1月28日(2006年)の日本経済新聞別刷り「NIKKEIプラス1」に、「一度は見てみたい名画」の調査結果が記載されていました。1位がレオナルド・ダ・ヴィンチ:モナリザで、その後の10位までは、ゴッホ:ひまわり、ムンク:叫び、レオナルド・ダ・ヴィンチ:最後の晩餐、ピカソ:ゲルニカ、ミレー:落穂ひろい、ミケランジェロ:最後の晩餐、モネ:睡蓮、ドラクロワ:民衆を導く自由の女神、フェルメール:真珠の首飾りの少女です。
私は最後の一つを除いて全部見たことがあります。この記事を読みながら、それぞれの作品が置かれている場所を思い出しました。もう一度見るとすればどれにしたいかと問われたとすると、迷いなく、パリのオランジェリー美術館にあるモネの睡蓮の部屋を選びます。大きな楕円形の二つの部屋の壁に、それぞれ4枚ずつ睡蓮の池が描かれています。部屋の中には鑑賞用の椅子があるだけです。私が行ったときは、何人もの人が床に寝そべって、気持ちよさそうに壁の絵を見つめていました。日経の記事によると、オランジェリー美術館は改装中で、再開は2006年の5月か6月になる見通しだそうです。
モネの睡蓮の部屋から、東山魁夷が描いた、奈良・唐招提寺にある鑑真和上の御影堂障壁画を連想しました。昭和40年代から50年代にかけて、二期に分けて描かれた合計68面の大作が、唐招提寺に収められる前に一般公開されたのを見ました。
マネと東山は絵の主題も画法も違いますが、伝わってくる安らかな気持ちは共通しています。これらの絵を音楽にたとえると、マネからはビバルディを、東山からはシベリウスをそれぞれ感じます。
都丸敬介(2006.01.29)
月: 2006年1月
なんでもマルチメディア(442):情報セキュリティ技術者の育成
経済産業省が行っているIT技術者育成施策の一つに、情報処理技術者試験という国家試験があります。従来は、育成対象技術者の専門分野やレベルが異なる、13種類の試験がありましたが、「テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)」試験が追加されました。第一回の試験は今年(2006年)の4月16日に実施されます。
この試験のために私が書き下ろした「3週間マスター:テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)」(日経BP社)という受験参考書が完成して、1月30日に発売になります。
一口に情報セキュリティといっても、必要な技術は広い範囲にわたっています。また、情報セキュリティ技術者には、企業経営レベルの指針として考えるべきセキュリティ・ポリシーや、法制度の知識が要求されます。私は1980年代から情報セキュリティに関わりをもっていましたが、今回の執筆のために多くの文献や資料を読んで、技術の変化やセキュリティ問題の多様化を改めて認識しました。
過日、ライブドアの強制捜査をきっかけにして、東京証券取引所のコンピューターの処理性能の限界から、取引を停止するという事件が発生しました。東証のコンピューターの処理能力が、1日の平均処理件数の1.5倍しかないというのは、情報セキュリティの視点から見て信じられないことです。ニューヨークとロンドンの証券取引所のコンピューターは、平均処理件数の4倍の性能をもっているということです。処理性能と情報セキュリティの間にどのような関係があるかというと、処理性能不足によって、情報の紛失や、情報内容の完全性が損なわれる危険があるのです。
多面的な情報セキュリティ技術を身につけて、安全な社会を守る技術者が沢山育つことを願っています。
都丸敬介(2006.01.22)
なんでもマルチメディア(441):情感のコミュニケーション
情報通信関係では日本国内最大の学会である、電子情報通信学会の会誌の最新号(2006年1月)で、「情感のコミュニケーション」をテーマとする特集を組んでいます。「情感のコミュニケーション」の定義あるいは概念がはっきりしていないので、論文執筆者の視点がばらばらであり、そのこと自体が新しい問題を提起しているように思えます。
