以前、技術移転の指導と仲介をしている企業から、技術の目利きの仕事を頼みたいという相談を受けたことがあります。時間を拘束されたくないので辞退したので、その後どうなったか知りませんが、ときどき思い出しては技術の目利きとは何だろうと考えることがあります。
大学や公的研究機関の研究成果を企業に移転して製品化する、産学連携の話題がときどき新聞などで報道されますが、計画どおりには成果があがっていないことが多いようです。この原因の一つとして考えられることが目利きの不在です
技術移転にはニーズ指向とシーズ指向があります。ニーズ指向では、ある製品を実現するのに必要な技術を探し出すことが出発点になります。シーズ指向では、研究成果を活かす製品分野を探すことが出発点になります。どちらの場合も、ニーズとシーズがかみ合わなければ良い結果は得られません。
ニーズとシーズをうまくかみ合わせるために必要な、広範囲にわたる知識と冷静で客観的な判断力を身につけた人が有能な目利きといえるのでしょう。このような目利きを育てるのは容易ではないように思えます。書画、骨董の目利きを育成するには本物だけを見せることが基本だと、何かの本で読んだ記憶があります。本物だけを見せて育てると、自ずと偽物を見分ける能力が身につくということです。これだけではなく、ある程度の資質と絶え間ない学習努力がなければ、本物の目利きにはなれないでしょう。いろいろな面で転換期に入った日本の情報通信産業の発展のために、技術の目利きの育成と確保が必要だと考えます。
都丸敬介 (2008.05.26)
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