラビリティ(可用性、稼働率)や故障率といった、社会基盤としての信頼性にかかわる項目のほかに、体感品質(QoE)という使いやすさにかかわる項目があります。

 最近のパソコンは無線回線接続機能やテレビジョン・チューナーを内蔵している機種が多くなり、インターネットにつなぐだけで、ある程度のFMBCを実現しています。しかし、理想的なFMBCへの道のりはまだ遠いという感じです。

 FMCが社会基盤として本格的に実現する時期やそこにいたるシナリオはまだ見えていません。こうしたことが明確になると、新たな産業の成長が期待できます。

都丸敬介(20101214)

なんでもマルチメディア(631):ネパールの寺院

ネパールの首都カトマンズの中心部から少し外れた丘の上に、ヒマラヤ最古の仏教寺院だというスワヤンブナート寺院があります。(写真1) 境内にはいろいろな様式の塔が雑然とした感じで並んでいます。巨大な真っ白の土まんじゅうの上に乗った、四角形の塔の壁面に描かれた大きな目を見て、ヒマラヤ登山記録によく出てくるチベット仏教の寺院を連想しました。

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 市の中心部のダルバール広場は、多数の王宮や寺院に囲まれている賑やかな場所です。寺院は中国や奈良の仏教寺院に似たものが多く、形も色も落ち着いた木造建築です。どの建物にもすばらしい彫刻があります。あちこちに飼い主がいない野良牛が寝そべっている光景はのどかです。(写真2)

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カトマンズから12kmほど離れた古都バクタブルは、15世紀から18世紀にかけて王国の首都の一つだった町で、多くの寺院があります。ニャタポラ寺院(写真3)は5層の基壇の上に5重の塔がそびえる堂々とした建物です。基壇の正面階段の両脇には5種類の像が並び、下から順番に人から神へとレベルが高まります(写真4)。ネパールは気持ちが落ち着く不思議な国です。

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なんでもマルチメディア(630):インターネット・ビジョン

コンピューターの応用研究分野に「コンピューター・ビジョン」というのがあります。インターネット上の百科事典ウィキペディアでは、コンピューター・ビジョンを「大雑把に言って「ロボットの目」を作る研究分野である」と説明しています。この説明では具体的なことが分かりませんが、おおむね、静止画や動画のデータを集めて自動分析し、3次元認識や動画像認識を行うことを総称しています。

 このことに関連して、IEEE(米国電気電子学会)が20108月発行の論文誌で「インターネット・ビジョン」の特集を組んでいます。この言葉はまだウィキペディアには見当たりませんが、コンピューター・ビジョンとインターネットを結び付けることによって、新しい可能性や価値を生み出すものと言えます。

 たとえば、インターネット上にある莫大な量の写真を集めて、観測対象をいろいろな方向や距離から見た形に加工することや、時間的な変化を表示することの研究が行われています。このような技術が進歩すると、いままで見えなかったものが見えるようになる可能性があります。そして、新しい社会システムや産業に発展することが期待できます。

 残念ながらこの特集号の論文執筆者には日本人が一人も見当たりませんでしたが、現役世代の研究者や企業のリーダーにも関心をもってもらいたいテーマの一つです。

都丸敬介(2010820)

なんでもマルチメディア(629):フレッツ・テレビ

地上アナログ放送の終了まで1年を切りました。私はこれまでアンテナを使って地上デジタル(地デジ)と衛星デジタル放送を受信していましたが、最近、NTT東日本の、光ファイバー回線を使うフレッツ・テレビを導入しました。導入したといっても、すでに光ファイバー回線を高速インターネット接続と通常の電話に使っていたので、テレビ放送の受信機能を追加しただけです。「フレッツ・テレビ」の月額追加料金は682.5(税込)です。

 NTTの光回線を使うテレビジョン放送には「ひかりTV」と「フレッツ・テレビ」があります。「ひかりTV」はテレビジョン信号をIPパケットで伝送するIPTV方式ですが、「フレッツ・テレビ」は、ケーブルテレビと同様に、高周波テレビジョン信号を伝送するRF方式です。「ひかりTV」には衛星デジタル放送の中継がありませんが、「フレッツ・テレビ」では衛星放送も受信できます。

 今回の「フレッツ・テレビ」追加工事は、光回線終端装置(ONU)とルーターを交換しただけで、40分ほどで終わりました。私は、デジタル・チューナーを外付けして、古いアナログテレビ受像機を使っています。これまで、アンテナとデジタル・チューナーをつないでいた同軸ケーブルを新しいルーターにつなぎ替えただけで、問題なくテレビの受信ができました。インターネット接続と電話も、何もしないで継続できました。

 以前、台風でアンテナが倒れて、屋根を修理したことがありますが、今後はこうしたことが起こる心配がなくなりました。

都丸敬介(2010729)

なんでもマルチメディア(628):ライフログ

最近ライフログ(lifelog)をキーワードとする研究や議論が目に付くことが多くなってきました。「行動履歴記録」という堅苦しい言葉がライフログの意味を端的に表していますが、記録対象項目やデータの取得方法、記録したデータの利用方法などについての枠組みは明確ではありません。

 クレジットカードを使った商品購入履歴、家電機器のリモコンの操作履歴、GPSと連動した車の走行履歴などのライフログは、企業の販売戦略の有力な情報になりますが、犯罪に悪用される危険もあります。

 米国国防総省高等研究計画局(DARPA)が着手したLifeLogプロジェクトは、プライバシー保護のために2004年に取りやめになったということです。2008年頃から総務省と経済産業省がライフログの検討会を行っているようですが、その内容はインターネットで見てもほとんど分かりません。

 ライフログの技術は孤独な高齢者の安全保護やエネルギー消費量の節約など、多くの社会問題対策に活用されるでしょうが、悪用を防がなければなりません。ライフログは一例に過ぎないことかもしれませんが、情報通信技術が市民生活に与える影響を、分かりやすい言葉で具体的に説明する啓蒙活動が必要です。

都丸敬介(2010714)