なんでもマルチメディア(479):ソフトウェア技術者の育成

景気の回復に伴って、ソフトウェア技術者不足が深刻な問題になってきたようです。この問題は決して新しいことではありません。コンピューターの導入が進み始めた1960年代後半に、ソフトウェア技術者が大量に不足する可能性が指摘され、この対策の一環として、1969年に通商産業省(当時)が情報処理技術者試験を核とする人材育成を始めました。
ところが、バブルがはじけて、ソフトウェア技術者の仕事が激減するという構造不況が起こりました。このとき大量に生じた余剰人員はCOBOLのプログラマーでした。新しい時代のソフトウェア技術者に求められるシステム設計能力や、新しいソフトウェア技術を身につけていなかった人たちが脱落したのです。
 最近のソフトウェア技術者不足の根底には、依然として、体系的な人材育成が適切に行われていないという状態があります。企業などの情報システムだけでなく、パソコンや携帯電話、家電製品などに組み込まれているソフトウェアの規模が急速に拡大すると同時に複雑になっています。
 機能が複雑で規模が大きいソフトウェアの品質と生産性を改善するために、モデル化の手法や支援ツールの開発が進んでいますが、このような手法やツールを使いこなすのは簡単なことではありません。また、基礎知識を学習しても、実際に使ってみないと身に付きません。抽象的な考え方を教えるのは学校教育であり、実践の経験を積ませるのは現場教育であるという分業制では、いつまでたってもソフトウェア技術者不足は解消できません。日本の産業を支えるソフトウェア技術者育成は正念場にあるといえます。
都丸敬介(2006.09.25)

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