なんでもマルチメディア(659):シニアパソコン指導で学んだこと(1)

2006年に頼まれて引き受けた、シニア世代を対象とするパソコン講座の指導が8年目になりました。この間にパソコンの標準OS(基本ソフトウエア)であるウインドウズはXPから、ビスタ、7を経て8へと変わってきました。

ウインドウズ8は明らかにスマートフォン(スマホ)を意識して、従来のパソコンとスマホを合体したものです。世界の情報端末の出荷台数は、2011年にスマホがパソコンを上回り、2012年にはパソコンの出荷台数が前年を下回ったという調査報告があります。

日常的に情報通信端末を使っている社会人や学生にとっては、パソコンとスマホの機能が合体するのは好ましいことでしょう。しかし、日常的な行動範囲が狭く、使用するパソコンの機能が限られているシニア層にとっては、必ずしも好ましいことではありません。むしろ、せっかく覚えたパソコン使い方が変わってしまうことに戸惑って、パソコンを放棄するケースも見られます。

急速に発展を続けるスマホの機能やクラウドコンピューティングを効果的に利用できるようになった背景には、高速アクセスができるインターネットが全国的な社会基盤として充実したことがあります。スマホやウィンドウズ8パソコンは高速インターネットを使うことを前提としていることがよくわかります。ということは、高速インターネット利用環境を持っていないシニア層の人たちは取り残されていくということになります。

時間的にも経済的にも比較的ゆとりがあるシニア層の人たちに、ストレスを与えることなくパソコンをよき友として役立てるにはどうすればよいか、という問題を真剣に考える時が来たことを強く感じます。

都丸敬介(2013年1月16日)

なんでもマルチメディア(658):基礎研究と実用化研究

今年(2013年)元旦の日経産業新聞の第1面トップ記事は「産業振興」をテーマにしたシリーズの第1回でした。この記事には「NTT、ハイテクの礎40年」、「NTTは日本の技術力をつくってきた」という見出しが並び、研究成果のトップが「初の電子交換機「D10形」運用開始(72年)」です。

 私は1950年代にNTT(当時の日本電信電話公社)の電気通信研究所で電子交換機研究チームに入りました。当時の電話交換機は、オペレーター(電話交換手)が手作業で電話をつなぐ手動交換機と、電磁リレーを組み合わせた機械式の自動交換機でした。電子交換機は機械式交換機を電子化しようというものです。特に重要だったのは、交換機全体の動作をコンピューターで制御することでした。

 当時の汎用コンピューターは非常に高価でした。電子交換機の研究開発の重要なテーマの一つが、既存の機械式交換機と同程度の経済性の実現です。このために、電話交換動作の制御に必要な専用コンピューターを開発しました。

 研究には基礎研究と実用化研究があります。電話交換システムのような大規模システムの研究開発では、開発対象の実用化に必要な基礎研究のテーマが次々に発生します。したがって、両方の研究部門の密接な連携が不可欠です。このためのプロジェクト管理が実用化研究の成否の鍵を握ることを、私は何度も体験しました。

都丸敬介(201318日)