なんでもマルチメディア(411):ICレコーダー

今頃ICレコーダーを取り上げても、話題としての新鮮さはありませんが、長い間口述筆記に使っていたテープレコーダーが故障してしまったので、遅まきながらICレコーダーを使い始めました。使ってみて幾つかのことが分かったので、これからICレコーダーをお使いになる方の参考になればと思って体験を報告します。
 今私が使っているICレコーダーは2台目です。最初購入したものは、テストをせずにブランド名で選んだのですが、期待を裏切られたひどい音質でした。海外旅行に持参したので、帰国してからメーカーにクレームを申し立てようと考えていたところ、帰国途中で紛失してしまいました。ただし、しばらく使った結果弱点が分かったので、別のメーカーの製品を買うことにしました。どちらも1万円前後の品です。
 ICレコーダーが便利なのは、ファイルという名称で、メモ用紙一枚ずつに覚え書きを書く感覚で思いついた言葉を記録できることです。ただし、ファイルの管理方法はメーカーによって異なります。ICレコーダーはかなり長時間の録音ができますが、テープのように録音媒体を取り替えることができません(高額の機種には録音媒体を交換できるものがあります)。そこで、多くの機種が録音データをパソコンに転送できるようになっています。パソコンへのデータ転送や、転送したファイルの管理に必要なソフトウェアはICレコーダーに添付されているので、これを使うと便利です。パソコンに取り込んだファイルは自由に名前を付けられるので、データの管理が楽にできます。
 最初の機種で気になった弱点は、電源スイッチがなかったことです。電源スイッチがないことは、素早く録音を始められる利点がありますが、ポケットや鞄に入れたときに、何かの拍子に録音ボタンが押されて録音状態のままになり、電池が空になることが何度かありました。今使っている製品は電源スイッチがあるのでこうしたトラブルは起こりません。ただし、このスイッチは「ホールド・スイッチ」という名前になっているので、最初は一時停止スイッチかと思いました。
都丸敬介(2005.07.11)

なんでもマルチメディア(404):先駆者の視点

1970年代に宅急便事業を始めたことで有名な、元ヤマト運輸会長の小倉昌男氏が亡くなられました。ご冥福を祈ります。宅急便事業が軌道に乗った1980年代の中頃、あるセミナーの講師控え室で、短い時間でしたが、この事業を始めた頃の興味深い話を聞いたことがあります。
 一つは、伝票に届け先の電話番号を書いて貰うかどうかということで長い議論をした結果、電話番号が必要だという結論に達したという話です。荷物を受け付けてから24時間以内に届けるというコンセプトを実践するために、前もって電話で届け先の在宅状況を確認することにした結果、不在持ち帰りを減らすと同時にユーザーの信頼を得たそうです。
 もう一つは、荷物を受け付ける取扱所の数を、郵便局と同程度にするか、米屋と同程度にするかという議論をしたということです。この発想は面白いと思いました。
 スキー宅急便サービスを始めた年に、あるスキー場で、豪雪のためにスキーを積んだトラックが立ち往生するというトラブルが発生し、現地で貸しスキーを確保して何とか急場をしのいだそうです。スキー場では大雪が降ることが念頭になかったと笑っていました。
 しばらく後に、同社の技術担当スタッフから二つの問題について相談を受けました。第一は、集配センターで迷子になった荷物を確実に見つける方法がないかという問題です。第二は、深夜の集配センターでトラックが到着するのを待っている作業者のために、道路を走っているトラックの現在位置を常に把握したいという問題です。現在の技術では、第一の問題は無線タグの応用で、第二の問題はGPSと携帯電話の応用でそれぞれ解決できますが、いまから20年前には大変難しい問題だったのです。
 こうした現場での体験がその後の事業に活かされたはずであり、先駆者の苦労がしのばれます。
都丸敬介(2005.07.02)

