今朝(2008年5月5日)の朝日新聞と日本経済新聞は両方とも米マイクロソフトがヤフーの買収を断念したことを第1面で大きく報じています。買収総額が約4兆6千億円というスケールの大きい買収に失敗したことは、マイクロソフトだけでなく、これからの世界のソフトウェア産業に大きな変化をもたらす契機になりそうです。
マイクロソフトが世界最大手のソフトウェア会社になったのは、独自開発した製品の良さよりも、企業買収戦略と販売戦略によることがよく知られています。米国のジャーナリストの一人、ウェンディ・ゴールドマン・ロームの著書「マイクロソフト帝国が裁かれる闇(草思社、1998年12月出版)」に、マイクロソフトのすさまじい事業戦略が手に取るように描かれています。
しかし今回仕掛けたヤフー買収の目的は、この本に記されている事業拡大戦略とはかなり違うようです。ヤフーを買収して手に入れようとしたのは巨額の広告料収入であり、ソフトウェア製品販売の拡大ではありません。昨年、マイクロソフトの基幹製品であるウィンドウズ・ヴィスタとワードやエクセルを含むオフィス2007が発売になりましたが、これらは従来の製品であるウィンドウズXPおよびオフィス2003と較べて大きく進歩したとはいえません。見た目は華やかになったけれども使いにくくなった部分が多くあります。このためか、今年発売になったパソコンはウィンドウズXPを搭載しているものがいくつもあります。また、オフィス2003との互換性が大きい低価格の製品がよく売れているようです。
マイクロソフトの創設者であり、世界第一の富豪になったビル・ゲイツが間もなく現役を引退するようですが、これからのマイクロソフトがどうなり、ソフトウェア産業全体にどのように影響するのか注目されます。こうした大きな潮流の変化の中で、日本企業の姿がさっぱり見えないことが心配です。
都丸敬介(2008.5.5)
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