なんでもマルチメディア(599):通信障害

総務省の調査によると、2008年度の通信障害発生件数は189件で、過去最大だった

ということです。そして、3万人以上のユーザーに影響を与えた18件の重要障害のう

11件が携帯電話の障害だそうです。

 私も参加した、1960年代のコンピューター制御電話交換機の開発では、信頼性目標

値として、交換機1台あたり、20年間のシステムダウン時間の累計を1時間以下としま

した。その後のNTTの長年にわたる運用実績では、この目標値が達成されたことが報

告されています。

 

 しかし、1960年代の技術でこの目標を実現することは非常に困難でした。そこで、

半田付けの高信頼化、電子部品の高信頼化、トラブルが発生したときにシステムダウ

ンを回避する方法など、あらゆる面で高信頼化の研究と実用化が行われました。

 

 こうした厳しい経験をふまえて、最近の通信障害発生状態をみると、恐ろしい危険

を感じます。重要障害件数が最も多かった通信事業者のトップが、「他社でも重要障

害が発生しているのに、なぜ当社だけが話題にされるのか」という趣旨の発言をした

という新聞報道がありました。多くの重要障害を起こしたという事実と責任を率直に

認めて、サービス信頼性の目標値を明示し、その実現に取り組むことを期待します。

 

 信頼性を高めようとすると、一般にはそれを実現するための設備コストが増えま

す。けれども、使用期間が大きい社会インフラである情報通信システムでは、設備コ

ストが増えても、障害対策を含む運用保守コストとと合算したトータル・ライフサイ

クル・コストを減らすことができます。このことは以前から研究され、実践されてい

ますが、改めて議論する必要があるようです。

 

都丸敬介(2009.5.21

なんでもマルチメディア(598):新しい高速無線通信時代の到来

数年前から研究開発と標準化が行われてきた、2種類の高速無線通信技術を利用す

るサービスが実用になりました。1つは携帯電話系のLTE(ロングターム・エボ

リューション)で、もう1つはWiMAXです。

 LTE3.9世代携帯電話と呼ばれるもので、理論的な最大通信速度は300Mビット/秒

です。複数の種類がある既存の3.5世代携帯電話からの移行が比較的容易にできると

いうことで、携帯電話の規格統一にも効果が期待できます。

 WiMAXは無線LANの規格で、理論的な最大通信速度は75Mビット/秒です。モバイル

WiMAXと呼ばれるIEEE802.16e-2005規格には、携帯電話と同様に、ユーザーが通信を

しながら移動するときに、アクセスポイント(無線基地局)を自動的に切り替えるハ

ンドオーバー機能があります。LTEとモバイルWiMAXの機能的な違いは、多くのユー

ザーにはほとんどわからないでしょう。

 LTEとモバイルWiMAXは、性能的にはブロードバンド・アクセス回線のFTTHよりも劣

るけれど、ADSLとは同等です。最近はFWA(固定無線アクセス)という言葉があまり

目につきませんが、LTEやモバイルWiMAXFWA回線として使えます。つまり、ブロー

ドバンド・アクセス回線の選択肢が増えたのです。FMC(固定・移動通信融合)が進

んでいますが、ユーザーにとって理想的なFMCサービスを実現するために、FTTHを補

完するLTEあるいはモバイルWiMAX事業のありがたが新しい課題になります。

都丸敬介(2009.5.12)