なんでもマルチメディア(403):情報セキュリティ

 米国で4,000万という大量のクレジットカード情報が漏洩していたことが分かり、大きな社会問題になりました。情報の漏洩元は、複数のカード会社が共用している与信業務処理専門の企業です。この会社のコンピューターに蓄積されていた、クレジットカードを利用したユーザーのデータが流出したのです。情報漏洩が発生したのは2004年であり、このことに気が付いたのは、2005年4月に、あるクレジットカード会社の不正探知システムが異常を検出したのがきっかけだったということです。この間に、漏洩したカード所有者名、カード番号、および有効期限の情報を使った偽造カードが使われたのです。米国で発生したこの事件の被害は日本にも飛び火しました。この事件で、情報セキュリティが改めて大きな話題になり、企業などのセキュリティ・ポリシーの設定と厳密な運用が指摘されています。
 ところが「情報セキュリティとは何か」というと、必ずしも明確ではありません。セキュリティ・ポリシーを決めるためには、対象とする情報セキュリティの範囲を規定する必要があります。2004年に電子情報通信学会が発行した「情報セキュリティハンドブック」では、「情報セキュリティとはさまざまな攻撃などの脅威から情報を守ることであり、そのための対策を情報セキュリティ対策という。あるいはこの対策を単に情報セキュリティということもある」と述べています。そして、守るべき情報の特性として、機密性(守秘性)、完全性(一貫性、整合性)、および可用性をあげています。また、「情報に対する脅威には、大別して、災害、故障、過失、不正行為がある。広義には、情報セキュリティはこれらの脅威に対する対策を指すことがある」と記述しています。
 この記述からも、情報セキュリティ対策を考えるときの検討範囲が非常に広いことがわかります。企業や個人の情報セキュリティは、専門家あるいは担当者に任せきりにするのではなく、皆で考える問題なのです。
都丸敬介(2005.06.26)

なんでもマルチメディア(402):プレゼンテーションツール

セミナーや学校の講義あるいは会議資料の説明などで、パソコンのプレゼンテーション用ソフトウェア「パワーポイント」を使うことが一般的になりました。
 私も1990年代初期からこのソフトウェアを使ってきました。このソフトウェアは、10数年の間に何度か機能追加や改良が行われてきましたが、依然として満足できないことがあります。それは、説明中の画面に文字や図形を書き込む機能が貧弱で、講義の現場ではほとんど使い物にならないことです。ところが、最近、この悩みが解決されました。
 このコラムを書いている「ハンドレッドクラブ」の最近の会合で知り合った人の会社の製品で問題が解決したのです。これは、ワコム(WACOM)という会社の「ビズタブレット」という製品です。パソコンにつなぐ、縦14cm、横15cm、厚さ12mmのタブレットと付属のペンを使って、パワーポイントの画面に自由に、しかもかなり正確に文字や図形を書き込むことができます。線の太さや色を自由に変えることができるし、書き込みを消すこともできます。
 パワーポイントの普及が始まった頃、「私はこれを使わない」と言った大学の先生がいました。その理由は、「前もって説明用図表を用意しておくと、説明時間が短くなり、時間をもてあましてしまう。黒板に文字や図を書きながら説明すると、時間をたっぷり使える」ということでした。
 私は入手した「ビズタブレット」を大学の講義で使ってみました。前もって用意したパワーポイントの画面に、追加の書き込みをしながら説明したところ、学生の反応がよくなったと感じました。ただし、1画面あたりの説明時間が長くなりました。このようなツールは、eラーニング用教材の作成にも効果的に利用できます。
都丸敬介(2005.06.20)

なんでもマルチメディア(393):eラーニング

4月末に国内の46大学が協力して、インターネット利用型eラーニングの「オンデマンド授業流通システム」を立ち上げたという報道がありました。学習結果は正規の単位として認定されるということです。この報道に接して感じたのは「ずいぶん時間がかかるな」ということです。2001年に改訂された大学設置基準で、通信制では卒業に必要な124単位の全てを、通学制では60単位までを習得できることになったようですが、問題は、魅力ある学習コースの充実と運用体制の整備にあります。
 私自身、1990年代初期から、テレビ会議利用型やインターネット利用型eラーニングの実験およびeラーニング用教材の作成に関わって来ました。これらの経験や企業におけるeラーニングの利用状況と比較すると、大学のeラーニングの導入は驚くほど遅々としています。1990年代中頃、インターネットを利用するオンデマンド型eラーニング普及の鍵は、ブロードバンド・ネットワークの普及と密接に関係があることを議論したことがあります。
 2000年代に入って、ブロードバンド・サービス利用者が急増したにもかかわらず、すでにeラーニング履修者が300万人を超えたという米国と比べて、大学教育における日本のeラーニングの導入は非常にゆっくりしています。今度こそ、大学のeラーニングの本格的な発展を期待したいです。大学の単位を修得できることは、若い人たちだけでなく、シニアー年代の人たちに新しい生き甲斐あるいは刺激を与えることになるはずですが、この面での学習環境整備はこれからの課題です。
都丸敬介(2005.05.21)

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