なんでもマルチメディア(649):電力の流通

 

このところ毎日のように、関西電力の停止中の原発の再稼動の是非がテレビや新聞の話題になっています。問題の発端は、「今年の夏の電力需要のピーク時に関西電力管内で電力不足状態が生じる恐れがあるので、原発を再稼動しないと計画停電を考えなければならない。計画停電を防ぐためには原発の再稼動が必要だ」ということです。


 これに対して、原発再稼動に反対する側の具体的な根拠は、「全国の電力会社の総発電量は、総消費量よりも大きいから、余剰電力を関西電力に融通すればよい」ということです。

 


 昨年の夏、首都圏で長期間の計画停電が行われたとき、西日本の電力会社の余剰電力を首都圏(東日本)に融通できない技術的な理由として、「西日本と東日本では交流電力の周波数が異なる。境界に設置されている周波数変換設備は容量が足りないので、西日本の余剰電力を十分に東日本に供給できない」という説明がありました。

 


 今回の原発再稼動の是非に関連する重要なことですが、余剰電力をもっている電力会社から関西電力に必要量の電力を供給できるのかできないのかという説明がまったくありません。原発の再稼動が関西電力管内の大規模停電を防ぐための唯一の手段なのかどうか、技術的に納得できる説明が求められます。また、交流電力周波数が異なる東日本と西日本の間の電力流通をどのように実施するのかという説明も求められます。これは大きな時間とコストがかかる、国の重要なエネルギー政策の一つです。

 


都丸敬介(2012425)


なんでもマルチメディア(648):次世代仮想ネットワーク

 

ブロードバンドインターネットの普及が世界中のあらゆる産業や政治に大きな変革をもたらしました。インターネット通信技術、光ファイバー通信や高速無線通信の技術、パソコンやスマートフォンに代表されるマルチメディア情報通信機器などの技術開発が津波のように一斉に進んだのが1980年代でした。最近の情報通信ネットワーク技術の研究状況を見ていると、エキサイティングだった1980年代の再来を感じます。

 


 たとえばITU-T(国際電気通信連合・電気通信標準化部門)で検討されている将来ネットワークの研究では、ネットワークの仮想化が主要なテーマの1つになっているようです。ネットワークの仮想化は、物理的には同じネットワーク設備を使って、論理的に異なる複数のサービス基盤ネットワークを実現する方法です。このような仮想ネットワークは企業内ネットワークのような限られた分野ではすでに実用になっています。

 


 ITU-Tの将来ネットワークがどのようなものになるのかわかりませんが、電力網のスマートグリッド構想のように、世界中の通信事業者が建設した通信設備を自由に連結して、利用目的に適した論理的なネットワークを動的に実現することが考えられます。


 このようなネットワークが実現すれば、すでにインターネットで深刻な問題になっているヘビーユーザーによる偏ったトラフィックの集中、大規模災害による通信の混乱からの迅速な回復などの実現が期待できます。

 


都丸敬介(201243)