なんでもマルチメディア(427):技術の目利き

なんでも鑑定団というテレビ番組を見ていて、鑑定人の知識とよく勉強していることに、いつも感心しています。以前、時代小説の中で、茶道具などの目利きを育成するのに、徹底的に良い物だけを見せるという場面を読んだ記憶があります。そうすると、直感的に本物と偽物を見分ける能力が身に付くというのです。こうした能力に加えて、鑑定人は、本物と偽物あるいは良い物と悪い物を見分けた理由を、客観的に説明しなければなりません。
 私は何年か前に、技術の目利きの仕事を手伝ってもらえないかという依頼を受けたことがあります。その場で辞退したので、その後どうなったか知りませんが、この話とは関係がないところで、技術の目利きに取り組んでいるという話を最近続けて聞きました。進歩が早く競争が激しいIT分野では、製品を使う側も提供する側も、適切な選択判断ができる技術の目利きを求めているようです。
 技術の目利きには、実際に技術開発あるいは製品開発に携わった経験が必要です。文献から得た知識だけでは、理屈は分かっても、大きさや性能あるいはコストなどを総合的にとらえたバランスの取れた判断は困難です。どのような技術あるいは製品も、それが効果的に能力を発揮できる条件あるいは限界があります。同じものでも、適用条件によって判断の結果が異なることがよくあります。
 このことが当てはまるのは、技術や製品の目利きだけではありません。多くの技術的な解析や社会現象の分析でコンピューター・シミュレーションが使われていますが、シミュレーション・モデルが成り立つ条件の範囲を逸脱したために生じたおかしなデータを、気づかずにそのまま発表した事例を目にすることがあります。このようなときは常識を疑いたくなります。しかし一方では、おかしなデータが生じた原因の分析が、新たな発見につながることがあります。技術の目利きは案外面白い世界かもしれません。
都丸敬介(2005.10.10)

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