情報漏えいや迷惑メール、DoS(サービス不能)攻撃など、インターネットを悪用する犯罪的不正行為がますますエスカレートしています。インターネットやパソコン関係の雑誌には、毎号のように、情報セキュリティ関係の記事が掲載され、セキュリティ・サービスやセキュリティ・グッズが成長産業になっています。
ところが、インターネットを悪用する不正行為によって、どのような損失が発生し、誰がどの程度の被害を被っているのかという、具体的な解説はほとんどありません。ユーザー情報が漏えいしたクレジットカードの不正使用による被害金額や、著作権侵害になる不正コピーによる被害金額、インターネット通信販売詐欺の被害金額などが発表されることがありますが、迷惑メールやコンピューター・ウイルスによって発生する被害金額がどの程度あり、誰が被害を受けているのかということになると、さっぱり分かりません。
経済産業省が実施している情報処理技術者試験の、平成17年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験問題の一つに、コンピューター・ウイルスによって企業が被った被害額を算出したモデルが示されています。このモデルではウイルスによる被害額を、表面化被害額と潜在化被害額に分けて算出しています。
いろいろなケースについて、このような調査と分析に基づく啓蒙活動が望まれます。迷惑メールによるインターネット設備の無駄遣いが、グローバルな電力消費量の何パーセントになっているのかも気に掛かります。
都丸敬介(2007.8.26)
月: 2007年8月
なんでもマルチメディア(518):尾瀬
今月30日に尾瀬地域が日光国立公園から分離して「尾瀬国立公園」になることが決まりました。私が最初に尾瀬登山に出かけて、その美しさのとりこになったのは1950年代の初期です。それから、春夏秋冬のすべての季節に何度も尾瀬に行きました。
今の天皇陛下が結婚された日が臨時の祝日になったので、この日を挟んで尾瀬にスキーに行きました。尾瀬ヶ原の西端にある山の鼻小屋に泊まり、暗いうちに至仏山の山頂までスキーを担いで登り、山頂から一息に滑って降りたことが昨日のことのようです。その後、尾瀬ヶ原を横切り、凍結した尾瀬沼の上を歩いて、長蔵小屋にたどり着いたのは真っ暗になってからでした。
長蔵小屋の3代目のご主人だった平野長靖さんは、私の職場の友人が高校の同級生だったことから、スキー合宿の世話になり、親しくなりました。長靖さんは尾瀬を環境破壊から守る保護運動で活躍中の1971年12月に、過労で遭難死されました。その数週間前に晩秋の尾瀬を訪ねたのが長靖さんと話をした最後になりました。
尾瀬の最高峰の燧ヶ岳に登ると、北側に形がよい会津駒ヶ岳が見えます。この山も新しい尾瀬国立公園に入ることになりました。駒ヶ岳の入口にある檜枝岐村には良い温泉と伝統的な郷土芸能の檜枝岐歌舞伎があります。駒ヶ岳の山頂付近は広々とした気持ちの良い場所です。
国立公園になっても、美しい場所は何時までも自然の姿を保って欲しいと願います。
都丸敬介(2007.8.20)
なんでもマルチメディア(517):固定電話の意味
昨日(2007年8月11日)の日本経済新聞に、「固定電話 全国一律制09年廃止 総務省方針 IP網へ移行促す」という見出しの記事がありました。内容は、「NTTの固定電話の全国一律サービス(ユニバーサルサービス)制度を打ち切る方針だ」ということであり、技術の変化と進歩の状況を考えると、画期的な政策の転換とも思えません。
この記事を読んで、「固定電話からIP電話への移行」という文脈で問題を解説していることが気になりました。「固定電話」は「携帯電話」あるいは「移動体電話」に対置する言葉であり、IP電話という技術に基づく用語とは性格が異なります。執筆者がこうした基本的なことをしっかり把握していないためか、記事の内容には何カ所かあいまいな記述がありました。
既存の固定電話では、個々のユーザーと電話局をつなぐアクセスネットワークと呼ぶ通信回線設備として、銅線のメタリックケーブルを使っています。携帯電話のアクセスネットワークは無線通信方式なので、携帯電話の普及が進んで固定電話のユーザーが減ると、メタリックケーブルを使うアクセスネットワークの維持コストの確保が難しくなります。この対策として、経済的な光ファイバー・アクセスネットワークの導入や、固定無線アクセスネットワークの導入が進んでいます。
NGN(次世代ネットワーク)構想では、電話だけあれば良いというユーザーから、高速インターネット利用や映像番組配信を希望するユーザーまでの幅広いニーズに柔軟に対応できる技術として、高速IP通信技術を選んでいます。このことがもたらす本質的な効果を、「固定電話対IP電話」という文脈ではなく、多面的に分析した解説記事を期待します。
都丸敬介(2007.8.12)