イスラエルとヒズボラの意味がない(と思われる)戦争が、つかの間の沈静状態に入ったのはよいけれど、まだ危ない状態が続いていることに胸が痛みます。
1988年にテルアヴィブで、コンピューター・ネットワーク技術を主題とする、大規模の国際会議が開かれました。いまから振り返ると、この時期はイスラエルが平和国家としての本格的な歩みを始めたと考えられていたときでした。会議の開会式で、主催者が「イスラエルもこのような会議を主催できるようになった」と挨拶し、ステージでハープとフルートの演奏が行われました。
過日、ヒズボラのロケット弾が着弾した、レバノンに近い先端工業都市ハイファを訪問したときのことです。若い女性の案内者から受けた、これからの国造りの熱心な説明を今でも思い出します。沙漠を農耕地に変えるために、国のリーダーは最初に松の木の大規模な植林をしたというのです。松は荒れ地でも根がつきやすいのがその理由です。最初の植林から20年くらいたって、松の落ち葉で土地がいくらか有機質に変わると、松の代わりに樫の木を植えます。100年くらいたつと、立派な森になって、森の周囲も豊かな農耕地になるはずだという説明でした。
テルアヴィブとハイファの間に、古代ローマ人が建設した、煉瓦積みの大きな水道の遺跡があります。ローマ人はこうした立派な設備を作ったけれども、その後で侵攻してきたトルコ人がみな破壊してしまった。だからトルコ人は大嫌いだというのです。100年単位で数える昔の出来事をつい最近のことのように話した若い世代の人たちが、その後どうなったのか気にかかります。
イスラエルは、機会があればもう一度訪ねてみたい国です。
都丸敬介(2006.08.28)
月: 2006年8月
なんでもマルチメディア(474):匂いの伝達
テレビの料理番組に同期して、インターネットで匂いを配信するサービスを、フランステレコムが今年の秋に始めるという報道がありました。配信するディジタル信号で、視聴者のパソコンに接続した香り発生装置に指示を与え、複数の香料を合成した匂いを作り出すというものです。
本コラム(2005年2月7日、第378回)で取り上げたことがありますが、このような「香り通信」技術の先進国は日本です。今回報道されたフランステレコムのサービスと同じようなことを、2005年5月にNTTコミュニケーションズが始めています。当時の新聞記事には、この技術を利用してアロマテラピーの通信教育を始めたとあります。このときから1年以上経過した現在、どのような利用方法が実用になったかということについては調べていませんが、かなり大きな話題性があるようです。
香り発生装置は匂いを合成するものですが、要素技術としては、合成と対になる匂いの分析技術が重要です。最近放映されたテレビドラマで、犯人を追跡する手段の一つとして匂い分析技術を使っていました。テレビドラマのようにうまくいくかどうかは疑問ですが、分析技術が発達した現在では、匂い分析の応用範囲はかなり広く、テロ対策や麻薬犯罪対策などのセキュリティー分野で、大きな成果が期待されます。
NTTが匂い分析の研究に取り組んだきっかけは、通信設備を火災から守るために、発火する前に、匂いによって火災の危険性を感知しようということだったと記憶しています。
都丸敬介(2006.08.20)
なんでもマルチメディア(473):ネットワークのトラフィック
お盆休みが始まり、恒例の高速道路大渋滞が報道されました。100kmを超える渋滞が発生したと聞くと、大事故が起こらないことに感心します。
最近「日本の情報通信データトラフィック:5月時点で毎秒500ギガ・ビット突破」という見出しの新聞記事を見ました。FTTHやADSLを利用しているブロードバンド・ユーザーによる、インターネット利用トラフィック(通信量)が、平均値で500ギガ・ビット/秒を超えたということです。この数値だけを聞いても実感がありません。
現在、日本国内のブロードバンド・ユーザー数は約3,700万といわれています。そこで500ギガ・ビット/秒を3,700万で割ると、1ユーザー当たりの平均トラフィックは、13.5キロ・ビット/秒になります。ブロードバンド・アクセス回線の平均伝送速度を3メガ・ビット/秒と仮定すると、13.5キロ・ビット/秒は3メガ・ビット/秒の0.45%になります。平均使用率0.45%という数値だけをみていると、ネットワーク設備の投資効率が非常に悪く、大きな無駄遣いをしているような印象を受けます。
ネットワーク全体のトラフィックが増えることの影響が強く表れるのは、高速道路と同様に、トラフィックが集まってくるコアネットワークと呼ぶ幹線ネットワークです。コアネットワークでトラフィックの渋滞が起こると、個々のユーザーに対するサービス品質が低下します。今年の12月から、NTTがNGN(次世代ネットワーク)と呼ぶブロードバンドIPネットワークの大規模な実験を始めます。NGNの重要な技術課題の一つが、コアネットワークのトラフィックが急増したときのサービス品質低下を防ぐことです。NGNでどのような新サービスが出現するのかということに興味がありますが、同時に、サービス品質がどの程度維持できるのかということにも関心があります。
都丸敬介(2006.08.14)
なんでもマルチメディア(472):通信事業者の収入
最近、NTT東西とNTTドコモの事業収入のデータが新聞で報道されました。いずれもARPU(1ユーザー当たりの月間収入)の数値が示されていて、この数値の推移から、通信事業の方向やユーザーの動向を垣間見ることができます。
NTT東西の光回線サービス「Bフレッツ」の最近のARPUは4,800円から4,900円程度で、西日本のほうが若干大きくなっています。そして、東日本と西日本のどちらのARPUも増加傾向にあります。一方、両社の固定電話のARPUは2,700円から2,800円程度で、東日本のほうが若干大きくなっています。これらの数値を見ると、基本料金を始めとする月額固定部分の割合が大半を占めていることが推定できます。通信量に比例する通話料金は十分に安くなり、もはや、通話料金が安いことは、競争の切り札ではなくなってきたことがうかがえます。
NTTドコモの最近のARPUは6,700円程度であり、固定電話と比べるとかなり大きな値です。ARPUの内訳は、電話利用が減少傾向、データ通信利用が増加傾向にあり、この傾向はしばらく続いています。
近い将来、FMC(固定電話と携帯電話の融合サービス)が進むと、ARPUの値がどのように変化するのかということは大変興味があります。
NTT東日本のBフレッツのカタログを見ると、約4,000タイトルのオンデマンド・ビデオ見放題プランが月額2,100円、テレビの多チャンネルプランが月額2,100円とあります。これらの月額固定料金サービスでARPUを押し上げることが、これからの通信事業の重要なビジネスモデルになるのかもしれません。
都丸敬介(2006.08.07)