インターネットを利用する電話やテレビジョン放送が始まったころから、音声や映
像がとぎれることを多くのユーザーが体験するようになりました。そして、IPネット
ワークのQoS(サービス品質)が重視されるようになり、さらにQoE(ユーザー体感品
質)が注目されるようになりました。
QoSの項目には、データ伝送速度、接続にかかる時間、伝送遅延時間、パケット損
失率、など多くの項目があります。QoSパラメーターとよぶこれらの項目は、大部分
が測定あるいは観測データの収集によって個別に数値化できます。ところが、個々の
QoSパラメーターの値が良好であっても、ユーザーが満足するとはかぎりません。
ユーザーの満足度には主観的な要素が入るので、これを数値化することがかなり難し
いのです。
現在のインターネットを支えているIPネットワークは優れた技術ですが、本格的な
マルチメディア・サービスで安定したQoEを維持するためには、従来のインターネッ
トの設備では不十分です。今年サービスが始まったNGNは良好なQoEの実現を目指して
いますが、まだまだ多くの解決すべき課題を抱えているように見えます。
重要な課題の一つが、ネットワーク・サービス動作の制御や管理機能と、データ転
送機能の分離です。IPネットワークの最大の特徴は、ネットワーク全体を制御・管理
する機構がなくても自律的にデータ転送がおこなわれることですが、従来の技術のま
までは良好なQoEの実現が困難です。こうした問題に関する啓蒙記事が市販されてい
る専門雑誌でほとんど扱われていないことが気になります。
都丸敬介(2008.11.24)
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