なんでもマルチメディア(651):IPv6普及の兆候

 

今日(2012521)の日経産業新聞に”IPv6来月移行 日本勢書き込み対応”という見出しの記事がありました。米国でインターネットの商用サービスが始まった1980年代末に、すでにIPv4(インターネット・プロトコル第4版)の規格では、いずれアドレスが足りなくなることが指摘され、その対策として、1990年代にIPv6の規格が作られました。IPv6の最大の特徴は、識別できるIPアドレス数がIPv42進数32桁(32ビット)から128桁(128ビット)に大幅に拡大されたことです。

 


 しかし、IPv6の規格制定から15年たった今でも、IPv6の普及は遅々として進んでいません。このことの背景には、アドレスマスクやプライベートアドレスといった、IPv4の使い方の工夫によるIPv4アドレスの延命策が効果をあげてきたことがあります。これらの延命策も、近年のインターネットやIPネットワークの急速な拡大に対応しきれなくなってきたために、IPv6の普及に本腰が入ってきたといえるでしょう。

 


 けれども、冒頭の記事で取り上げられたIPv6への移行はインターネット接続事業者(ISP)の対応であって、一般ユーザーが使う情報通信機器のIPアドレスが一斉にIPv4からIPv6に切り替わるということではありません。

 


 無尽蔵といえるIPv6アドレスを莫大な数のセンサーに固定的に割り当てることの効果は以前から注目されています。ISPIPv6一斉導入を契機にして、新しい産業や生活の形態が実現する可能性が大きくなりました。これからの展開が楽しみです。

 


都丸敬介(2012521)


なんでもマルチメディア(650):個人記録の保管と再生

 

インターネット関連事業者の多くが個人の写真や文書を保管するサービスを提供しています。デジカメの普及に関連して、大量の写真を保存しあるいはアルバムとして整理するサービスメニューが、クラウドコンピューティング・サービスの一環として増えています。こうしたサービスは利用者にとって便利ですが、保存と管理を委託した人たちが、貴重な個人の記録を30年後、50年後に再生できるかどうか疑問です。

 


 私は2006年からシニア世代の人たちを対象にしてパソコンの使い方の指導をしていますが、受講者の人たちが最も感激するテーマは、スキャナーを使って古い写真をパソコンに取り込んで再生させることです。小学校時代の集合写真や、名刺判の色あせた小さな写真を再生して、当時のことを思い出し、涙ぐむ受講者が少なくありません。

 


 デジカメで写した写真のデータをきちんと保存してあれが、変色による画質の劣化が起こらないし、部分拡大も簡単にできます。けれども、データを預けたサービス事業者が30年後、50年後に同じサービスを続けている保証はありません。大切なデータは個人で保存し、適切に管理することが望ましいといえます。

 


 しかし、個人で保存、管理しているデータをいつでも再生できるようにしておくことは簡単ではありません。わずか10年前にフロッピーディスクに保存したデータを再生できない人が沢山います。高齢化が進んだ社会では50年前の個人的な写真や文書を再生することの効果が大きくなっています。このような分野にどう取り組めばよいかということは大切なテーマです。

 


都丸敬介(2012515)