今年(2009年)になってから、新聞や雑誌で拡張現実(AR)関係の記事が頻繁に目
につくようになりました。オーソライズされた定義は不明ですが、一般的な拡張現実
の意味は「現実の映像にコンピューターで情報を付加して合成表示することによっ
て、表現する情報を拡張すること」です。
1990年代に発達した仮想現実(VR)でも現実の映像と人工的な映像の合成が行われ
ています。このためか、VRとARの区別が判然としない解説も見られます。VRとARの基
本的な違いは、現実情報と仮想情報の比率の差にあるという指摘があります。VRは仮
想情報の割合が支配的に大きいが、ARは現実情報が主体であるということです。
ARの代表的なデモンストレーション例として、携帯電話のカメラを特定の建物に向
けると、その建物の名前や番地、入居者の名称などの情報が映像に重ねて表示される
というのがあります。専用のメガネをかけて街中の看板を見ると、看板には表示され
ていない情報が付加的に表示されるというのもあります。
AR技術の応用研究がこれから広い分野で進むと思われますが、多くの人の日常生活
に密着した利便性の向上に役立つことを期待します。たとえば、家電製品の取扱説明
書を見なくても、専用メガネをかけて、操作しようとする箇所を見ると、操作方法が
わかるといったことです。家電製品ごとに付いているリモコンを、メーカーに関係な
く1種類の万能的なものにする研究と技術の標準化にもAR技術を生かせるのではない
かと考えます。
都丸敬介(2009.9.22)