なんでもマルチメディア(436):知的資産

携帯電話を始めとする小型情報通信機器が巨大な産業になっていますが、最終製品の組立産業は価格競争が激しく、多くの企業が苦戦しているようです。大きな利益を上げているのは、機器に組み込まれるLSI(大規模集積回路)とソフトウェアを提供している企業です。その理由は、機能モジュールとして最終製品に組み込まれるハードウェアやソフトウェアが非常に複雑になり、簡単にまねができなくなったために寡占化が進んだことです。
 現在のLSIは、2mm角程度のチップの中に、100万以上のトランジスターが組み込まれています。ソフトウェア・モジュールはプログラムの記述行数が100万以上になっています。LSIもソフトウェア・モジュールも、それを機器に組み込む設計者は手を入れることができないブラックボックスになっています。それだけに設計誤りは許されません。
 設計誤り率が100万分の1以下のハードウェアやソフトウェアを設計することは非常に困難です。優秀な設計者がコンピューターを使って設計しても、欠陥がないことを確認して保証できる規模は、トランジスター数あるいはプログラムのステップ数にして1万程度です。トランジスター数が100万のLSIの設計は、ゼロからスタートするのではなく、既存の機能ブロックを組み合わせることになります。このような機能ブロックは重要な知的資産です。欠陥がない多種類の機能ブロックを知的資産として集積している企業のみが、ニーズに応じて100万規模のLSIやソフトウェアを短期間で開発でき、市場競争で優位に立てることがはっきりしてきました。
 簡単にはまねができない規模の知的資産をもっている日本企業がどのくらいあるのか知りませんが、情報通信機器に組み込まれているLSIや大規模ソフトウェアの現状を見ると、将来が心配になります。
都丸敬介(2005.12.11)

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