なんでもマルチメディア(397):シルクロードの旅(4)

5月31日(火)
 今日は火曜日。「火」に縁がある火焔山の一角にある「ベゼクリク千仏洞」を見学。火焔山の麓を回ると、やがて巨大な砂山のような場所についた。ここも火焔山の一部である。トルファンの町からは北東約50km。観光用ラクダが10頭ばかり客待ちをしていた。
 見学者ゲートを通ると、右側が断崖になっていて、下を川が流れている。千仏洞は、6世紀から14世紀にかけて、この断崖の中腹に作られた寺院である。テラス状の回廊および広場から、幾つかの代表的な石窟に入った。後代の破壊や経年劣化による傷みが激しいが、それでも多くの壁画と見事な色彩が残っている。
 ベゼクリク千仏洞に行った道を戻り「高昌故城」に向かう。西遊記の中で孫悟空が活躍した火焔山は、炎が燃えるように赤い山肌を期待していたが、赤茶けた印象だった。まだ本格的な炎天の季節になっていないからかもしれない。それでも、深くえぐれた無数の縦縞からは、燃え上がる巨大な炎の形を見ることができる。
 ほぼ正方形の城壁に囲まれた高昌故城の目玉は、7世紀初頭、インドに向かう途中の玄奘三蔵法師が説教をした円形ドーム状の講堂を始めとする寺院である。ただし、ドーム以外の寺院の形はもはやわからない。
 高昌故城の近くに「アスターナ古墳群」がある。古墳といっても、土が少し盛り上がっているだけで、墓は地下を掘ったものである。公開されている古墳は、入り口の傾斜路が整備されている。壁画の保存状態は非常によい。日本では高松塚古墳の壁画の劣化が大きな問題になっているが、乾燥した砂漠の力を改めて実感する。
 古墳の主はみなミイラになっている。ここのミイラはエジプトのミイラとは異なり、内蔵を取り出さない。博物館に展示されているミイラはかなり生々しい。
 午後、「額敏塔」あるいは「蘇公塔」という、高さ37mの先細りの円形塔をシンボルとする建物を見た。塔の模様はイスラム様式で、現在もイスラム教のイベントがある日は大勢の信者が集まるという。
 門前市で名産の干しぶどうを買った。干しぶどうの種類は数十種類あり、ブドウの種類や処理方法の違いでいろいろなランクがある。最高級品は木についたまま干しぶどうになった大粒のものだ。ブドウの産地だけにワインもうまい。白ワインはやや甘口で、赤ワインのほうが口に合う。癖がなく比較的軽い。1本120元(約1,600円)だからずいぶん安いが、ビールの大瓶1本10元と比べると贅沢品なのかもしれない。
 夜行列車に乗るまでの時間つぶしに、全員でマッサージ店に行った。猛暑の汗をシャワーで流してから1時間ばかりマッサージを受けた。
 鉄道の駅は町の中心から60kmも離れている。地下水源から町に水を運ぶカレーズと鉄道が直角に交わるので、水路が深い場所に鉄道を通さねばならず、そのために駅が遠くなったという。一等車乗客用待合室は、空港のビジネスクラス・ラウンジよりもはるかに立派だった。ゆったりしたソファがあり、絨毯や玉製品を始めとする土産物を売っている。利用した一等寝台車はコンパートメント形式で、2段ベッドが2つ向き合っている。ベッドにカーテンはなく、上段に登る梯子もない。テーブルを踏み台にしてよじ登った。
都丸敬介(2005.06.14)

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