専門分野の雑誌や研究論文を見ていると、かなり大きな頻度で、知らない用語に出会います。その多くはインターネットで調べても見つからない新語です。このような用語に出会うと、強い好奇心がわいてきます。
毎週一回NHKのラジオ放送で、新語・流行語の解説をしています。この番組では「新語・流行語を知ると世の中が見えてくる」いう趣旨の決まり文句が最初にあります。このことに異論はありませんが、社会現象の窓として目にとまる新語・流行語と、専門技術分野の新語あるいは造語との間には性格の違いがあるように思います。
多くの専門用語には、それを提案した人の思想と情熱が込められています。私自身、新しく開発した技術に付けた名前が業界で広く使われるようになった経験をもっています。技術教科書や市販製品の説明書で、自分が提案した用語を眼にすると、なんとなく嬉しくなります。
知らない用語に出会ったときは、それを手作りの用語集に収録しています。最初に出会ったときの説明ではよく理解できなかった用語でも、別の資料で見つけて整理すると次第に分かってくることがあります。多くの人が情報を提供して作っているインターネット上の百科事典のウィキペディアが話題になっていますが、技術の専門的なことになると内容が貧弱です。一方、項目によっては記載されていることが多すぎて、要点を的確に把握できないことがよくあります。
数文字の用語でも、真意を理解することは簡単ではないことを毎日実感しています。
都丸敬介(2006.10.31)
月: 2006年10月
なんでもマルチメディア(483):IP電話のトラブル
今年(2006年)9月にNTT東日本のIP電話サービスで、長時間にわたって正常な通話ができないというトラブルがありました。そして、今度はNTT西日本で似たような大規模の通話障害が発生したことが、テレビや新聞のニュースで報じられました。
原因は分かりませんが、トラブルの根底にはかなり難しい技術的な問題があるのではないかという感じがします。電話をかけるときには、相手の電話番号をダイヤルします。従来の電話網ではこの電話番号から接続先を割り出して接続をします。
一方IP電話では、音声信号を運ぶパケットを送信者から受信者に送るのに、IP(インターネット・プロトコル)アドレスを使います。このために、電話番号とIPアドレスを対応付ける制御が必要になります。このような制御処理を1秒程度の短時間で実行するためには高性能のサーバー(コンピューター)が必要です。
1980年代には高い完成度に達していた固定電話では、発信者がダイヤルを終わってから着信者を呼び出すまでの時間や接続失敗率など、いくつものサービス品質指標を決めて、その目標値を実現しています。公衆通信サービスとしてのIP電話サービスは、すでに実現したサービス品質と簡便な操作性を継承しなければなりません。これは簡単なことではありませんが、発生したトラブルを教訓にして、安心して利用できるサービスを実現することを願います。
私の家では、光回線のほかに従来の固定電話回線を残しています。
都丸敬介(2006.10.24)
なんでもマルチメディア(482):ビジネス・インテリジェンス
このコラムの掲載と配布でお世話になっているBINETのBIの語源はビジネス・インテリジェンスです。最近米国で発行されたコンピューターの専門誌に「ビジネス・インテリジェンスを一層役立つようにする」という記事がありました。
この記事によると、BIの考え方が生まれたのは1970年代であり、大量のデータを収集、蓄積および分析することによって、企業活動の意思決定に役立てることだったとあります。このことは米国のCIA(中央情報局)のネーミングと符合します。CIAのIはインフォメーションではなくインテリジェンスです。そして、収集した情報を分析して知識に変えることがCIAの本来の役割だといわれています。
上記の記事によれば、従来のBIの欠陥は情報の分析に時間がかかりすぎることだったが、最近はBIの普及が加速しているということです。そして、このことを裏付ける、BI関連産業の収益の急速な伸びが示されています。この背景として、SOA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャー)と呼ばれるソフトウェア製品が良くなってきたことを指摘しています。
最近のBIシステムでは、意思決定に役立つ情報を瞬時に絞り込んで提供することができるようになったということです。リアルタイム性と有用な情報の絞り込みは情報社会に生きるための基本です。しかし、意思決定を行うのは人です。コンピューターがはき出す情報を丸飲みにしないで、BIシステムといえどもツールだということを忘れないようにしなければなりません。
都丸敬介(2006.10.15)
なんでもマルチメディア(481):情報発信
「ニューメディア」や「テレトピア」をキーワードとする新しい情報社会の実現を目指して、日本全国が盛り上がった1980年代の合い言葉の一つが「情報発信」でした。地方都市で開かれたセミナーや研究会では、必ずといっていいほど、「地域活性化のために情報発信基地を作るのだ」ということが話題になりました。しかし、どのような情報をどのような形で発信するのか、発信する情報を地域産業にどう結びつけるのか、という具体的なことになると、話が進まなくなりました。その後、インターネットの商用サービスが始まってから、ホームページによる全国的な情報発信が本格的になりました。
そして今、「情報発信」が新たに社会のキーワードになりました。Web2.0の具体例とされているブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)がこれです。1980年代の実らなかった「情報発信」を第一世代、1990年代のホームページによる「情報発信」を第二世代とすると、Web2.0は「情報発信」の第三世代といえます。
ブログやSNSの情報発信者は個人が中心であり、これらが地域の活性化や産業の発展にどのように寄与するのかといったことはまだはっきりしていません。けれども、すでに多くの前例がある、幾つかのヒントがあります。
注目すべきことは、共通の関心事項について仮想空間に集まった人たちを、実空間に誘導して集める場を用意することです。ネット社会の発展に伴って、仮想空間に集まるのは得意だけれど、実空間に集まるのは不得手だという若い人たちが増えることが心配です。このような人たちに、実空間に集まることの楽しさを体得させる情報発信がWeb2.0時代の重要なテーマになります。
都丸敬介(2006.10.08)
なんでもマルチメディア(480):紅葉の季節
10月になり、本格的な紅葉の季節になりました。窓から見える木々はまだ濃い緑ですが、少しずつ色が変わり始めました。この季節になると、記憶のどこかに潜んでいる素晴らしい紅葉の体験が、つい最近のことのように浮かび上がってきます。
昨日(2006年10月1日)、パリのロンシャン競馬場で開催された、凱旋門賞競馬レースで武豊騎手のディープインパクトが僅かな差で優勝を逃がしました。このレースが始まる前に、パリ郊外のシャンティイで仕上げの調教を行っていることが報じられていました。シャンティイはパリから鉄道で30分ばかりで行けるので、何度か行ったことがあります。駅からシャンティイ城までの、森の中を歩く道の黄葉は強く印象に残っています。道の左手には競馬場があり、立派な建物が連なっています。城の一部かと思ったその建物が厩舎だと知ったときには驚きました。
ヨーロッパの秋は、どこに行っても紅葉ではなく黄葉です。黄葉を見た目で日本の鮮やかな紅葉を見ると、その華やかさに圧倒されます。東京で開かれた国際会議に参加したフランス人が、日光の紅葉を見て興奮していたことを思い出しました。
北関東や東北地方ではいたるところで素晴らしい紅葉を見ることができますが、裏磐梯にある自動車専用道路の磐梯吾妻レークラインの紅葉は特に見事でした。紅葉のトンネルを走り抜けなければならないのが残念ですが、その先にも次々に素晴らしい景色が展開します。ここはもう一度行ってみたいところです。
都丸敬介(2006.10.02)