「ニューメディア」や「テレトピア」をキーワードとする新しい情報社会の実現を目指して、日本全国が盛り上がった1980年代の合い言葉の一つが「情報発信」でした。地方都市で開かれたセミナーや研究会では、必ずといっていいほど、「地域活性化のために情報発信基地を作るのだ」ということが話題になりました。しかし、どのような情報をどのような形で発信するのか、発信する情報を地域産業にどう結びつけるのか、という具体的なことになると、話が進まなくなりました。その後、インターネットの商用サービスが始まってから、ホームページによる全国的な情報発信が本格的になりました。
そして今、「情報発信」が新たに社会のキーワードになりました。Web2.0の具体例とされているブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)がこれです。1980年代の実らなかった「情報発信」を第一世代、1990年代のホームページによる「情報発信」を第二世代とすると、Web2.0は「情報発信」の第三世代といえます。
ブログやSNSの情報発信者は個人が中心であり、これらが地域の活性化や産業の発展にどのように寄与するのかといったことはまだはっきりしていません。けれども、すでに多くの前例がある、幾つかのヒントがあります。
注目すべきことは、共通の関心事項について仮想空間に集まった人たちを、実空間に誘導して集める場を用意することです。ネット社会の発展に伴って、仮想空間に集まるのは得意だけれど、実空間に集まるのは不得手だという若い人たちが増えることが心配です。このような人たちに、実空間に集まることの楽しさを体得させる情報発信がWeb2.0時代の重要なテーマになります。
都丸敬介(2006.10.08)
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