知人から薦められて「蔡元培」(中井威博著、里文出版)という本を読みました。これは北京大学の創設者である蔡元培の伝記ですが、個人の伝記というよりも中国近代史として興味深い内容でした。
蔡元培が生まれたのは1868年(明治元年)で亡くなったのは1940年(昭和15年)です。清朝末期に生まれて、旧制度の上級職国家公務員試験に合格し、清朝の没落後にドイツに留学。混沌とした政情の母国に戻ってから教育制度を中心とする新しい社会作りに奔走した姿は、明治維新から明治時代が確立するまでの日本によく似ています。
1910年前後に、後の中国の指導者たちの多くがフランスに留学して大きな影響を受け、中国とフランスの密接な関係が生まれたということは、日本とドイツやイギリスとの関係に似ているように思えます。
北京オリンピックの聖火リレーがフランスでトラブルに巻き込まれて、両国の関係がぎくしゃくしていますが、これも時代の流れでしょうか。
この本に描かれている国家権力と学生を中心とする若い人たちとの対立の構図には大きなエネルギーを感じます。こうした状態を今の日本に重ね合わせてみると、残念ながら新しい時代を創り出す若いエネルギーが日本では感じられません。長野を含む世界各国で行われた聖火リレーの報道にみえる中国の若者たちのエネルギーと比較すると、日本の前途が心配になります。
都丸敬介(2008.4.28)
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