今年(2005年)も残りが少なくなりました。今年からこのコラム「なんでもマルチメディア」をブログに転載していますが、ブログへのアクセスもかなりあるようなので、ハンドレッドクラブ(100club21)を紹介させて頂きます。
この会は1993年に発足した情報交流の会です。会の設立のきっかけは、1984年にさかのぼります。この年は、電気通信事業法が施行されて、日本の電気通信事業が自由化された1985年の一年前です。1980年代初期は、電話網をディジタル化したISDNの実用化やパケット通信サービスの開始、ファクシミリの本格的な普及、ビデオテックスという電話網を利用した画像情報サービスの開始など、情報通信の新しい時代の到来に世界中の先進国が沸き立っていました。このような時代背景の中で、1984年8月に郵政省(現・総務省)を中心とした「欧州テレトピア調査団」がフランス、ドイツ、イギリスの3カ国を訪問しました。メンバーは、郵政省、地方自治体、通信事業者、銀行、商社、メディア企業、通信機メーカーなど多彩な顔ぶれでした。
帰国後しばらくはメンバー間の交流が途絶えましたが、1993年にこの調査団の参加者が中心になり、さらに参加者の輪を広げてハンドレッドクラブが設立されました。そして、ビジネス・インテリジェント・ネットワーク社(binet)が会の運営事務局になっています。このコラムは情報交流の一環として、1996年から書いているものです。
最近はメンバーが集まる頻度が少なくなりましたが、2006年1月17日午後5時から、(株)NTTデータ 代表取締役常務執行役員 宇治則孝氏のお話を聞いた後で懇親会を行うことになっています。有料ですが参加は自由です。詳細と申し込みは http://www.binet.co.jp/event/event.html を参照くださいとのことです。
多くの方々にお目にかかり、いろいろな情報を頂戴するのを楽しみにしています。
都丸敬介(2005.12.18)
月: 2005年12月
なんでもマルチメディア(437):eブック
書店で目についた「レイジング・アトランティス」(ハヤカワ文庫)という小説を、その題名にひかれて読みました。
南極大陸を覆う氷が崩壊してその下からアトランティス大陸の都市が現れ、その中心にあるピラミッドは地球外の宇宙船だったという、古代エジプト文明やキリスト教の創世記と現在のバチカンなどが絡み合ったSFアクション小説です。ビデオゲーム感覚の超現実的な内容ですが、いろいろな史実を上手に組み入れて、テンポよくストーリーを展開しています。
内容はともかく、この小説が生まれた経緯に興味を持ちました。これは2002年にamazon.comのeブックとして出版されてベストセラーになり、その後2005年にペイパーブックとして出版されたということです。このような出版形態がこれから急速に拡大するのかもしれません。日本でもインターネットによるeブック(電子ブック、電子出版)の流通が活発になってきました。大きなコストがかかる自費出版や、出版される確率が小さい懸賞小説と比べて、小説家を目指す多くの人たちにとって、eブックの環境は作品をアピールする絶好の場といえるのでしょう。
検索連動型広告のように、広告を組み合わせて、読者がアクセスした回数に比例した印税のような金額を、広告料金の中から著者に支払うようにすれば、読者は気楽に無料で気に入った作品を見つけることが可能です。こんなことを考えていると、出版業界の大きな変革が見えてきます。
都丸敬介(2005.12.18)
なんでもマルチメディア(436):知的資産
携帯電話を始めとする小型情報通信機器が巨大な産業になっていますが、最終製品の組立産業は価格競争が激しく、多くの企業が苦戦しているようです。大きな利益を上げているのは、機器に組み込まれるLSI(大規模集積回路)とソフトウェアを提供している企業です。その理由は、機能モジュールとして最終製品に組み込まれるハードウェアやソフトウェアが非常に複雑になり、簡単にまねができなくなったために寡占化が進んだことです。
現在のLSIは、2mm角程度のチップの中に、100万以上のトランジスターが組み込まれています。ソフトウェア・モジュールはプログラムの記述行数が100万以上になっています。LSIもソフトウェア・モジュールも、それを機器に組み込む設計者は手を入れることができないブラックボックスになっています。それだけに設計誤りは許されません。
設計誤り率が100万分の1以下のハードウェアやソフトウェアを設計することは非常に困難です。優秀な設計者がコンピューターを使って設計しても、欠陥がないことを確認して保証できる規模は、トランジスター数あるいはプログラムのステップ数にして1万程度です。トランジスター数が100万のLSIの設計は、ゼロからスタートするのではなく、既存の機能ブロックを組み合わせることになります。このような機能ブロックは重要な知的資産です。欠陥がない多種類の機能ブロックを知的資産として集積している企業のみが、ニーズに応じて100万規模のLSIやソフトウェアを短期間で開発でき、市場競争で優位に立てることがはっきりしてきました。
簡単にはまねができない規模の知的資産をもっている日本企業がどのくらいあるのか知りませんが、情報通信機器に組み込まれているLSIや大規模ソフトウェアの現状を見ると、将来が心配になります。
都丸敬介(2005.12.11)
なんでもマルチメディア(435)ウェブの新世代:Web2.0
インターネットの利用効果を飛躍的に高めたワールドワイドウェブの技術が生まれてから15年近くになり、Web2.0という新しい潮流が始まりました。Web2.0は2004年に開かれた米国の出版社オライリーとメディアライブ・インターナショナルの間のブレーン・ストーミングで生まれた概念で、2004年10月に最初のWeb2.0コンファレンスが開かれました。今年のWeb2.0コンファレンスは数千人の参加者があったと報じられています。
Web2.0はインターネット利用サービスの第2世代を総称する概念的な用語であって、定義が確立していない混沌とした状態にありますが、情報社会のプラットフォームとしてウェブを利用することや、ユーザーによる情報発信が主役になる、ということが共通認識のようです。
こうした混沌とした状態に集まった巨大なエネルギーが、次第に具体的な形になって新しい時代を生み出すことが過去に何度もありました。情報通信ネットワークの分野では、1970年代中頃から1980年代中頃までがこうした時代でした。この時代に、ディジタル通信、光ファイバー通信、衛星通信、携帯電話、LAN、コンピューター・ネットワーク、インターネットなどが一斉に具体的な形になりました。
Web2.0がこれからどう展開するのか分かりませんが、日本がウェブの新時代に取り残されることがないか気がかりです。1970年代と比べて、IT関係の企業や技術者が桁違いに増えたにもかかわらず、日本では海外からの技術導入と小手先の改良に明け暮れていて、Web2.0のような新しい興奮が見えません。現役世代の発憤を期待します。
都丸敬介(2005.12.5)