なんでもマルチメディア(471):良くなる電話の音声品質

「固定電話と携帯電話を比べて、どちらの音が良いと感じているか」という質問をすると、答えが分かれます。両者の技術を比較すると、原理的には携帯電話のほうが、音声品質が劣ることになっていて、多くの研究論文のデータもこのことを裏付けています。
 ところが、携帯電話ネットワークの通信速度を従来のままのナローバンド(狭帯域)にしておいて、受信側で音声を復元するときに、ブロードバンド(広帯域)に変換して音声品質を改善する技術の研究が進んできました。こうなると、従来の固定電話よりも携帯電話のほうが音声品質が良い、ということが原理的に正しくなります。
 このことが、伝統的な固定電話の音声品質改善のきっかけになるかもしれません。ISDNが実用になった1980年代に、通信速度が64kビット/秒のISDN回線を使って、ラジオ放送なみの音声品質を実現する技術が開発されて、国際標準になっていたのですが、ほとんど利用されていません。しかし、この技術は、ブロードバンドIPネットワークを利用するIP電話の標準技術として活用できます。
 近い将来、音声品質の良さを前面に出した、新しい電話サービス合戦が始まる予感がします。ただし、幾つか気になることもあります。技術的なことでは、通信事業者のサービスや機器メーカーの製品の間の相互接続性の保証が重要です。このために、新しい国際的な主導権争いが活発になる可能性があり、日本がそのリーダーになれるかどうかということが、産業や経済に大きく影響します。この分野の技術は難しいだけに、分かり易く説明して、関連産業だけでなく、一般ユーザーの関心を高めるためのキャンペーンが大切です。
 日本の産業が取り残されないことを祈ります。
都丸敬介(2006.07.31)

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