何でもマルチメディア(673):2020年のマルチメディア情報配信

 前回の東京オリンピックは、日本におけるテレビの普及拡大の推進力になり、産業界に大きな経済効果をもたらしました。今、2020年の東京オリンピックがもたらす経済効果と情報通信産業の飛躍的発展に関心が高まっています。

 日経エレクトロニクスの2014年10月12日号に掲載された、高野雅晴氏の「東京オリンピックを礎に究極の映像配信を実現」という記事は、6年後のマルチメディア情報配信の姿と、これを実現する基盤になる技術開発や法制度の改革について、よくまとまっています。

 高速インターネット、スマホ、パソコンなどが広く普及した現在では、テレビジョン受像機が爆発的に売れた前回の東京オリンピックのような、ユーザー端末機器産業の拡大はあまり期待できそうもありません。しかし、少数の放送局だけでなく、多数の個人が映像や音声解説をリアルタイムで発信する状態を考えると、情報流通基盤の整備と、情報流通制御方法の整備ために巨額の投資が必用になると考えられます。

 日経エレクトロニクスの記事では触れられていませんが、視聴者が入手できる映像や放送の情報品質の改善が大きな課題です。インターネット電話で多くの人たちが体験している、伝送遅延時間の増大と変動に起因する話にくさ、映像と音声の時間のずれなどを改善することが、新しい時代のマルチメディア情報配信には必用です。

 都丸敬介(2014年10月27日)

何でもマルチメディア(672):ブルートゥース

最近、短距離無線通信技術「ブルートゥース」を実装した製品が急速に増えています。この状態を見て思い出すことがあります。1990年代の後半に、講義を頼まれた情報通信分野の先端技術の講習会で、私が注目している技術の一つとしてブルートゥースを取り上げたことがあります。受講者の大部分はブルートゥースという言葉を初めて耳にしたようでしたが、何人かが興味をもって、講座終了後に質問にきました。このときから15年を経過した現状を見ると、生まれたばかりの時代に関心を持ったこの技術が大きく成長したのは喜ばしいことです。

 身近な製品では、パソコン本体とマウスやキーボードなどの周辺機器の間の接続、スマホ本体と周辺機器との接続などにブルートゥースを使ったものが増えていますが、パソコンやスマホ以外でも応用分野が急増しています。統計データによると、世界のブルートゥース搭載機器総数は、2012年が20億、2013年が100億ということです。

 パソコンと周辺機器との無線接続技術としては、IEEE802.15規格の無線LAN(ZigBee)や、27MHz帯の無線通信技術などもあります。どの技術を使った製品を選ぶのが良いかという見識がユーザーに求められる時代になりました。

都丸敬介 (2014.09.26)

何でもマルチメディア(671):インターネットの語源 

 ”インターネット”という言葉は、誰でも知っている言葉になりましたが、その語源についての正確な説明はほとんど見当たりません。IT関係の用語集を見ても、大部分が概念的な説明であり、インターネットという言葉が、インターネットの最大の特徴的技術である、”インターネット・プロトコル(IP)”に基づいていることの説明はありません。

 IPは、文書、音声、画像などのあらゆる種類のデータをディジタルデータとして運ぶ、電子はがき(パケット)の規定です。一つ一つのIPパケットには送信元IPアドレスとあて先IPアドレスがついています。送信元から宛先にどのようなルートを経由して届けるかということは決められていません。このような通信形態をコネクションレス型(CL)通信と呼びます。

 パケット通信の技術は1960年代に米国で生まれました。最初のパケット通信方式は、あらかじめ送信元とあて先をつないでからパケットを送るコネクション型(CO)通信でした。
 世界最初のパケット通信網は、米国国防総省の高等研究計画局(ARPA)がスポンサーになって実現したARPAネットです。このARPAネットがインターネットのルーツです。

 1つのIPパケットが運べるデータ量には制限があるので、データ量が大きいメッセージは一連の多数のIPパケットに分けて送られます。このために、宛先に届いた一連のパケットの到着順序が崩れたり、一部のパケットが宛先に届かないことがあります。こうしたトラブルを補正するためにTCP(トランスミッション・コントロール・プロトコル)が用意されています。

 TCPとIP を組み合わせたTCP/IPの技術が確立したことから、1983年にARPAネットの基幹プロトコルがTCP/IPに切り替えられ、インターネットと改名されました。そして、1980年代後半にはインターネットの世界的な普及が始まりました。

都丸敬介 (2014.07.28)