ある人は「情感は、我々が伝え合う人間的・主観的な価値の領域まで踏み込んでコミュニケーションをとらえようとする概念である」と言い、他の人は「情感コミュニケーションとは心の通うコミュニケーションである」としています。論文に書かれて具体例には、臭覚や触覚を含む五感通信、絵画や音楽の感性情報、感覚器官障害や知的障害がある人のコミュニケーション支援などがあります。
今年はモーツァルトの生誕250年ということで、モーツァルトの音楽が大きな話題になっています。特に、癒しの効果が注目されて、この効果を裏付ける科学的な分析も話題になっています。
こうした分野の研究成果をビジネスに結びつけるのは簡単なことではありません。また、幅広い感性と好奇心、そして人生経験がないと、研究の方向付けをすることすら難しいかもしれません。けれども、いろいろな経験と考える時間をたっぷりもっている人たちで、じっくり議論をすると、面白いアウトプットが生まれるかもしれません。インターネットの仮想空間で、この分野の話題を議論したいですね。
都丸敬介(2006.01.15)
なんでもマルチメディア(440):シニアの海外旅行
今年も、頂戴した年賀状の中に、海外旅行の写真が何枚かありました。現役を引退したシニア世代が、いろいろな国を旅して楽しんでいる様子を見聞きすると、自分のことのように嬉しくなります。
私もときどき海外旅行を楽しんでいるので、旅の方法を聞かれることがあります。私の旅のポリシーは極めて単純です。行く場所を決めたら、何日間か滞在するホテルを予約して、後のことは現地に行ってから考えるのが基本です。滞在するホテルに着いて最初にするのは、フロントか旅行案内デスクで、その場所を起点とする観光旅行の情報を集めることです。どこの都市に行っても、半日観光や一日観光、あるいは数日の観光旅行のメニューがいろいろあります。天気と体調を考えて面白そうなコースを選び、残りの時間で市内を歩き回ります。
一日のバスツアーでも、前の日に予約すればよいということを学習しました。ときには、一泊か二泊の魅力的なツアーを見つけることがあります。そのときは、大きな荷物をホテルに預けておきます。その間の部屋代を請求されたことはありません。
英国のスコットランドでは、エジンバラを起点にして、一日のバスツアーで400マイル(640km)を走ったことがあります。ネス湖を始めとする湖や高原地帯をまわり、スコッチウイスキーの醸造所で非売品の年代物をご馳走になりました。オーストラリアのケアンズでは、クルーザーで沖合に出て、浮島のような小さなヘリポートで乗ったヘリコプターで、水中の青い珊瑚礁を見下ろしました。
今年もまだ海外旅行に出かける体力が残っているので、どこに行こうかと夢を見ています。
都丸敬介(2006.01.08)
なんでもマルチメディア(439):P-D-C-A
明けましておめでとうございます。今年一年の皆様のご健勝を祈念いたします。
システム工学の基本に、計画(P:plan)?実行(D:do)?評価(S:see)を繰り返してシステムを改善するという、P-D-Sサイクルの考え方があります。最後のSをC (check) に置き換えてP-D-Cと表現することもあります。ところが、最近はCの後にA(action)を加えてP-D-C-Aとする説明が一般的になってきました。
近年注目度が大きくなった、情報セキュリティの分野でもP-D-C-Aサイクルが重視されています。P-D-C-Aサイクルを実施するのに必要な多くの項目について、具体的な内容や実施方法がノウハウとして企業や技術者個人に蓄積されますが、標準的な技術者育成カリキュラムが確立した状態に達しているとはいえません。このことの背景には、情報セキュリティに関する情報を公表することが,不正行為者に対して攻撃目標や攻撃方法を教えることになるという危険があるからかもしれません。
エンジニアリングの世界から離れて、昨年の後半に続発したいろいろな社会問題を見ていると、日常生活に関わる分野でのP-D-C-Aが機能していないように思えます。過日、テレビのニュース番組の中で、竹中総務大臣がP-D-C-Aという言葉を使っていました。話の内容は覚えていませんが、経済学の分野でもこの言葉を使っているのかな、とふと思いました。計画の立案に熱心になるだけでなく、実施結果の厳しい評価とそのフィードバックに情熱を傾ける人が重視される社会の確立を期待したいと、年の初めに思いました。
都丸敬介(2006.01.01)