なんでもマルチメディア(517):固定電話の意味

昨日(2007年8月11日)の日本経済新聞に、「固定電話 全国一律制09年廃止 総務省方針 IP網へ移行促す」という見出しの記事がありました。内容は、「NTTの固定電話の全国一律サービス(ユニバーサルサービス)制度を打ち切る方針だ」ということであり、技術の変化と進歩の状況を考えると、画期的な政策の転換とも思えません。
 この記事を読んで、「固定電話からIP電話への移行」という文脈で問題を解説していることが気になりました。「固定電話」は「携帯電話」あるいは「移動体電話」に対置する言葉であり、IP電話という技術に基づく用語とは性格が異なります。執筆者がこうした基本的なことをしっかり把握していないためか、記事の内容には何カ所かあいまいな記述がありました。
 既存の固定電話では、個々のユーザーと電話局をつなぐアクセスネットワークと呼ぶ通信回線設備として、銅線のメタリックケーブルを使っています。携帯電話のアクセスネットワークは無線通信方式なので、携帯電話の普及が進んで固定電話のユーザーが減ると、メタリックケーブルを使うアクセスネットワークの維持コストの確保が難しくなります。この対策として、経済的な光ファイバー・アクセスネットワークの導入や、固定無線アクセスネットワークの導入が進んでいます。
 NGN(次世代ネットワーク)構想では、電話だけあれば良いというユーザーから、高速インターネット利用や映像番組配信を希望するユーザーまでの幅広いニーズに柔軟に対応できる技術として、高速IP通信技術を選んでいます。このことがもたらす本質的な効果を、「固定電話対IP電話」という文脈ではなく、多面的に分析した解説記事を期待します。
都丸敬介(2007.8.12)

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