携帯電話や無線LANの普及に伴って、無線技術の研究開発が一段と加速していま
す。そのなかで、2000年代に本格的な研究が始まった、注目すべきテーマの1つがコ
グニティブ無線(CR)です。
従来の無線通信では、用途あるいは規格ごとに使用する無線周波数範囲が決められ
ていて、その周波数範囲内の複数の通信チャネルのなかから空いているものを探して
使うというのが一般的です。コグニティブ(認知)無線の基本的な考え方は、個々の無
線通信機器が現在ある場所の無線電波の状況を調べて、効率よく使えそうなものを認
知して使うということです。このことによって、逼迫している無線電波の利用効率の
大幅な改善が期待されます。
現在のCRの研究活動には2つの分野がみられます。第1は、既存のシステムにとら
われずに、利用できる周波数を自由に使うというものです。第2は、1台の通信端末
が、複数の通信サービスの中から使えるものを自由に選んで使うというものです。本
来のCRは第1の分野ですが、身近な実用性では第2の分野が注目されます。たとえば、
ユーザーがなにも操作しなくても、1台の端末を、携帯電話網やPHS網、あるいは無線
LANに自由につないで最適な利用状態を実現するということです。
第2の分野については、すでに幾つかの実験成果が報告されています。そして、総
務省は2015年ころにはこのようなCRの普及が進むとみているようです。これは、1台
の通信端末を固定通信と移動通信で共用するFMC(固定・移動通信融合サービス)の
発展形態とも見なすことができます。
都丸敬介(2009.7.21)