過日、1970年代に一緒に仕事をした仲間が百人以上集った懇親会がありました。平均年令は60才を超えていますが、大部分が情報システム開発や人材育成の仕事をしています。話を聞いていて、日本のIT産業、特にソフトウェア産業が抱えているいろいろな問題を垣間見ることができました。
ソフトウェア産業の仕事は、パソコンやゲーム機などで動かす比較的小規模のアプリケーション・プログラムの開発、企業活動や公共サービスを支える大規模システムの構築、家電製品や産業用機器に組み込む制御用プログラムの開発など、多様化が進んでいます。それぞれの分野が抱えている問題は同じではありませんが、共通している根底の問題は、要求される開発期間が加速度的に短くなっているために、仕事の負荷が大きくなり、人材育成が間に合わないということのようです。こうしたことから、IT産業は若い人たちの人気が低下して、優れた人材が集まらないという話です。
大規模システムの開発は大変な仕事であり、長期間にわたってほとんど休む時間がなかったことを、1960〜1980年代に私自身が体験してきました。その時代と今を比較して何か変わったかというと、夢がなくなってきたことが大きく作用しているのではないかという感じがします。未知の課題が多い巨大なプロジェクトに取り組んでいるときは、時間を忘れてのめり込むことの楽しさを味わえます。一方、新しい挑戦課題が少なく、既存の技術の組合せの繰り返しが中心の仕事になると、楽しさが減るのかもしれません。
IT産業の指導者は、若い人たちにたいして仕事の方法や知識を伝えるだけではなく、どのようなプロジェクトでも、それを仕上げることの喜びや楽しさを体験させる環境を作ることに力を入れる必要があります。
都丸敬介(2008.4.21)
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