なんでもマルチメディア(619):融合と分離

今朝(2010216日)の新聞で、2つの興味深い記事が目にとまりました。1つは日経産業新聞に掲載された「携帯電話産業が、固定通信や放送など異分野との融合による飛躍を目指し始めた」という記事です。もう1つは日本経済新聞に掲載された「テレビが見られるチューナー内蔵のパソコンの存在感が薄い」という記事です。

 

 固定電話と携帯電話の融合や通信と放送の融合といった、各種のサービス融合は目新しいことではありませんが、黎明期から発展期への移行が始まったといえるのかもしれません。携帯端末の通信量(トラフィック)を調べると、自宅でのインターネット利用が急速に増えているということです。このことは、情報通信ネットワークのサービス機能に対する新しいニーズが顕在化してきたことを意味し、これに対応するためにはネットワークの構成やサービス機能の変革が必要になることを示唆しています。

 

 パソコンの販売台数に占めるテレビ受信機能付きパソコンの割合は、2005年の40%弱をピークにして減少が続き、2009年には10%以下になったということです。こうなった最大の原因は、薄型テレビの大画面化と価格低下ですが、部屋のテレビをつけたままパソコンを使うという多くの人の行動様式も無視できません。研究開発が進んでいるIPTV(インターネットプロトコルテレビジョン)が実用になると、ノートパソコンの外付けディスプレイにテレビの画面を表示して、パソコンを操作しながらテレビを見ることができるようになります。マルチメディアの次の時代がすでに始まっているのです。

 

都丸敬介(2010216)

なんでもマルチメディア(618):電子書籍端末

先週、米アップルが発表した電子書籍端末iPadが大きな話題になりました。10年以上前から、話題になりながら書店の片隅にうずくまっていた電子書籍端末が、ようやく日の目を見ることができるようになるのかな、という感じがします。iPadの画面の動きを見ると、昨年このコラムに書いたFlib(なんでもマルチメディア(614))のページめくりの感じによく似ています。

 

 小説や絵本、マンガといった、一般の書店で売られている本のほかに、学会の論文誌のような専門的な書籍も電子出版が急増しています。これらの電子書籍はインターネット接続したパソコンで読めるので、電子書籍端末がなくても困りません。

 

 電子書籍を読んでいて、いつになったら手書きのメモを、読んでいるページに書き込めるようになるのかなということを考えます。小説にメモを書き込む人は少ないかもしれませんが、学生や研究者の多くは教科書や文献にメモを書き込んでいます。本箱の中で20年〜30年ほこりを被っていた本をめくって、自分で書いたメモに出会うと、その本を一生懸命に読んだときのことを思い出すことがあります。単に感慨にふけるだけでなく、新たな発見や思考の飛躍のきっかけになります。

 

 電子書籍端末で読んでいる本のページにメモを書き込めるようになったとして、その本をどこにどのように保管するのかということも大きな問題です。メモ書きしたページは個人的なものです。これを公開することなく、数十年後にも書いた人が簡単に見られるようにすることは、重要な研究課題といえます。

 

都丸敬介(201023)