何でもマルチメディア(675):第5世代無線アクセス

現役時代に会員になったいくつかの学会から送られてくる文献を見ていると、80歳を過ぎた今でも、学生時代に図書館で最先端技術に触れたときと同じようにワクワクします。

 最近、第5世代(5G)無線通信の文献をいくつか読みました。まだ第4世代(4G)のサービスが始まったばかりであり、5Gシステムが実用になるのは2020年以降とされていますが、これが実用になった時代には多くの人たちの日常生活がどのように変わっていくかということは想像できます。

 5G時代の狙いは、人だけでなく、相互接続することで効用が広がるあらゆるものの間の通信の実現ということです。5G無線アクセス網の通信速度は、企業や大学の構内では10Gb/s、一般的な利用環境でも100M/s以上となっています。これを実現する伝送帯域幅は10GHzから70GHzということです。

 この分野の技術の国際標準化組織であるITU-Rの作業部会WP5Dで描かれたシナリオでは、2015年から2017年にかけて予備的な標準化作業が行われ、2020年までに標準化が終わるということです。そして、2018年には実験が始まり、2020年には商用システムが出現するということです。また、通信事業者間でにぎやかな開発競争が始まることでしょう。

都丸敬介(2015.01.21)

何でもマルチメディア(674):IoTのさきがけ

 最近IoT(モノのインターネット:Internet of Things)の話題が活発になってきました。IoTの構想や実現方法の文献を見ていると、今から30年前の体験を思い出します。

 1980年代前半のある日、務めていた会社の対外窓口担当者から、「米国のベンチャー企業の社長から、画期的な構想の説明をしたいという申し入れがあるので、話を聞いてもらえないか」という電話がありました。

 説明を受けた内容は、「世界のコンピューター事業の状況を分析した結果、スーパーコンピューター、メインフレーム・コンピューター、ミニコンピューター、マイクロコンピューターのどれも事業規模(単価×出荷数)が同程度だということが分かった。そこで、1チップサイズのコンピューターを考えた。一人の人間が10個程度身につけるようになれば、莫大な生産量になる」という話でした。社長さんはこのような製品を実現するパートナーを求めて日本に来たのです。

 この提案は、時期尚早という判断で実現しなかったのですが、この時から30年たった現在のIoTの構想と見事に一致しています。1980年代の技術では、機能的にもコスト的にも実現が難しかった1チップ・コンピューターが実現できるようになった今、IoTがどのように社会に浸透するのか、大変興味があります。

(2015.01.08)