なんでもマルチメディア(664):オランダの先端農業

今週、NHKのテレビ放送で、オランダの農産物輸出が米国に次いで世界第2位だという特集番組を見ました。この中で、コンピューターによる生産管理と制御を行っている、天井が高い温室形式の巨大な野菜工場の紹介がありました。

この番組を見て、1992年に見学したフロリアード1992の光景を思い出しました。フロリアードは、産業振興のために10年ごとに、オランダ国内で、場所を変えて開かれている大きな園芸博覧会です。

夏休みにヨーロッパ旅行に出かけた時、アムステルダムの空港からホテルに向かうタクシーの運転手に「フロリアードを見に来たのか?」と聞かれました。それまでフロリアードという言葉を聞いたこともなかったので、詳しいことを教えてもらいました。アムステルダムから鉄道で簡単に行けるということなので、早速行ってみました。まさに百花繚乱の素晴らしい博覧会で、日本庭園もありました。

この会場で驚いたのが写真の野菜工場のひな形です。トマトやピーマンの蔓が、天井から吊り上げられているのです。NHKの放送では、こうすることで栽培空間が数倍になったことと、徹底したコンピューター制御によって、土地面積当たりの生産性が大幅に拡大したということです。

日本でも農業の近代産業化が叫ばれていますが、具体的な成果はまだ見えません。20年前に博覧会で見たことが、オランダで本格的な産業に育ったことは、よい手本になるはずです。

都丸敬介(2013年5月22日)

なんでもマルチメディア(663):役に立つ数学

昨日(2013514日)の日経産業新聞第1面に、「数学 新たな武器に」という見出しで、今年新設された明治大学の総合数理学部の紹介記事がありました。

 この記事を読んで、2001年度アカデミー賞を受賞した「ビューティフル・マインド」という映画を思い出しました。この映画の主人公は1994年にノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュ博士です。映画に描かれた、互いに何の関係がないように見える複雑な社会現象から大量のデータを集めて分析し、その現象の中に規則性を見出すナッシュ博士の行動は、現在多くの分野で成果を上げているビッグ・データの収集と分析に共通します。

 私も現役時代に、情報通信機器やシステムの設計や異常動作の原因解明に、統計学の手法が役立つことを何度も体験しました。高性能のコンピューターネットワークや多種類のデータ分析用ソフトウエアを手軽に使える現在では、システム設計やトラブルの分析にどのような手法が使われているのか知りませんが、数理学部で勉強をしている若い人たちが、身につけた理論や応用手法を多くの人達の日常生活に役立てることの期待します。

 同時に、どのような数学が、どのように大衆の日常生活に役立っているのかということの、分かりやすい啓蒙活動がもっと活発になることを期待します。 

都丸敬介(2013515日)

なんでもマルチメディア(662):文献抄録

20歳代の中ごろ、勤務していた研究所の先輩から、海外の論文誌や技術雑誌に掲載されている文献の抄録原稿作成を頼まれました。個々の文献のあらましや内容の要点を200300字程度にまとめた原稿は、印刷されて、全国の図書館や企業に配布されました。

 抄録対象文献の大部分は私自身の研究プロジェクトとあまり密接な関係はありませんでしたが、毎月30件程度の文献を5年ほどしっかり読んだ体験は、貴重な体験であり、多くの面で役に立ちました。

 抄録原稿を書くことで、世界の最先端で研究開発を行っている人たちが取り組んでいるテーマや考え方、論文としてのまとめ方などを身近に感じることができました。

 この時代に身に着いたことは、50年以上経った今でも、毎月手元に送られてくるいくつかの学会の論文紙や技術雑誌を開くときに、わくわく感をもたらしてくれます。

 現役時代に取り組んだ大規模のシステム開発プロジェクトでは、研究対象システムだけでなく、それを構成する広範囲の機器や部品の動向、システムの性能や品質を評価するのに必要な理論など、広範囲の知識がおおいに役立ちました。こうした知識の多くは、文献抄録原稿を書くことによって蓄積されたことです。

 インターネットを利用して、多くの知識が瞬時に手に入る時代になりましたが、若いうちに多くの文献をしっかり読むことの効果は変わらないと思います。

都丸敬介(201357)