なんでもマルチメディア(447):CNNとアトランタ

米国のテレビ局CNNの創設者テッド・ターナー氏が第一線から引退するという報道がありました。同氏がCNNを設立したのは1980年で、場所は「風と共に去りぬ」の舞台になったアトランタです。当時、私はアトランタに行く機会が多かったので、ついでに、創業間もないCNNの本社を見学したことがあります。
 当初のCNNは地方都市のケーブルテレビ会社でした。実用になったばかりの通信衛星を利用して、それまでは視聴できなかったテレビジョン番組を中継して配信するという、新しい事業が成功したのです。本社の庭に、衛星からの電波を受信するための大口径パラボラアンテナがいくつも並んでいるのが印象的でした。日本のケーブルテレビも難視聴地対策として始まったのですが、日本の難視聴地と米国のテレビ空白地域は、面積や人口が桁違いだということを実感しました。
 CNNの本社には、自前の放送スタジオがありました。このスタジオは、後年見学した東京MXテレビのスタジオと、規模も雰囲気もよく似ていました。しかし、現在のCNNと東京MXテレビを比べると、経営者の考え方と行動力の差を強く感じます。
 アトランタ郊外の観光地にストーンマウンテンがあります。平らな広い土地の中に、世界最大の花崗岩といわれる、高さ250mに近い一塊の岩が盛り上がっています。オーストラリアの中央部にある、高さ350mのエアーズロックに形がよく似ているだけでなく、先住民族の長老たちが、何かあると集まって会議を開いたということも似ています。ただし、エアーズロックは周囲が沙漠ですが、ストーンマウンテンの周囲は豊かな森です。この一帯は公園になっていて、「風と共に去りぬ」の時代のいろいろな家が保存されています。機会があればもう一度行きたい場所の一つです。
都丸敬介(2006.02.26)

なんでもマルチメディア(446):産業スパイ小説

産業スパイが活躍する小説はいろいろありますが、技術面では荒唐無稽で、非現実的な内容が少なくありません。最近読んだ、ジョゼフ・フィンダー著「侵入社員」(新潮文庫)は、2004年に出版された、米国の情報機器メーカーを舞台にした産業スパイ小説で、IT製品開発やセキュリティー技術を中心に、産業スパイの小道具がしっかり描かれています。
技術用語は一般読者には分かりにくいかもしれませんが、IT関係者にはかえって現実感を与える効果があるようです。著者が記した巻末の謝辞に「アメリカのハイテク産業で見たものはわたしの想像をはるかに絶したものだった」という一文があります。そして、企業の保安や情報管理について、幾人もの専門家から話を聞いていることが述べられています。こうして得た知見が見事にストーリーの中に活かされています。
物語は、先端的IT企業のはみ出し社員が、特訓を受けてライバル企業にスパイとして送り込まれることから始まります。結果的には二重スパイになり、転職先で高給を保証されるようになったけれども、最後は新しい道を探し始めます。読み終わったとき、なぜか「現代の西部劇」という印象が残りました。極めて米国的な良質のエンターテイメント作品です。
 時間をたっぷり手にしたオールド・エンジニアにとって、読書は大いなる楽しみです。産業スパイ小説の情報をお知らせ頂けると幸いです。
都丸敬介(2006.02.19)

なんでもマルチメディア(445):食べて旅して

以前、NHKの深夜ラジオ放送に「食べて旅して」という番組がありました。また、頻繁に放送されるテレビの旅番組には、必ず食事のシーンがあります。私は料理ができないし、料理を覚えようという気持ちがないので、食材や調理の方法は全く分かりませんが、旅先で出会った食べ物には、いつまでも記憶に残っているものが少なくありません。
 1970年代の初めに、始めて行ったイタリアの町は、昨日からのオリンピックの舞台になったトリノに比較的近いミラノでした。一週間ばかり滞在したのですが、スパゲッティとフリッター、そしてエスプレッソのとりこになりました。
 もともと麺類が好きなのですが、イタリアで最初に食べたスパゲッティ・ボンゴレには感激しました。腰が強い麺と比較的あっさりしたスープの味は、イタリアのどこの町でも満足できます。ところが、隣国のスイスやフランスでは、美味しいスパゲッティに出会ったことがありません。私が経験した最悪のスパゲッティは、米国のディズニーランドで食べたものです。ロサンジェルスの高級ホテルの中にある日本料理屋で食べた稲庭うどんは最悪でした。
 スイスの名物料理として有名なフォンジュも、記憶に残る幾つかの経験があります。バーゼルでホテルの人に紹介してもらった店では、一つずつ串に刺した肉が、開いた花びらのように大皿に盛りつけてありました。ジューシーな肉を食べた後の串が目の前にどんどん積み上がるのは爽快でした。
 エジプトで食べた不思議なパンも印象に残っています。インドや中近東のどこにもある主食のナンと同じような白い生地のパンですが、ふっくらと膨らんで真ん中が中空になっているものです。これをちぎって、中にいろいろな具を挟んで食べるのです。伝統的な食べ物は、風土から生まれ、その場所で食べるのが最高だということを何度も経験しました。こうした食べ物に出会ったときは幸せを感じます。
都丸敬介(2006.02.12)

なんでもマルチメディア(444):ホームネットワーク

家庭内にある多種類の情報機器や家電製品あるいはセキュリティ機器をつないで、経済的に利便性を拡大することを目的とする、ホームネットワーク(家庭内情報ネットワーク)の製品化がにぎやかになってきました。ケーブル方式のLANや無線LAN を使う、パソコンを中心とする情報ネットワークは、すでに多くの家庭に普及しています。これとは別に、PLC(電力線データ通信)という、電力配線を利用する一種のLANの技術を使うシステムが姿を現し始めました。
PLCはすでに家の中に設置されている電力配線を利用して、高速データ伝送を行う技術です。電源コンセントに電力線モデムあるいはPLCモデムというデータ送受信装置のコードを差し込みます。そして、電力線モデムにつないだ情報機器の間でデータをやりとりします。
日本国内では、2000年10月に九州電力がPLCの実証実験を開始して注目されました。その後、2004年2月に米FCC(連邦通信委員会)が技術基準作りを提案したこともあり、米国の電力会社各社が試験を始めました。また、2005年には総務省主催の研究会が発足しました。こうした動きを背景にして、最近、PLCを使うホームネットワーク製品開発のニュースが増えてきました。
 PLC製品が実用になると、既存のLANとの主導権争い、あるいはPLCとLANの共存が大きな問題になります。すでに、PLCとLANを組合せて使う統合ネットワーク製品が発表されていますが、素人が家の中で自由に使いこなすのは難しそうです。ホームネットワークの普及には、日曜大工的な作業で各種の機器をつなぐことができなければなりません。これは非常に難しい問題であり、どのように解決されるのか、今後の展開が注目されます。
(訂正)前回の「見てみたい名画」のなかで、「ミケランジェロ:最後の晩餐」と書いたのは、「ミケランジェロ:最後の審判」の書き違えです。訂正させて頂きます。
都丸敬介(2006.02.05)