なんでもマルチメディア(629):フレッツ・テレビ

地上アナログ放送の終了まで1年を切りました。私はこれまでアンテナを使って地上デジタル(地デジ)と衛星デジタル放送を受信していましたが、最近、NTT東日本の、光ファイバー回線を使うフレッツ・テレビを導入しました。導入したといっても、すでに光ファイバー回線を高速インターネット接続と通常の電話に使っていたので、テレビ放送の受信機能を追加しただけです。「フレッツ・テレビ」の月額追加料金は682.5(税込)です。

 NTTの光回線を使うテレビジョン放送には「ひかりTV」と「フレッツ・テレビ」があります。「ひかりTV」はテレビジョン信号をIPパケットで伝送するIPTV方式ですが、「フレッツ・テレビ」は、ケーブルテレビと同様に、高周波テレビジョン信号を伝送するRF方式です。「ひかりTV」には衛星デジタル放送の中継がありませんが、「フレッツ・テレビ」では衛星放送も受信できます。

 今回の「フレッツ・テレビ」追加工事は、光回線終端装置(ONU)とルーターを交換しただけで、40分ほどで終わりました。私は、デジタル・チューナーを外付けして、古いアナログテレビ受像機を使っています。これまで、アンテナとデジタル・チューナーをつないでいた同軸ケーブルを新しいルーターにつなぎ替えただけで、問題なくテレビの受信ができました。インターネット接続と電話も、何もしないで継続できました。

 以前、台風でアンテナが倒れて、屋根を修理したことがありますが、今後はこうしたことが起こる心配がなくなりました。

都丸敬介(2010729)

なんでもマルチメディア(586):IPTV

テレビジョン放送のディジタル方式への全面的な移行の時期が近づき、世の中の関

心が高まってきました。米国ではハワイ州がすでに完全ディジタル化を実施しました

が、おりからの不況の影響で全国のディジタル化移行には難題があるようです。

 
  従来のテレビジョン視聴では、アンテナを用意して放送電波を受信する方式と、

ケーブルテレビの配信サービスを利用する方法がありましたが、最近、第3の方法が

実用になりました。これがIPTV(インターネット・プロトコル・テレビジョン)で

す。通信事業者が提供している、光ファイバー回線のような高速アクセス回線を利用

して、インターネットの標準技術であるIPパケットで映像情報を配信します。

 

 NTTグループは昨年サービスを始めたNGN(次世代ネットワーク)のアプリケーショ

ンの一つとして、“ひかりTV”の名称でIPTVサービスを実施しています。このサービ

スには各放送番組の再送信のほか、ビデオサーバーに蓄積されている多数のビデオを

選択的に視聴できるビデオ・オン・デマンド・サービスがあります。

 

 インターネットを利用するビデオ情報配信は目新しいことではありませんが、IPTV

では従来のビデオ情報配信では保証されてないサービス品質の実現が重視されていま

す。IP電話では、IPネットワークで固定電話なみの良好な音声品質を実現するために

QoS(サービス品質)という評価尺度が重視されましたが、映像配信ではさらにQoE

(体感品質)が重視されています。サービスを提供する事業者の間で良好なサービス

を実現するための競争が活発になることはユーザーにとって好ましいことです。

 

都丸敬介(2009.2.1)

 

なんでもマルチメディア(435)ウェブの新世代:Web2.0

インターネットの利用効果を飛躍的に高めたワールドワイドウェブの技術が生まれてから15年近くになり、Web2.0という新しい潮流が始まりました。Web2.0は2004年に開かれた米国の出版社オライリーとメディアライブ・インターナショナルの間のブレーン・ストーミングで生まれた概念で、2004年10月に最初のWeb2.0コンファレンスが開かれました。今年のWeb2.0コンファレンスは数千人の参加者があったと報じられています。
 Web2.0はインターネット利用サービスの第2世代を総称する概念的な用語であって、定義が確立していない混沌とした状態にありますが、情報社会のプラットフォームとしてウェブを利用することや、ユーザーによる情報発信が主役になる、ということが共通認識のようです。
 こうした混沌とした状態に集まった巨大なエネルギーが、次第に具体的な形になって新しい時代を生み出すことが過去に何度もありました。情報通信ネットワークの分野では、1970年代中頃から1980年代中頃までがこうした時代でした。この時代に、ディジタル通信、光ファイバー通信、衛星通信、携帯電話、LAN、コンピューター・ネットワーク、インターネットなどが一斉に具体的な形になりました。
 Web2.0がこれからどう展開するのか分かりませんが、日本がウェブの新時代に取り残されることがないか気がかりです。1970年代と比べて、IT関係の企業や技術者が桁違いに増えたにもかかわらず、日本では海外からの技術導入と小手先の改良に明け暮れていて、Web2.0のような新しい興奮が見えません。現役世代の発憤を期待します。
都丸敬介(2005.12.5)