なんでもマルチメディア(417):次世代ネットワーク

米国で毎年開かれている民間企業主催の技術コンファレンスに、次世代ネットワーク(NGN)コンファレンスというのがあります。今年も9月末にワシントンで開催されますが、プログラムを見ると、IMS、ADS、FMC、WiMAXといった、情報通信ネットワークの動向を示す幾つかのキーワードが並んでいます。これらのキーワードは今後5?10年の世界的な情報通信の潮流を示唆していると思えます。
 IMS (IP multimedia subsystem)は第三世代携帯電話の標準化団体「3GPP」が作成した、実時間IPマルチメディア・サービスの規格です。
 ADS (application delivery systems)はWebベースのインタフェースと高速インターネット・アクセスによって実現する、新しい情報ネットワーク・サービスの概念です。
 FMC (fixed-mobile convergence)は固定電話と携帯電話の融合サービスです。これは日本でもすでに話題になっています。
 WiMAX (worldwide interoperability for microwave access)は、無線都市域網(MAN)の標準技術の一つであるIEEE802.16規格として作成された、高速無線アクセス技術です。FTTHやADSLの利用が難しい地域を救済する技術として注目されています。
 これらのキーワードはどれも情報通信インフラ関係のものですが、インフラが変化すると、それを利用する新しいサービスが次々に生まれます。新しい時代の情報通信インフラを利用する放送と通信の融合がすでに進んでいますが、単なる既存サービスの融合だけでなく、新しい概念のサービスの出現が期待できます。これは大きなビジネスチャンスになります。
都丸敬介(2005.08.21)

なんでもマルチメディア(416):スペースシャトル

宇宙飛行士の野口聡一さんが活躍したスペースシャトルのディスカバリーが、8月9日に無事帰還しました。関係者は大変心配だったと思います。
 この時期に合わせるように出版された、スペースシャトル計画は最初から失敗だったという本を読みました。著者が強調しているのは、スペースシャトルを翼をつけた構造にしたことが失敗の根本原因だというのです。翼をつけたことによって、重量が大きくなり、打ち上げ方法に無理が生じたために、信頼性が著しく低下したと指摘しています。翼が役立つのは帰還して着陸するときだけなのだから、パラシュートを使って海に着水する円錐形構造を採用すべきだったと主張しています。
 この指摘にはそうかなと思う点がありますが、全く触れていない幾つかの疑問があります。今回の飛行では、着陸予定地のケネディ宇宙センターが天候不順のために、代替地のエドワーズ空軍基地に着陸しました。代替帰還地はこの他にも用意されています。これは翼と車輪があるからできたことです。パラシュートを使って海に着水する方式でも、複数の代替帰還地を用意できるのか、回収失敗の可能性はないのかといったことについて、どのような検討が行われたのか説明がありません。
 この本ではスペースシャトルの重量に注目していますが、宇宙ステーションに運ぶ機材の大きさについては触れていません。スペースシャトルの事故の影響で、現在は、ロシアの宇宙船を使って宇宙ステーションに交替要員を送っていますが、大きな機材を運ぶことができないでいます。大きな機材を宇宙ステーションに運び、不要になった機材を持ち帰るのにはどのような構造が適しているのか、納得できる説明がありませんでした。
 まもなくスペースシャトル計画は終わるようですが、宇宙ステーションの建設や、これを利用するいろいろな実験計画がどうなるのか、今後もいろいろな話題が出てくることでしょう。興味深いことです。
都丸敬介(2005.08.14)

なんでもマルチメディア(415):モナリザ

最近、ルーブル美術館のモナリザの部屋がリフォームされたというニュースがありました。私が初めてこの絵を見たときは、大部屋の壁に、ほかの絵と並んでむき出しのまま展示されていました。その後で特別展示室に移り、この絵だけが防弾ガラスで保護されるようになりました。絵の前は広くなりましたが、人だかりが激しくなり、かえって見にくくなりました。今度のリフォームでどの程度見やすくなったのか知りませんが、モナリザ自身は幸せになったのかと、つまらない疑問が頭をよぎりました。
 モナリザといえば、1950年代にフランスの文化担当国務大臣になった作家のアンドレ・マルローが、1923年に盗み出そうとして見つかり、3年の禁固刑になったということで有名な、東洋のモナリザがあります。このモナリザは、カンボジアのアンコール・ワットから40kmばかり離れたバンテアイスレイという、小さな寺院の入り口の両脇に彫られている女神の一つで、愛くるしい顔をしています。
 私がバンテアイスレイ寺院を訪ねたのは2003年ですが、数十年前に日本各地で見られた、村の古い寺や神社の雰囲気でした。東洋のモナリザは覆いもなく雨風にさらされていますが、健康そのものの明るさを感じます。この寺院には見ていて飽きない魅力的な彫刻が溢れています。
 アンコール遺跡群見学の拠点になるシェムリアップには、国際水準の立派な観光ホテルがいくつもできています。日本人が経営する現地旅行会社もあるので、幾日か滞在してゆっくり楽しむことをおすすめします。
都丸敬介(2005.08.07)

なんでもマルチメディア(414):ロンドンのテロ事件

今月ロンドンの地下鉄とバスで、2回の爆弾テロ事件が発生しました。たまたま、英国MI5がテロ組織アルカイダの資金源を絶つために、元SAS(英陸軍特殊空挺部隊)の隊員を徴募して、地中海でアルカイダの船を襲撃する作戦を実行するという小説「テロ資金根絶作戦(クリス・ライアン著、ハヤカワ文庫)」を読んでいました。襲撃部隊はダイヤモンドや金を手に入れたけれども、すぐに英国内のアルカイダ組織の報復を受けて、参加メンバーが次々に殺害されるというストーリー展開です。この本が出版されたのは2003年ですが、描かれている英国内のアルカイダ組織と今回の爆弾テロ実行組織にかなりの類似性が見られます。
 今回のテロ事件では、実行犯の特定と拘束が迅速に進んでいますが、その手がかりが、大量に設置されているビデオモニターの記録映像だということに、驚きと同時に不安を感じます。プライバシー保護問題を扱った小説に、1948年に執筆されたジョージ・オーウェルの「1984年」があります。この小説には、個人の言動を常にキャッチするテレスクリーンという監視装置が登場することから、1984年に開かれた国際コンピューター通信会議で特別議題に取り上げられました。
 今回の爆弾テロ事件発生後、街中に設置されたビデオモニターの是非が話題になっています。今のところ必要悪として肯定的に受け止めている人が多いようですが、機器設置や運用について法律で裏付けされた指針がないと、恐ろしいことが起こる可能性があります。
都丸敬介(2005.07.31)